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【読書メモ】『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』(ジェームズ・ヒュームズ著)

▶今回の書評本『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』

・『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ 聞く者の魂を揺さぶるスピーチテクニック21』
・ジェームズ・ヒュームズ著
・海と月社

▶読書メモ

1.まずは「沈黙」

●スタートから期待させ、圧倒する
・静寂を作り上げる。
・威信を高める。
●位置について、聴衆を見つめ、人心を掌握する
・ただ黙るだけでなく、聴衆一人ひとりとしっかり目を合わせる。
・沈黙が続くにつれ、最初のひとことのインパクトは増していく。

 2.強烈な「第一声」

●礼儀正しい始まりは愚かしい
・ありきたりの言葉で切り出せば、退屈でつまらない印象を与える。
●最初はガツンと
・「我々がここにいるのは、生きるか死ぬかを選択するためである」
・「わが社は創業以来最大の年間売上を達成するだろう…我々が台無しにしなければ」
・感情を揺さぶったり、笑わせたりできる個人的な話から始めるのも良い。
・劇的な知らせや驚くような事実がある場合は、冒頭でをそれを明かす。
・誉め言葉がある場合は途中(挿入句)で良い。
●勝負はスタートで決まる
・聴衆に一目置かれる人は力強い言葉で始める。
・最初の言葉にはたっぷり時間をかけて考える。
・「100年前、ひとりの偉大なアメリカ人が、今わたしたちの背後に像があるその人が、奴隷解放宣言に署名しました…」

 3.正しい「外見」

●王者の風格
・パワープレゼンス(効果的な外見)
・服装は主張する。服装に無頓着であってはならない。
●小道具も抜かりなく
●スピーチにふさわしい服装とは

・靴や爪といった細部も手を抜かない
●スーツ選びで人生は変わる

 4.先に「結論」

●そのスピーチの結論は?
●結論が定まるまで口を開くな

・伝えたいことを定めれば、言葉はおのずと出てくる
●止まれ、考えろ、組み立てよ
・第一に聴衆にどう行動させたいのかを考え、その考えに基づき演説する。
・事前にひとつの結論をしっかり固める。
●目的地までの地図を描く
●自分ととことん対話する

 5.思い切って「短く」

●少ないほど、豊かになる
・良い演説は、短ければ、さらに2倍よくなる。
●「うんざり」より「きっぱり」
・パワー・ブリーフ(力強い簡潔さ)
・短い演説は記憶にも残りやすい。
●「ビシッ」と話せば「バシッ」とキマる
●スピーチではなく、ストーリーを

・ストーリーを耳にすると、人間はその情景を頭に描いて記憶する。
●「異例」は「意外」な効果を生む
・「作戦、実行!」
・簡潔が良し、短さは鋭さ。
・ほかの人の発言をよく理解して分析し、多くの人に一致する点やテーマを探し、議論の要点をひとつの質問にまとめる。

