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プロジェクトを破綻に導く、マネージャー=管理者という意識

”マネジメント”=”管理”という理解。この誤解がマネージャーの役割の自己認識を矮小化させてしまっています。”管理する”だけなら誰でもできるのです。その“管理された“情報から抽出される課題やリスクに向き合い、解決に導く推進役がマネージャーの役割だと考えます。この期待される役割との認識ギャップにより、課題の取りこぼしが発生し、プロジェクトが破綻する一つの大きな原因となっています。まずは、マインドを変えていきましょう。

アサイン面談にて

プロジェクトを立ち上げる際にメンバーを集めるための面談をします。プロジェクトマネジメント支援がタスクの場合、当然、プロジェクトマネジメントの経験を問います。

リアル私:経歴に、プロジェクト管理と書かれているのですが、具体的にどのような管理をしていたのですか?
担当者:課題管理とリスク管理です。
心の私:ほほぅ、年齢からの経験的にもこれならいけるかもしれないな。
リアル私:具体的にどのような作業をされていたのですか?
担当者:発生した課題を記録して、期日の前日になったら、課題の担当者にメールしていました。
心の私:ムムム。これ、ダメな奴かも。
リアル私:例えば、進捗状況を確認して、そこで問題になりそうなことを発見して、それを課題に記録したりといった作業はしていないのですか?
担当者:はい、そこまではできていませんでした。
心の私:NG確定
リアル私:(笑顔で)承知しました。ありがとうございました。結果はまたお伝えしますね。

といった残念な会話を何回やったかわかりません。

なぜこうなってしまったのか?

これ、マネジメントの日本語訳に問題があるのではないでしょうか。一般的に、マネージメント=管理という意味で使われ、管理=確認する。チェックする。というイメージで使われているように思います。

誰がこんな訳をしたのでしょうか?Google先生に聞いても、Wikipediaに聞いてもわかりませんでした。その人に文句を言いたかったのですが…

だから、”マネージャー=管理者=確認、チェックする人”という意識が世の中に根付いてしまっているのではないでしょうか?この感覚がマネジメント界隈に蔓延し、文化として根付いてしまっているように思います。

特にシステム開発などの現場では、このマネジメントスタイルをとるプロジェクトマネージャーが非常に多く、その多くの現場で担当者が泣いていたり、プロジェクトが炎上していたりしています。

システム開発手法が成熟してくることによって、システム開発自体がテンプレート化してきた影響も大きいと思います。手順化、テンプレート化されたことにより、システム品質の向上には一定の寄与をしたのですが、問題も発生しにくくなりました。さらに、システムが大規模かつ複雑化することにより、開発体制は大規模かつ役割も詳細に分割されるようになったのです。

その結果、”進捗管理だけするマネージャー”や”課題管理だけするマネージャー”と、名ばかりのマネージャーが増えたことにより、さらに”マネージャー=管理”のイメージが強くなったこともあると思います。

マネジメントの本来の意味は

「1分で話せ」「一行書くだけ日記」等、成長のための行動様式を優しい言葉で書かれている、伊藤洋一さん(https://twitter.com/youichi_itou?s=20)がVoicyでこれまた本質的な一言でマネジメントを言い表していたので紹介します。

マネージメント = なんとかする
マネージャー = なんとかする人

これなんだ。とスーッと腹に落ちました。私も以前から”マネジメント=推進”と訳したい派だったので、この表現が非常にしっくりきました。”物事を何とかする。そのための手段は選ばない”これだ。と思いました。

プロジェクトマネジメントに置き換えてみると、下のようなイメージになると思います。皆さん、その管理ツールを使いこなすことを”マネジメント”と誤解しているんですね。

プロジェクトを成功させるため
プロジェクトの状況を把握し、そこから問題点を発見する。その問題点を積極的に介入しながら解決に導く。
進捗管理、課題/リスク管理、品質管理といった各種管理手法は、それらを様々な観点で分析しながら問題を発見するためのツールである。

そのほか、2004年にも同じ疑問を持たれた谷島氏が書かれています。ここでは、ドラッガーを引用し、「(マネジャーは)オーケストラの指揮者に似ている」と表現されています。
オーケストラの指揮者というイメージでは、”リードする、調整する”といった意味での”マネジメント”という感覚があり、この表現も正しいと思います。

そのほかにも、多くの識者が”マネジメント ≠ 管理”ということを散々書かれているものの、一向に改善しないようですし、最近では、”マネージャー=管理者”の指導による”マネージャー=管理者”がさらに量産されているような感覚もあります。

このままでは、世の中に破綻プロジェクトが量産される危険が高まります。では、どうすればよいのでしょう。

まずはマインドセットを変えていこう

と、身も蓋もない答えになってしまうのですが、意識高い系になってもらうように仕向けなければなりません。

我々がやるべきことは、伝えること、見せることだと思います。必要なファクトを収集し、そこから発見される問題の種を拾い上げ、解決までの道のりを示し、ステークホルダーと会話をしながら解決させる。という、カッコイイマネージャーの姿を見せようじゃありませんか。まねさせて、出来たら褒めて伸ばしていきましょう。

必ずできるようになるはずです。

やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ
ー 山本五十六

私自身も、自分の手に届く範囲で、一人一人丁寧に、一人でも多くの優秀なマネジメント人材を輩出できるよう頑張りたいと思います。


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