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”俺の背中を見てついてこい”は時代遅れ。背中には何も書かれていない。ことに気づかないマネージャになるな

前回の記事で、”マネージャは管理だけではなく、物事を推進する役目”であり、メンバーを率い、顧客をリードし、将来を見据え、目の前の課題に対処していかなければならない”リーダー”があるべき姿です。よって、後進にもそのマインドを持ってもらいましょうとお伝えしました。一方、”率先垂範”に代表される、”俺の背中を見て着いてこい”的な放任主義的指導が現代では通用しなくなりました。それは指導者の手抜きであることに世の中が気付きはじめたからなのです。

率先垂範を促す偉人たち

やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ
ー 山本五十六

数々の偉人が”率先垂範”することの大切さを説かれている通り、リーダーとしての側面を持つマネージャーは、積極的に自分の仕事の姿を見せ、メンバーを成長させなければならないことに対しては誰も異論はないでしょう。

一方で、現在のマネージャーは、”俺の背中を見て育て”的な上司に育てられた世代の方も多く、大きな声では言えないけれども

今まで上司の背中を見て必死に自分で考えて育ったのであって、上司から指導という指導は受けてないよ。上司の背中には何も書かれていないから、自分で上司の背中を勝手に解釈して、それを学んできたんだよ。

という人がかなりいるのではないかと推測しています。私もその一人(※)で、試行錯誤の中で、時にはリーダーの背中に落書きをしたり、隣の青い芝見て刈りにいってみたり、お客様から怒鳴られたりしながら仕事を学んできた部分も多かったと思います。※ 上司が全員そうだったわけではありませんよ。

そのような経験から、率先垂範だけしていれば、メンバーは勝手に学び、成長してくれる。だから、背中を見せておけばいいのだ。と感じておられる方も多いように思います。しかし、このままでいいのでしょうか?

これは、指導すること自体を放棄している体のいい言い訳ではないでしょうか?

自分たちが苦労してきた経験があるからと言って、それをそのままやるのは知恵がありません。こうだったら良かったのに、ということを自分が指導するときの改善点として対策を講じ、それを”率先垂範”することが必要なのではないでしょうか?

それでは誰のためにもなりません

この”背中をみて着いてこい”形式の指導は、時代が変わったから云々ということではなく、実は誰のためにもならないダメな方法なのです。

・メンバーのためにならない

言わずと知れた、メンバー自身のためになりません。将来有望なメンバーが正しく指導されないことは、メンバー個人の成長に大きな影響を与えることになります。適切な指導をすれば、メンバーは必ず成長するにもかかわらず、指導を放棄することは、もはや背任行為に近いかもしれません。

・自分のためにならない

メンバーが育たなければ、自分の居場所にメンバーを置くことが出来ません。いつまでたっても今やっている仕事を続けなければなりません。そこから抜け出すためには、メンバーを育て、自分の仕事をメンバーに任せることで、さらに上位の仕事が出来るようにしなければなりません。さもなければ、自分自身の昇格がままならないのです。

したがって、出来るだけ早く、メンバーを育て、自分は上位職の仕事を奪えるような仕組みを整えていかなければならないのです。

・会社のためにならない

”メンバーが育たない、自分も育たない=会社が育たない”です。新たなメンバーを採用すればよいではないか?では、いつまでたっても人数に比例した成長しか望めません。成長にレバレッジを効かせるためにも、社員が成長することは、企業にとっての大きな経営課題です。

このように、マネージャーが育成しない=三方悪しなのです。

育てることは、ミッションである

自身の仕事の幅を広げる、メンバーが成長する。結果、会社全体としての能力が高まります。メンバーが育つことが自分のためにも、会社のためにも非常に重要な要素とるのです。”メンバーの育成”は、マネージャーにとって重大なミッションになります。

”おいおい、メンバーを育てることって、お客さんとの契約にはないけど大丈夫なの?プロジェクトの外でやるべきなんじゃないの?”

と思われるかもしれません。発注される仕事の質・量をベースにそれに足るだけのスキルを持ったメンバーを、最初のタイミングで集めます。当然、お客様に対して品質を劣化させないようにタスクをコントロールします。それを前提にメンバーを育てるのです。

育ったメンバーは、当初より能力(=品質)が上がります。したがって、全体の品質が上がることになり、お客様にとっても良いことなのです。

マネージャーは、プロジェクトの推進・管理・育成を担う超重要な役割です。”目先のタスクでいっぱいいっぱいで、育成までは手が回らないよ。”という話もあると思いますが、多くのマネージャーは、工夫し、これらの時間を捻出するように仕組みづくりをしています。できない。と決めつけないで、どうしたらできるのか?を考えてみてください。(これらの工夫については、別の記事にしたいと思います)

相手を知ること。それが育成の始まりです

実は、山本五十六の言葉には続きがあります。リーダーの本質とは、こちらなのではないでしょうか?率先垂範してみせることは大事ですが、ある程度見せたところで任せること。任せるためには話を聞いて、障壁や問題を一緒につぶしてあげる。最後は見守る。余計な口は出さない。

話し合い、耳を傾け、承認し、 任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、 信頼せねば、人は実らず。
ー 山本五十六

こうやって考えると、育成とかいいつつ、実は上司から”教える”ことって1割もないかもしれません。最初の立ち上がり方を導くのみで、あとはできるだけ任せる形で対話をしながらメンバーの一人立ちを見守っていく。

メンバーがどういったことで困っているのか?何か助けてもらいたいと思っていることはないのか?を知るために日々の何気ないコミュニケーションを大事にする。

転んで大けがをしないように補助輪を付け、走らせる。自走できるようになったら、補助輪さえ外す。曲がり方、止まり方がわからなければ、多少転んだとしても自分で立ち上がらせ、軽症のうちにフォローする。

背中見ても書いてないから、どうやったら自分でできるようになるかを一緒に考えよう。ただし、最初は私が見せるからね。あとは自分でできるようにフォローするからね。

と、背中を見せるのではなく、お互いの顔を見合わせて会話する。その人にあったサポート方法を提案し、一緒になって成長する。これが、育成の本質なのかもしれません。

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