見出し画像

電球の材料集めから光らせるまでを学ぶ、インスピレーションキャンプ【宣伝会議/コピーライター養成講座】

良いアイディアが閃く。

よく頭の上で輝く電球に例えられるが、アイディアは何も無いところから天才的に浮かぶものではない。アイディアは自分の中にある情報の組み合わせなのである。

先日、編集・ライター養成講座のご縁で宣伝会議から“とあるお誘い”を頂いた。
コピーライター養成講座の65周年記念講座である「インスピレーションキャンプ」受講のお誘いである。

このお誘いに対し「私はコピーライターではなくライターのですが・・・」とは別に思わなかった。
いや、VARで確認しないとわからないぐらいには眉を一瞬だけひそめたかもしれない。(冗談)

しかし今回の講座のコンセプトは「企画力」に焦点を当てたものであると説明を受けて、率直に私は強い興味を抱いた。

コピーライターの仕事は専門ではないのでわからないが、ライターの場合だと企画や構成立案、取材、再構成、執筆、校正など様々な作業工程がある。
一つ一つは独立したものだが、同時にベルトコンベアのような流れ作業の一面もあると私は考えている。

つまり最初の企画工程の質を上げることは、最終的に完成品の質にも直結することなのだ。もちろん企画以降にある作業の質を維持することも重要だが、最初のところをしっかりとしたものにしてベルトに流し始めるに越した事はない。

そして企画に必要なアイディア集めに関してはライター、コピーライター、あるいはクリエイター問わず応用できるものも多いと思った。

今回はコピーライターを志すというよりは、ブラッシュアップのためのヒント探しとして、この有難いお誘いを引き受けさせて頂くことにした。

ここからは「インスピレーションキャンプ」を全4日間受講しての感想を記していきたいと思う。
詳しい内容に深く触れることはできないが、「自分が抱える問題を解決する講義はこれなのでは?」と少しでも参考になれば幸いである。

インスピレーションキャンプとは?

インスピレーションキャンプは4日間という短期集中型で開催される。
「企画」にまつわるテーマで授業が進み、初日となるDay1は「整理術」、Day2は「発想術」、Day3は「突破術」、Day4は「実行術」について学ぶことができる。
各日、業界の第一線で活躍するコピーライターやクリエイティブディレクター6人から各40分ずつの講義を受ける形だ。

だがコピーライターのいろはを学ぶのであれば、当然の話だがコピーライター養成講座を半年間受講する方が良いと思う。そちらを受講した経験は無いが、私が昨年受けた編集・ライター養成講座の濃密な時間を考えると、きっと同様に質の高いカリキュラムだと想像できる。

しかしピンポイントで企画にまつわるノウハウを学びたいのであれば、今回の特別講座は十二分に得るものが多い講座だと言える。

実際にそのままやってみても役に立つ仕事術はもちろん、噛み砕いて自分なりにカスタマイズしてみることができるヒントも多い。

ちなみにリアルタイムでの授業は先日終了したが、今後はオンラインでのアーカイブ配信による受講となる。4日間通しでの視聴はもちろん、各一日単位での購入も可能である。

電球の材料集めを学ぶDay1「整理術」

Day1ではアイディアの材料となる情報の集め方や、整理術、取捨選択術を学んでいく。

第一部:橋口幸生氏「ソーシャルメディアでヒットを狙うためのインサイトのまとめ方」
主に日常生活の中から情報をインプットする収集術がメイン。決して難しいことではなく、少しの意識で情報をインプットすることが可能なのだと感じることができる講義だった。

第二部:佐藤友美氏「読者の目がとまる、引きのある情報収集の技術」
ライター目線での情報収集術がメインの講義。用途に応じたタモリ式と徹子式のインタビュー術はコミュニケーションを取るのに様々な応用が効く考え方だと学んだ。

第三部:堀宏史氏「『時間』と『ストレス』を大幅削減できる情報整理術」
捨てることで得られるインプット術の講義。アウトプットがつまらない時はインプットを捨てて見直し、改めてどうやってインプットをしていくのかについて解説。

