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香港2022。去っていく者もいるが、空白が生じれば、別の者がそれを埋める←イマココ

1997年に約650万人だった香港の人口は2021年には740万人を越えた。アジア最大の自由貿易都市は人々を魅了し続けてきた。

ところが2022年は打って変わって人口が減少に転じてしまった。恐らく最終的には対前年で12~14万人が減少し、729万人になるだろうと言われている。香港も少子化傾向にあるがこの減少はそうした自然減によるものではなくて、この数年の環境の変化によって人が出ていってしまったことにある。ここではその理由について細かく言うつもりはない。

西洋人が好んで住んでいたランタオ島のディスカバリーベイからは、一説によると半分くらいの西洋人がいなくなってしまったという話もある。きちんとした統計を見たわけではないが、実際に訪れてみると見た目に明らかに西洋人の姿が少ないことがわかる。なんだか昔のディスカバリーベイではないようだ。(でも、彼らは機を見るに敏だから状況が好転すればまた戻ってくるに違いない。元々、身軽な人々だ。)

そして、香港の人々も、十分な資金がある人達、転出していく先に縁のある人達、グローバル市場で戦える高級人材は、イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダに出て行った。中には日本で新たな人生を始めた人達もいる。

何か起こったら座して待つのは下策。実に香港的価値観。

このところ、そう言う人々からの新天地で苦戦していると言う便りがニュースやSNS、はたまた口コミで伝わってくる。内容は仕事が見つからないと言った切実すぎるものから、文化風習に馴染めないとか、差別や無関心を受けることなど様々だ。中には身はあちらに移しておいて、ビジネスは相変わらず香港で行おうと考えていたがなかなか上手くいかなくなった、なんて言う人もいるようだ。

デザイン、広告、マーケティング、そしてメディア。僕らの業界や隣接した業界からもかなりの人材がいなくなっている。ファウンダーがこぞっていなくなりガタッと人気の落ちてしまったオンラインメディアだとか、主力の抜けた制作プロダクションの話など。

2022年はそんな風にわさわさした感じで始まったが、さすがにこの頃では再編成の動きが始まっている。あるポジションに企業が、あるいは人がいなくなれば別の人が埋めることになる。西洋人のマネージャーが占めていた高給取りのポジションなどは、その下にいた香港人にとって絶好のチャンスだろう。

ようやく、香港においても内外における人の往来が活発になってきた。昨日、新しい行政長官が行った施政演説でも、世界ランキング100位以内の大学の卒業生に無条件に労働ビザを発行すること、これまで2年であった最初の友好期限を3年にすることなど、積極的に高級人材を招聘しようとしている。どこも必死なのだ。(目的意識も無く、留学生を歓待して宝などと言う国は無いと思う)

そんなわけで去る者、それを羨む者、焦る者で始まった2022年だったが、そろそろ気温も落ちてきた10月になってみると、生じた空白を埋める者もいれば、新たに来る者もいて、どっちに転ぶかはわからないがなかなかの勢いで調整が始まっているようだ。デザイン業界もうっかりしていられないのだ。

(了)

明日は必ず来ますね


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