 6.差がつく「引用」

●引用の2つのルール
①著名人の言葉にする
②短い言葉を選ぶ

・引用しない人々の言葉は、決して引用されない。
●「逆引用」でハッとさせる

・逆引用=予想外の引用をすると強く印象に残る
●演出を添えて
・引用した語句をより効果的にするには、演出して強調しなければならない。
・引用は聴衆の興味を引き、聞き手を目覚めさせて、活気を与える。
・ただし、スピーチで引用を使っていいのは一度だけ。一度の引用で盛り上げる。
「名言辞典」を作る。次のような話題ごとに記録する
「アイデア」「解決策」「機会」「金」「緊急性」「計画」「決定」「行動」「仕事」「事実」「質問」「勝利」「政治」「チーム」「知識」「調査」「ビジネス」「必要性」「美徳」「変化」「未来像」「無欠点運動」「リーダーシップ」「歴史」「若者」
●使える引用ベスト20
①ウィンストン・チャーチル(問題解決)
「重要かつ不可解な状況の時は、最初の原則に戻るのが最善である」
②孔子(問題の分析)
「君子の第一歩は問題を見極めることである」
③ラルフ・ウォード・エマソン(現実に基づいた計画)
「わずかばかりの事実なら、忘れ去られた夢も同然だ」
④ベンジャミン・フランクリン(交渉)
「必要に迫られては、よい取引はできない」
⑤ジャスティス・オリバー・ウェンデル・ホームズ(新しい考えによる変化)
「ときとして人間の精神は新しい考えによって広がり、決してもとの大きさには戻らない」
⑥トーマス・ジェファーソン(問題解決)
「物事はつねに円滑にとらえなさい」
⑦ジョン・F・ケネディ(解決策の策定)
「我々の仕事は過去の責任を追及することではなく、未来の道筋を定めることである」
⑧エイブラハム・リンカーン(目標の策定)
「まず、今どこにいて、どこへ向かうのかがわかれば、何を、どのようにすべきかを的確に判断できる」
⑨ウィリアム・シェイクスピア(チャンスのつかみ方、率先すること)
「人の為すことにはすべて潮時というものがあり、うまく上げ潮に乗れば、幸運に行き着く」
⑩アルフレッド・テニスン(変化、挑戦)
「古き秩序はうつろい、新しき秩序に譲る」
⑪ルイ・パスツール(単純さ)
「説明できないこと、シンプルにできないこと、すぐに証明できないことは進めてはならぬ」
⑫オルダス・ハクスリー(計画)
「現実的な方法で夢を見ることだ」
⑬エイブラハム・リンカーン(献身)
「何歳まで生きたかは重要ではない。どのように生きてきたかが重要なのだ」
⑭シャルル・ド・ゴール
「歴史はあきらめることを教えない。少数の意思が人間の新たな道を切り開く瞬間があるのだ」
⑮ジョージ・パットン(計画)
「計画されたリスクをとれ――それは無謀とはまったくちがう」
⑯ウィンストン・チャーチル(方便)
「成功には2種類ある――最初の成功と、最後の成功だ」
⑰ロバート・フロスト(変化)
「ああ、いつから、流されることが人間にとって裏切りではなくなったのだろうか」
⑱マーク・トウェイン(変化)
「凝り固まった意見にしたがっていては鎖を断ち切れず、魂も解放できない」
⑲ウィンストン・チャーチル(リーダーシップ)
「あなたの両側に危険がある――慎重になりすぎる危険と、無鉄砲になる危険が」
⑳ウィンストン・チャーチル(挑戦)
「あなたの同意なしに、誰もあなたに劣等感を抱かせることはできない」

 7.信頼を勝ち取る「数字」

●月と地球を一往復
・数字はストーリーを語る
・10億ドルがどのくらいの金額かを理解するために、10億ドルぶんの1ドル札を並べてみましょう。なんと、月まで行って、また地球に戻ってきても、まだ残っているのです!
●信頼?それとも記憶?
「今年の利益は17.2%増加しています」
⇒おそらくこれを聞いていた人々は翌日にはその数字を忘れている。だが、正確な数字を読み上げたあなたのことは信頼しているはず。
⇒もし、信頼と記憶の両方を望むなら、数字を読み上げ、かつそれをにすればよい。

 8.スパイスとしての「視覚資料」

●スライドの限界を知る
・スライドばかり見せていると、聴衆は眠くなる
・話し手の個性や経験や考えは「口」で伝えるべき
・人間ではないスクリーンに血の通ったプレゼンはできない
「言葉」はコミュニケーションの本質=「主役」。映像等はスピーチの代役ではなく、応援役・脇役として使うべき。
●「説明不足」が鉄則
・視覚資料は複雑であってはならない。
●6つの心得「SLIDES(スライド)」
【S:slogan スローガン】スライドの下に記すキャプションは、短いスローガンや、あっと言わせるような文句、一行の言葉にすること
【L:large 大きく】スローガンは大きな字で
【I:illustration イラスト】イラスト、写真、グラフはシンプルに整理
【D:directional 指示】指示棒やポインターは使わない。注意がそがれる
【E:erase 消す】スライドを使い終わったら、次にスライドを使うときまで消す。そうしないとスピーチに注目が集まらない
【S:speech スピーチ】スライドのキャプションはスピーチとは違う。キャプションは読めばわかる。スライドの紹介ではなく、スピーチをする

9.本物の「ウィット」

●ジョークとウィットとでは大違い
・ちょっとした笑いが息抜きになるようなタイミングに、面白いエピソードをそっと忍び込ませるのが正解。
・ユーモアは話のペースを変えて、中だるみを解消させる。
・本物のリーダーは使い古されたジョークで演説を始めたりはしない。代わりにユーモアにあふれた逸話でスピーチをピリッとさせる。
・コツは「自分の経験もまぶす」こと
●「読み上げずに語る」のも大事
●締めくくりにもユーモアを