第四部:中尾孝年氏「面白いように商品が売れるようになるナッジ活用法」
主に収集術についての講義。Create(想像)とImitate(模倣)の違いについて指摘されており、非常にハッとさせられる内容だった。この二つの差を分ける収集術はどの分野でも活きると思う。

第五部:金泉俊輔氏「誰とも被らないコンテンツを作れるファクト整理」
ライター・編集者目線での情報収集術の講義。メディア編集者らしい信頼のおける情報源の築き方や起きている事象の見極め方、企画にする際の基準とも言える三原則を解説している。そのまま実践できるような収集術も多く紹介されている。

第六部:岡本欣也氏「生活者の『欲しい』に確実に応える、第三者視点情報の集め方」
クライアントとのやり取りの中から得る具体的な情報収集術を紹介。人と自分のド真ん中に当たるアウトプットの導き方に注目。


基本的にどの講師にも共通しているのは、「何も無いところからアイディアは出てこない」ということだ。
アイディアはインプットした情報を組み合わせたり、形を変えてみたりすることで生まれる。

個人的に大きなヒントになったのは、「日常生活に目にするもの耳にするものからでもインプットはできる」「アイディアをサーチするのではなく、思考を噛み砕いて糧とする」などである。

インプット=読書という思い込みもあったのだが、何せ20年間で1冊しか完読した本が無いぐらい本を読まない人間なので、自分でも実践できそうな考え方を授けてもらったと思う。

私自身はどちらかというとライターなのでコピーを書くわけではないが、情報の収集という点においては、記事を企画する上での切り口に繋げることができる考え方だと感じている。

恐らくこのDay1の内容は非常に多くの人が抱える悩みを解決してくれるものとなっていると思うので、もし全4日間の中でどれか一つだけオススメを選んでくれと言われたらDay1の受講をオススメしたい。

Day2「発想術」

※期限終了前にアーカイブを視聴できなくなってしまい事務局に確認中。受講が完了したら改めて更新する予定。

電球の組み立て方を学ぶDay3「突破術」

自分の中に様々な情報をインプットしたとして、それをどうやって活かしていくのかが次の課題である。

Day3の「突破術」では、考え始めから最終的なアイディアに至るまでの導き方を学ぶことができる。講師によってシチュエーションも様々だ。

第一部:玉山貴康氏「コピーライターは戦略家であり、社会心理学者でなくてはならない」
書いたコピーでどのような成果を得るのか?そしてそこにどうやって辿り着くのか?考えなければならないものは何か?「コピーを書く」という作業の中身を細分化して論理的に学ぶことができる。

第二部:下東史明氏「商品を買うように、アイディアの起点や思考の道筋を得ることはできないのか?」
人はそれぞれ長い歴史や経験を通してコピーを考える公式を持っているという講義。公式の考え方も面白いが、言葉の捉え方、意味の深掘りの仕方も興味深い内容だった。

第三部:山口広輝氏「一方通行になりがちなコミュニケーションを突破する方法」
世の中の人々が抱く広告に対する印象から入った上で、どのように考えれば受け入れてもらえる広告を作り上げることができるのかがテーマ。競合が乱立する中で引き立つ広告の考え方にも注目である。

第四部:角田誠氏「絶望の淵に立つ」
考えても、考えても、良い案が浮かばない。そんな時に取る発想の転換や具体的な行動について、講師の経験を元に解説。

第五部:中島信也氏「書けない時は『おりこう』に、そしてそのあと『うんこ』を書く。行きつ戻りつの先に『天才案』が待っている」
人間には必ず書けない時が訪れる。その書けないことから脱却する考え方と方法が講義のテーマである。「書けない」ではなく「書かない」という言葉が強く印象に残った。

第六部:こやま淳子 氏「脳にディレクションをする。」
どのようなコピーにしたいか?何を解決したいのか?など、自分の脳に対して問いかけながら方向性を決めたり、必要な取材をしていく考え方の講義。「脳はブラック仕事が嫌い」という考え方は大切にしていこうと思う。


