ドラゴンクエスト5 -実家の友達-

ドラゴンクエスト5は1992年に発売されたスーパーファミコン用ソフト。かの有名なドラゴンクエストシリーズ本編の5作目として発売されたRPGタイトルだ。ドラクエ恒例の副題として「天空の花嫁」が冠されている。

この作品、自分が最初にプレイしたRPGのゲームで、相当思い入れの強いタイトルである。

家の最寄駅から一駅だけ電車を乗った先に駅近の小さなゲームショップがあった。確かそこで何かしらのプレゼントとして買ってもらったはずだ。当時はドラクエのドの字も知らないような小学生だったから、きっと父親から多少のレコメンドはあったのだろうと推察。



ドラクエ5といえばそのストーリーの素晴らしさに言及されることが多い。
父、主人公、双子の子供、と三代に渡る血筋の冒険や、プレーヤーなら誰しもが悩む人生最大の選択など、話の流れがとてもドラマチックで最後まで熱が冷めることなくプレイできる。

そんな本筋の素晴らしさ、小学生の自分はというと、ぶっちゃけるとあまり理解していなかったように思う。上述の人生最大の選択も割とあっさり決めた気もするし(初プレイ時は道中の宝箱の利点からフローラを選択するというドライっぷり)。まあ今考えてみても、人生の機微を汲み取るのは小学生にとっちゃ荷が重いか。

歳をとればとるほど味を噛み締められるようになった本作。だからといって、小学生時にハマらなかったかと言えば全くそうでなく、思い返してもドラクエ5の魅力に取り憑かれていた記憶が満載。


じゃあ何が一番心に残ってるのかと言えば、ずばりモンスター。
厳密に言えば、モンスターを仲間にするシステム。これにすっかり骨抜きにされていた。

通常エンカウントする敵の中に一部仲間になるモンスターが存在する。それらのモンスターは戦闘後、個体ごとに設定された確率で仲間になる、というシステムで、派生作品のドラクエモンスターズをどこか彷彿とさせる(発売順でいうとドラクエ5が先)。

子供ながらこれがすごく楽しかった。今やってもたぶんこれが楽しい。
鳥山明氏のデザインした可愛いくてかっこいいモンスターの数々をコレクションする感覚とでもいうのか。それまで闘っていた敵が急に自分の手札になる快感が堪らなかった。
仲間になると専用のドット絵で小さな姿を見せてくれるのも嬉しかった。この姿は仲間にした俺しか知らんねんぞ、みたいな。

本格的にモンスターを仲間にできる頃には主人公の一人旅が始まるのだが、この仲間モンスター達のおかげで少しの寂しさも感じたことはなかった。繰り返しプレイするうち、早く人間の仲間よりもモンスターの仲間を!とすら思うようになっていた。


上述の通り仲間モンスターはそれぞれ仲間になる確率が違っていて、簡単に仲間になるスライム、オークキング、ゴーレムから、とても仲間になりにくいはぐれメタル、メガザルロック、キラーマシンまで様々。
当時、これまた親に買ってもらった攻略本をページがバラバラになるまで眺め触り倒し、これから向かう先にはこんな仲間モンスターがいるのか、だとか、こいつは育てていくとこんな技覚えるのか、だとか、こいつ意外と最高レベル低いな、だとか、めちゃくちゃ思いを馳せていた。お気に入りのモンスターは模写もしたり。

なんならゲームのプレイ時間よりも攻略本を眺めてた時間の方が長かったかもしれない(装備品のイラストや呪文詠唱時のイラストなど想像のお供には本当に事欠かない本だった)。仲間にしたモンスターは攻略本上のソイツの箇所に○をつけて、姉妹たちと競い合ったりもしていた。ヘルバトラーは永遠の憧れ。


