道徳における表現力を育てる NO1
本シリーズでは、道徳科の授業ではあまり重要視されていない表現活動について述べていきます。なぜなら、私は道徳における表現力を育てることが価値の理解を深めていくために必要な土台となると考えているからです。
本号では第1弾「宛名性の意識」についてです。
*前回号と合わせてお読み頂けると幸いです↓
1 「宛名性」とは
前回もご紹介した東京大学名誉教授の秋田喜代美氏によると、誰に向けて言葉を発しているか(宛名)で、子どもの授業への参加意識という点で重要な働きを持ってくるそうです。
そして・・・
教師の発問に対して、挙手して当てられた子どもが、教師に対して発することが中心の学級の場合、周りの子どもの参加意識は弱くなるそうです。つまり、その場合は「1(教師)対1(子ども)」の授業参加になっているのです。
2 文末を言い換える
とは言っても、どうやって子どもの発言意識を教師だけでなく、他の子どもたちに向けることができるのか?
それは・・・
発言の文末を「〜です。」「〜だと思います」から、
「〜でしょ。」や「〜だよね。」へ変えるのです
実は、教師に対して発する言葉が中心の学級には、言葉の質にも違いがあるそうです。
いつも教師に宛てて発する学級の言葉は「はい、・・・です」という言葉が行き交うそうです。
一方で・・・
友達や仲間に向けて宛てて言葉を発する学級では「〜でしょ」や「〜だよね」と問いかけたり、共感を求めたりする文末が言葉に溢れてくるそうです。
だからこそ、綺麗な話型にこだわりすぎずに、子どもの自然な言葉で発言させることだけで、周りの子どもたちの参加意識が高まってくるのです。
3 身体表現の工夫
また、言葉だけでなく発言する子どもの身体姿勢やまなざしも大切です。
発言する子どもが誰に宛てて発しているかは、周りの子どもたちは無意識にキャッチしています。
例えば、発言する子どもが教師に宛てて言葉を発している場合、周りの子どもは無意識に「自分には関係ない」と思っているのです。
だからこそ、「一番伝えた人は誰?」「今日は○○さんに宛てて話してみて」と仲間へ宛てて発言させるように支援していくのです。
4 友達の名前を入れて表現させる
最後に、ある程度、子どもの文末表現や身体表現が友達に向かってきたら、「友達の名前を入れて表現させる」ことが効果的です。
例えば・・・
「Aさんは、〜と言っていたけど、私もそれに賛成。だって〜」などと、前に発言した友達の名前を入れて発言させるのです。
そうすると、みんなの参加意識が高まるだけでなく、話し合いの文脈を読み取りながら表現する力も付いてくるのです。
このように、宛名を教師からクラスメイトへ変え、真剣に語りかける言葉が周りの子どもの聴く力を生み出し、さらには表現力も高まっていくのだと思います。
次号では、表現力を育てるための方法、第2弾「発言はできるだけ短く」について迫ってみたいと思います。
*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。
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