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思い出すのは

白い空に白い鳥が飛んでいったのを
きれいだと思って見ていた

クリニックの先生が
お変わりありませんか?と聞く
はい、と答える
ではいつも通りお薬お出ししておきますね
と言われて診察が終わる
毎月の通院はこれといって何も変わらない

いつだって見に行くことができるのに
いつだって知ることができるのに
もう何も見たくない
何も知りたくない
だから何も見ていない

きっとずっと変わらないあの場所で
いつもと変わらない言葉が交わされて
何も変わらない世界がそこにはあって
もう居場所なんてものはなくて
そうなることを望んだ

大切だったことも本当で
無くしたかったことも本当だった
アンバランスで頼りない決意を委ねたせいで
ひどく傷つけた
分かって欲しいというエゴが
自らの傷も抉る
勝手だと思うだろう

何を望んで何を求めた?
ずっと何も見えなかった
それでも離せなかった
歪んだ狡さと臆病な好きが
いつだってそこに居て
何もかもを苦しめた
それでも幸せだった

いくつもの眠れない夜

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