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君たちはどう教えるか


先生じゃなくても教えなきゃいけない

仕事でも遊びでも、後輩をもつようになると、知識や技術を人に教えることがあるだろう。教員やアドバイザー・コンサルタントのような教えるための専門家でなくても、人に教えなければいけない状況は発生する。

そういう時にノウハウがないと、その場しのぎ・我流で教えることになる。(教えるという行為が、その場しのぎで適当に完遂できるものだと軽んじられている印象すらある)

しかし、教えるための専門家が存在することからも分かるように、教えかたには理論や枠組みがある。専門家でなくても知っておいて損はない。我流よりも質が良くなるだろう。

筆者は専業ではない立場で指導や教育に携わっていた。勉強し実践してきた上で、素人であっても押さえるべきだと思ったポイントをまとめてみる。

教えるときに考えるべき3つのこと

分野によって様々な理論があるだろうが、焦点を当てるべきポイントは大きく3つあると思う。

  • 何を教えるか (目標を設定する)

  • どう教えるか (実践の場を確保する)

  • うまく教えられているか (達成度を評価する)

何を教えるか (目標設定)

  • 教わる人のニーズは何か

  • それに応えるために何を教えるか

  • 教える内容が重要な理由

そもそも何をどのような理由で教えるのか明確にしないと方針が立たない。しかしこの部分が曖昧になりがちではある。とくに教えることが本業ではない我々にとっては、必要に迫られて仕方なく教えることも多いだろう。教わる人のニーズとは関係なく、自分の知識を伝えるだけで教えたことになると考えがちだ。

教えるとき、必ず教わる相手がいる。教えること自体よりも、教わる相手に正しく身につけてもらえることのほうが重要だ。そのため、相手が何を修得する必要あるのか、あるいは何を修得したいというニーズがあるのか、教える前に検討する必要がある。

理論としてはカリキュラム開発やインストラクショナルデザインなどが該当する。枠組み (フレームワーク) としてはADDIEモデルが有名だ。Analysis (分析), Design (設計), Development (開発), Implementation (実施), Evaluation (評価) の頭文字をとったものだ。他にも様々な手法があるが、共通して重要なのは分析が最初にある点だ。

また重要性を理解してもらうことは、やる気 (モチベーション) を確保する点でも重要だ。モチベーションにまつわる理論や仮説も心理学領域を中心に多様なものがあるが、たとえば「モチベーション = 期待 × 価値」で説明する期待×価値理論では、その人が実現できそうか (期待・自信) という要素とともに、その人にとっての行動の価値 (重要性) がモチベーションを決定すると説明している。

どう教えるか (実践の場を確保する)

  • 前提知識を伝える

  • 実践してもらう

  • フィードバックする (実践直後 & まとめ)

知識を記憶し理解した段階は、まだまだ初歩だ。記憶に至っては、メモしたりネットで検索したりすれば良い話だ。本題はその次の段階だ。教えたことをもとに実際の問題に応用できること (実践) が次の目標だ。

教育分野でB.S.Bloomの提唱した、教育目標の分類学 (タキソノミー) という概念がある。やや複雑で理解するのが難しい部分もあるが、いずれの知識・技能においても記憶より先のレベルに応用や分析がある。

さらに言うと知識だけでは実践できない技能も多いコミュニケーションやスポーツなどといった、複雑な状況を臨機応変に対応する技能は、無意識に対応できることが完成形だ。意識的に知識を動員するだけでは不十分だろう。

スポーツの分野 (運動技能学習) ではフィードバックが重要とされる。実践した結果をもとに改善していく方法だ。実践した時の身体感覚が無意識のフィードバック要素になるし、周りから改善点を指摘することもフィードバックになる。

教える側としては、効果的なフィードバックを与えることが課題だ。実践直後にフィードバックすることと、フィードバックの効果を長持ちさせるために要点をまとめたフィードバックを定期的に交えることがポイントのようだ。

まとめると、暗記やペーパーテストで単純に測れるような暗記や理解より先のレベルを目指すのであれば、あるいは臨機応変な対応のような技能習得を目指すのであれば、実践とフィードバックの重要度が大きい。そのため、いかに実践の場を確保できるかがポイントになる。

うまく教えられているか (達成度を評価する)

うまく教えられているかを評価することは重要だ。うまく教えられていないのなら、方法を見直す必要がある。

どのような点を評価するかは、既に述べている。教えるのに重要なことは教わる相手の身につくかだ。評価対象は、教える側の感想やカリキュラムの消化率ではなく、教わる相手の目標達成度でだ。
そのため、目標は達成度が測れるようにすると、評価しやすくなる。

これは、先に紹介したカリキュラム開発やインストラクショナルデザインに組み込まれていることの多い。

教育の素人としては、目標設定の段階で達成度を測れるようにしておく工夫は、知らないと実践できないと感じたため、あえてポイントとして挙げた。

まとめ

  • 最初に相手のニーズ・必要性を分析して目標を設定する

  • 実践の場を確保してフィードバックする

  • 達成度を評価する (評価できるように測れるような目標にしておく)

つまり、ちゃんと教えようとすると、それなりに大変なのだ。方法論を学ばずに、きちんと教えられると軽々しく思わないほうが良い。教わる側としては、高望みせずにアドバイス程度と思ったほうが良いだろう。

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