10.うならせる「たとえ話」

●言いたいことをたとえ話で
抽象的な考えは、片方の耳から入って反対の耳から抜けていく。具体な姿や物語で補強しなければ頭に残らない
●たとえ話だからできること
・たとえ話の長所は覚えやすいこと
相手に理解してほしいことがあるなら、それを具体的に示す物語やエピソードを探す努力を惜しんではいけない
●うってつけの話は必ずある
・考えを具体化するには、できるだけ実話を活用すること。
・伝えたい要点を援護する話は必ずある。主だった経済紙誌のバックナンバーを調べて、話のテーマにふさわしいたとえ話を積極的に探すべき。うってつけの話が見つかりさえすれば、あとは自分が抱える問題にうまく合わせるだけ。
・力のあるたとえ話は、必ず驚異的な説得力をもたらす。

11.魅せる「ジェスチャー」

●身ぶりが言葉より多くを語るとき
・しぐさはときに、言葉では伝えられない心をも伝える。
●ひとつのジェスチャーですべてを語る
●ときには「劇的な」見せ方も
・輪ゴムで止めた山のような書類の束を持ってきて、目の前のテーブルにどすんと置いた後、しばらくしてから口を開く。

12.失敗知らずの「原稿の読み方」

会話のように語りかける
下を向いているときには「絶対に」話さない
●「見て・停止して・話す」テクニック
(0) 新聞の社説・特集コラムを選ぶ
(1) まず下を向き「見た」言葉を頭の中で写真に撮る
(2) 顔を上げきってから「停止」
(3) 何かを聴衆だと思って見つめながら、今覚えた言葉を「話す」あるいは「会話をする」
(4) これを繰り返す。
⇒「ぎこちない」どころか「信頼できる」読み方になる。

13.「詩」を語る

●演説は詩である
・すべての演説は押韻や韻律のない詩である。
・チャーチルの原稿例
   ウェイガン将軍が
   「フランスの戦い」と呼んだものは終わった。
   やがて「イギリスの戦い」が始まる。
   キリスト教文明の存続は、
   この戦いにかかっている。
●スピーチを詩にする
言葉を威力のある詩(パワー・ポエトリー)にする
・ゲティスバーグ演説
   80と7年まえ
   我々の先祖たちはこの大陸に
    自由の精神にはぐくまれ
    人はみな平等につくられているという
   信条に捧げられた
   新しい国家を
   誕生させた。
「言葉の配置」のルールとコツ
対応する言葉のリズムが近い
  we cannot dedicate(捧げることができない)
  we cannot consecrate(清め捧げることもできない)
頭韻を踏んでいるので注意をひきやすい。
  will little note
  nor long remember
前置詞の位置を並列させることで、原稿が読みやすくなる。
  of the people (人民の)
  by the people(人民による)
  and for the people(人民のための)
習得すべき「ルール」と「コツ」
・誰かを紹介する言葉、商工会議所での挨拶、記者会見、社内の激励演説などスピーチをするときは長くても短くても、必ず手書きではなくパソコンなどで入力した原稿を用意し、言葉は短く切って並べなければならない
・カンマを打ったら、改行!
・「a」と「the」で行を終えない。
・ピリオドを打ったら、必ず行を終える。
・「口で表現する」こと。「単に原稿を書いて読めばいい」わけではない。

14.胸に刺さる「決め台詞」

CREAM(対比・リズム・こだま・韻・比喩)
・対比(Contrast)、脚韻(Rhyme)、こだま(Echo)、頭韻(Alliter-action)、比喩(Metaphor)
「対比」で注意をひく
【キーワード集】
 現在⇔過去(⇔未来) ・始まり⇔終わり ・暗い⇔明るい
 山⇔谷 ・豊か⇔貧しい ・友⇔敵
 利益⇔損失 ・希望⇔絶望 ・得る⇔失う
 昼⇔夜 ・勝利⇔敗北 ・光⇔影
 真実⇔嘘 ・植える⇔刈り取る ・成功⇔惨事
 節約⇔浪費 ・笑う⇔泣く ・戦争⇔平和
【事例】
・敗北に対する唯一の言葉、それは勝利である。
平和を守る最善の方法は、戦争に備えることである。
真実の半分はしばしば偉大なである。
・良い戦争も悪い平和もない。
今日できることは明日に残すな。
・xx年という過去1年のすばらしい成長を道標とすれば、未来にかぎりない希望を描けるはずである。
「脚韻」は王道
【事例】
・極端な複雑さ(complexities)から、極端な単純さ(simplicities)が生まれる。正当性(legality)ではなく、人間性(humanity)を指針とすべきだ。
・小さな打撃(strokes)もオーク(oaks)の大木を倒す。
「こだま」で脳裏に焼き付ける
【ルール】
①前半で使った言葉を後半でもう一度使う
②名詞を繰り返す
③動詞を繰り返す
【事例】
・国があなたのためになにをしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。
・我々が恐れるべき唯一のものは、恐れそのものです。
・人民の、人民による、人民のための政治を、地上から決して消えて無くさぬために
・すべての知恵が、新しい知恵ではない
・過去をより遠くまで振り返れば、未来もより遠くまで見通せるだろう。
・常に交渉する準備を整えておくべきだ。だが、準備を整えずに交渉してはならない。
・「勝利」という言葉を繰り返す
・生きるために食べよ、食べるために生きるな。
・失敗しようと計画したわけではなく、計画を失敗したのだ。
●名演説に「頭韻」あり
【事例】
・姿勢(Pose)を変え、速さ(Pitch)を変え、間(Pause)を空けるのを忘れないこと(→子音の中で一番いいのは「P」
●「比喩」のヒントはいたるところに
・詩人にとっての渾身の一行は、ときとして想像から生み出すのが難しい。
・自然のあらゆる姿を頭の中で想像する。
→「頂上での交渉(サミット)」「鉄のカーテン」
【事例】
・1パイントの汗が1ガロンの流血を防ぐ
・ほんの小さなせせらぎだったものが、今では川となっている。
・営業は単純です。頭と足を動かせばいい。
・隣の家が燃えているのに、ホースを貸さない人がいるだろうか。

