5鍵beatmania -わたしのリズム先生-

コナミ発の音楽ゲームシリーズ、beatmania。
シリーズが生まれたのは1997年。そこから人気に火がついて今でも新作が生み出されている長寿タイトルだ。
『DJシミュレーションゲーム』と銘打つだけあって、筐体にはレコードを模した円盤状のコントローラーが付属する。

私も一時期猛烈にハマっていた。とは言ってもかれこれ20年は前の話。
今やコントローラーの鍵盤数は7が当たり前だが、もっぱら5鍵盤時代に家庭用を遊びまくっていた。

以下、最新の知識はカケラもない男の回顧録である。


中学生の頃、友達からPS版を借りて遊び始めたのが最初で、やり始めてすぐに熱中した記憶がある。
それまでにも音ゲーと呼ばれるジャンルには多少触れていたが(主にパラッパラッパー)、beatmaniaはより深く沼にハマった感触があった。

当時のbeatmaniaの楽曲群は今振り返ってみても随分と多彩だ。
プレイする楽曲を選ぶ際にはジャンル名が表記されたレコードを選ぶようなUI設計がなされているのだが、オーソドックスなヒップホップはもちろん、歌ものポップス、テクノ、スカやガバ、ユーロビート、ドラムンベースなど、およそ一通りのジャンルは揃っていたんじゃないだろうか。ボサノバやジャズなど、DJをシミュレーションできるのか中学生には甚だ疑問な曲まで存在していた。
当時の私に多様なジャンルを教えてくれたのは、間違いなくbeatmaniaだ。

そしてそのどれもが耳に残る名曲揃い。シンプルに曲がいい。
一曲は体感2分前後のものが多く、ヒットチャートを賑わすような曲と比べても短い。
その短さで曲の展開も凝っていて楽曲の個性がとても際立っている。
色んな作家が携わったからこそ、あそこまでバラエティに富んだ内容を実現できたんだなぁ、と改めて考える。

プレイ中に中央に表示されるアートワークアニメーションも印象的。
独特の空気感と、ストーリーがありそうで無さそうなサイケデリックなビジュアルは観ていて斬新な楽しさがあった。プレイ中はそんなもの観る余裕なんてないけど、人がやってるのを横目で見た時に度々魅入った思い出。
観るドラッグの様な空気感も漂ってて、本当に絶妙やなぁ、と感心しまくっていた。


私は楽器演奏が趣味である。
ベースと呼ばれる低音楽器を、社会人になった今でもたまに弾いている。どんな編成のバンドでも声をかけてもらえる可能性のあるオイシイポジションだ。

曲を演奏するにあたってどんな楽器・ジャンルにせよ、一定の流れは崩さずに音を出し続ける(そうじゃないジャンルもあるけど)ことが重要になってくる。人と合わせるとなると場の空気も読まなきゃならない。
ここで重要になってくるのがリズム感だ。

このbeatmania、リズム感の素地を築き上げるのに大いに役立つツールだと個人的に思っている。

流れてくるノートの指示に合わせて指定されたボタンをタイミングよく入力する、という基本的な部分は他の音ゲーと一緒なのだが、beatmaniaに関してはより「楽譜らしさ」があるように感じる。

一定の拍ごとに入った区切り線は小節線の役割を果たしているし、ノート間の空白が規則的で、視覚的に音符の長さを捉えやすくなっている。「◯分音符」という言葉とその意味を知らなくても、音の長さを相対的に把握しやすく、頭の中でリズムが組み立てやすくなる。

それとこれはゲーム上とても大事なことだが、入力していて単純に気持ちいいのだ。
DJシミュレーションという性質からなのか、曲はビートを強調したものが多く、プレイ中、パーカッションやドラムなどのリズムパートを担当することがよくある。
8ビートや4ビートなど曲の土台となるリズムそのものを無心に叩く時間は、自身が曲の根幹を担っているという程よい緊張感と、うまく続けられた時の得も言われぬ高揚感とで、ゲームプレイの記憶の中でも特に色濃く残っている。

こういった楽しい経験を続けていくうち、言語化しづらいリズムそのものへの理解力や魅力、楽しさといった部分が、年輪のように積み重なっていったように思う。
少なくとも、自分がリズムを理解する第一歩を無意識に踏み出せたのは、beatmaniaの存在がだいぶ大きい。


音楽の教育入門にぜひ紹介してあげたいリズム先生、ビーマニ。
今の時代なら初期作品は安く買うことができる。
みなさんもぜひ体験してみてはいかがだろうか。

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