尖ったままのブランドでいて欲しい - lululemonのメッセージ
多くのブランド、特にスポーツのブランドは尖ったイメージを提げて登場することが多い。Addidasが既にエスタブリッシュメントになっていた時代にNikeはすごく新しいイメージで現れてきた。
今ではNikeももはや老舗ブランドの一つと言えるだろう。老若男女を広くカバーし、スポーツを特に愛好しない人達にとっても簡単に手の届く存在だし、シーズンの終わりにはアウトレットやスーパーなどでもバーゲン価格で買うことができる。
一方でNikeにしても、Addidasにしても、トップアスリートや根強いファンを唸らせるデザインや新素材を使ったアイテムの提案することを怠らない。だから確立されたブランドとして陳腐化する一方で、いつまでも実験的で魅力的なブランドであり続けるのだろう。そしてそれは簡単なことではないと思う。
この10年ほどで出てきた彼らのフォロワーはどうだろう。例えば、Under Armourやlululemonは?後者はさまざまな種類のスポーツをサポートするというよりは、ヨガに端を発し、おしゃなレギンスからエクセサイズ用のウェアを主戦場としている。そこから守備範囲を広げてランニングウェアやスポーティなデザインの普段使いのウェアを取り扱っている。
彼らが出て来た当初は、積極的にウェルネスを追求するアクティブなイケてる人達のブランドというイメージでものすごく尖っていたように感じた。10年ほど前から急成長し、今ではあちこちにアウトレットが見られるようになったし、それに伴って利用する人々の層も数も拡大していった。
珍しいブランドではなくなってきた結果、僕的にはlululemonが最近では、少しつまらないブランドになったように感じていた。アーリーアダプターから始まり、ヘビーユーザーが出来上がり、今では一般的なユーザーが愛用するようになったからかもしれない。
lululemonの商品は値段もそこそこ高い。だからかもしれないが、香港のお店などでは購買する人達の年齢も上がっているような気がする。クールなブランドというよりはラグジュアリーなブランド。流行らなければビジネスは行き詰まるけど、流行ったら流行ったでせっかくのエッジが無くなってしまう。そんなジレンマに陥っているように感じていた。
そうしたら、先日、ランニングをしている途中でこんなポスターが目に入った。
全く、デザインの要素もないそっけないテキスト。横に三連のメッセージの二段組み。長く閉まったままのお世辞に綺麗とは言えない店舗のシャッターにシワだらけになったゴワゴワのポスター。
そこにはこうある。
素敵なメッセージですよね。
ここで使われている主語の「you」は一人である”あなた”かもしれない。あるいは複数である”あなたたち”と考えてもよさそうだ。ついでだから、同じ時代に同じ方向に向かって走り続けている”私たち”と考えても面白そうだ。
こういうゲリラ的な媒体を使って、インスピレーション溢れるブランドメッセージを発している限り、まだまだ面白いブランドでいられるような気がしてきた。
いつかスーパーマーケットの衣料品コーナーでバーゲンセールを行うようになるまでは、まだ少し時間がかかりそうだ。
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