15.流れを変える「質問」

●「質問」の効用をおさえる
・適切な質問は鮮やかに輝き、雷鳴のごとき威力を持つ。
●聴衆の心をひとつに
・わかりやすく、単刀直入に。

16.絶妙な「強調」

・スピーチやプレゼンで、この言葉を際立たせたい、強調したいときは、大声で叫んではいけない。最も効果的なのは、その言葉を発する前に、ほんの少し間を空けること。
●「目新しい言葉」で気をひく
・この法律は最も…(間)...浅ましくない法律である。
●「意図的な形容詞」作戦
・…(間)...「建設的」な交渉
・…(間)...「革命的」なソフトウェアの刷新

17.威厳が増す「能動態」

●受動態を使ってはいけない理由
・本当の主語(=行動の主体)が文から消えてしまうか目的語の位置に追いやられてしまうから。
・×必ず勝利が掴み取られるでしょう⇔○我々は必ず勝利をつかみ取ります
●「受け身の精神」をさらけ出すな
・受動態が多すぎると受け身の精神状態がほのめかされる。
●「責任逃れのカメ」と思われないために。
・責任を引き受けるリーダーの言葉は能動態。受動態はリーダーが使う言葉ではない。

18.「資金調達」のための語り

●偉大なる説得者
「大胆さ」「計画」「寄付」「決闘」

19.「スイッチ」を入れる

●位置について、用意・・・聞け!
・聞き手に「位置について、用意・・・聞け!」という号令をかけて聞かせなければならない。そのためのスイッチとなる言葉を「パワー・ボタン」という。
【事例】
アメリカを批判する人々にいつも言っている言葉を、ここでもう一度言わせてください。
 おそらく、わたしたちはまだ理想に届いてはいないでしょうが、我が国以上に高い理想を掲げた国はないでしょう。
ホテル経営の秘訣は単純です。こんなふうに、一言にまとめられます…
 ビジネス学とは、サービス学である。
●台詞を輝かせるネオンサイン
【事例】
ここでまた、私の固い信念を述べさせてください。…(間)...
 我々が恐れるべき唯一のものは、恐れそのものです。
そして、同胞であるアメリカ国民のみなさん。…(間)...
 
国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。
これから述べることは、逆説的であり真実だか…(間)...
・入閣された方々に伝えたことを、下院議員の皆さんにも申し上げたいと思います。
…(間)...
・ほかの人がどう言うかは知らないが、私といえば
…(間)...

20.万雷の拍手を呼ぶ「締めくくり」

●強烈な印象で終えるために
「誇り」=自社への誇り、地元への誇り、職業への誇り
「希望」=将来への展望、明日への希望、新しい機会、広がる水平線
「愛」=家族への愛、国家への愛、神への愛など
「恐怖」=すぐに踏み出さなければ起こるかもしれない災いなど
●よく知られた名言や逸話を応用する
●「誰かが使った話」を活かす
●あなたらしい終わり方を

21.堂々とわが道を

●聞き手に「あっ」と言わせる
●見せ場をつくる
●あえて、ちがう道を行く
●大胆になれ

▶感想

内容盛りだくさん、細かいテクニック、事例がてんこ盛りの書籍でした。これからのプレゼン、スピーチの際に、是非どんどん取り入れていきたいです。

以上です。

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