Day3では、一度は見聞きしたことのある広告やCMなどを手がけてこられた講師陣の仕事術だけではなく、そもそもなぜ人々の記憶に今も残るようなものを作れるのかという思考の一端も講義の中から見ることができる。

得たい成果はどのようなものなのか?
逆算してどのようなクリエイティブが必要になっていくのか?
現状はどうなのか?
何を解決したいのか?
書き上げたクリエイティブは果たして独りよがりになっていないか?
共感を得るべき相手の目線に立っているのか?
等々、同じことがライターとしてどういう記事を書くのか?に繋げることができると思う。

勉強や情報収集はできていても、実際に企画へと起こす部分で問題を抱えている方にDay3はオススメである。

電球の光らせ方を学ぶDay4「実行術」

最終4日目となる「実行術」では、クライアントへのプレゼンや付き合い方、チーム作りがテーマとなっている。

第一部:市川晴華氏「圧倒的な『チーム力』で壁を突破する瞬間」
自社のプロジェクトチームだけではなく、クライアントも巻き込んだプロジェクトチームの築き方がテーマ。イメージの共有方法や提案の仕方、案件が終了した後の振り返りなど、関係作りのノウハウについて案件を交えながら紹介。

第二部:青木一真氏「表現づくりから、関係づくりへ」
8割の仕事が競合プレゼンで獲得し、9割の仕事を継続案件に発展させてきた青木氏による関係構築術10箇条がテーマ。クリエイティブの質だけではない人間関係の構築の仕方を学ぶことができる。

第三部:鈴木大輔氏「真面目な人ほど、勝敗を左右する『もう片方のスキル』に気づかない」
良いコピーを書くだけでは採用されないし、それでは意味がない。クライアントへのプレゼンはもちろん、社内で企画を通すためのプレゼン術がテーマ。戦略プランナーの経験と理論に基づくメソッドを紹介。

第四部:柿並俊介氏「営業経験を活かしたプランニング・プロデュース術」
クライアントと関係を構築する上でプレゼンに必要な要素がテーマ。自分が伝えたいことを持ちつつも、クライアントの疑問や一番解決したい部分を適切に捉えることの重要性がわかる講義だ。

第五部:原晋氏「説得でなく納得。自分=世の中という立場で話す」
「伝わるプレゼン」の重要性を学ぶ講義。効果の無い広告が世に出ても意味がない。より効果のある広告を完成させるために、プレゼン段階から何を考えてクライアントにプレゼンを行い、どうやって同じイメージを描くのか?についてポイントを紹介している。

第六部:鈴木晋太郎氏「他人の力を借りる力」
クライアントは企画を通すために超えるべき壁ではなく、ヒントをくれる人達として捉える講義。テレビを見ていれば絶対に見た事のある有名なCMを例題として、クライアントから得たヒントを元に企画として練り上げるまでの考え方を学ぶ。


私はコンペに参加することはないので、プレゼン系のノウハウを使う機会は限られると思うが、コミュニケーションという点ではヒントをたくさん得ることができた。

コピーライター、ライターはもちろん、営業職の人が見ても参考になる講義だと思う。

最後に受講してみた感想を。

Day2の視聴が終わっていないものの、「インスピレーションキャンプ」と言うだけあり企画アイディアにまつわる要素を幅広く学ぶことができる。

最初にも述べたが、コピーライターのいろはを学ぶのであれば、コピーライター養成講座を受講することをお勧めする。
だがピンポイントで企画要素に悩みを抱えているのであれば、このインスピレーションキャンプも得るものが多い。
そもそも第一線で活躍するクリエイター24名からの言葉なので、勉強にならないわけがないのだ。

コピーライター養成講座の企画ではあるが、ライターの私でも手段というよりは概念を十分に取り込むことができた。
Day1のある講師の言葉を借りるなら、「その手段に至る発想の仕方を取り込む」といったところだ。

「ストレートにノウハウが知りたい」「ヒントを得たい」「自分をブラッシュアップをしたい」という方であれば、職種問わず受講してみる価値は十分にあると言える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?