そんな仲間モンスターの中において、一際思い入れの強いモンスターがいる。
ボロンゴとピエールだ。

ボロンゴは物語の冒頭部に必ず仲間になるヒョウ型のモンスターで、仲間になる経緯等から他のモンスター達とは扱いが少々異なる。
作中に数年レベルの時間経過が発生するのだが、ボロンゴは幼少期に一度仲間から離脱後、時代を経てベビーパンサーからキラーパンサーへと成長を遂げ、ゲーム的に言えば別モンスターとなって再び仲間になる。彼はモンスターでありながら、半ば人間の仲間キャラのようなドラマチックな展開が用意されているのだ。このような扱いのモンスターは他にはいない。…まぁリメイク版には特殊な個体が数体増えているが、今回は割愛。

名前に関しても少し特殊で、通常はモンスターが仲間になると自動的に専用の名前がつけられるのだが(スライムならスラリン、ブラウニーならブラウンなど)、彼だけは四つの候補(ボロンゴ、プックル、チロル、ゲレゲレ)から好きな名前を一つつけることができる。

ボロンゴは完全なパワータイプで素早さも高い。
レベルを上げると「いなずま」という特技を覚えたのが印象深く、なぜそれまで力自慢だったヒョウが急に雷を…?と子供ながらにモヤっとしていた。仲間モンスター版勇者、とでも言いたかったのか(にしては他の仲間モンスターでデイン系唱えられる奴いたしなぁ…)。強そうな名前の割に覚える時期を考えると微妙な威力だったもんだから、結局あまり放電させなかったような。
ゲーム的にはたてを装備できないが為に守備に難ありなところもあるけど、仲間になった経緯を考えるとそんなこと言うのは野暮。終始物語のお供にしていた。

人によって呼び名が変わる彼だが、私にとってはやっぱりボロンゴ。
公式がなんとなくゲレゲレを推してるのがいまだに納得いかん。


もう一体のピエールはスライムナイトというモンスター。
スライムに跨った騎士の姿をしていて、シリーズの中では割と有名な方かも。

彼はパーティー加入時期の早さ、仲間になる確率の高さ、戦闘能力の高さと三拍子揃っていて、きっとお世話になった人も多いだろう。

彼は本当にすぐ仲間になる。確率的に言っても1/4とゲーム内で一番仲間になりやすい部類で、かつ出現する時期も早い。意識せずともいつの間にか馬車に潜り込んでいる。
覚える特技も優秀で、回復呪文のベホマから攻撃呪文のイオラまで幅広く習得する。サンタローズの洞窟でガメゴン相手によくイオを唱えてたのはいい思い出だ。
物語後半になってくると流石にイオラは物足りないが、彼自身の力も高く装備可能な武器も豊富にあるので、回復のできる戦士というポジションで充分やっていける。
要は最初から最後までとっても頼りになるのだ。

ピエールは別に物語に必須のキャラという訳ではない。しかし、攻略本の挿絵などでも度々ボロンゴと共に登場していたりと、公式側も明らかに優遇しているふしがあった。
まぁ彼の強さを鑑みたら納得の待遇ではある。
長い間一緒に冒険する内、いつしか勝手に頼れる友人のような安心感を抱いていた。セリフの一つもないのに、よく考えたら凄いことだ。


モンスターの魅力をここまで語ってきたが、他にもドラクエ5の好きなところはいっぱいある。劇中の曲は今でも全曲覚えているし、ちょっとしたセリフ回しなんかにも愛着がある。
でも結局、そんな単純に言葉にできることなんかじゃなく、全体を包む雰囲気そのものが好きなんだと思う。自分でもよく分からないが、なんというかプレイしていると「実家感」があるのだ。

夜にアルカパをこっそり抜け出してレヌール城へ向かうあの感じ。
サラボナで特別な夜にふらっと散歩するあの感じ。
ようやく辿り着いたグランバニアでサンチョと再会するあの感じ。
湖に沈んだ天空城を厳かな雰囲気の中探索するあの感じ。
スーパーファミコンというフィルターを通して覗きこむあの世界は不思議と第二の「実家」なのだ。

こんなことばっか書いてたらまたやりたくなってきたな。
そろそろスーファミ引っ張り出して郷帰りでもしようか。

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