【詩】「舟詩」とショパン「舟歌」
こんな詩があったのを思い出した。
中学生のころ買ったピアノのCDにショパンの「舟歌」が入っていて、それ以来私はこの曲が大好きだ。
ぜひとも、一聴をお願いしたい。耳で味わう宝石なのだ、これは。
ヴェネチアの運河。水が静かにきらめく中を、舟がゆきかう様が見える。
それはもう現実の水上都市ではない、
私たちの心にいつしか生まれた夢の運河だ。
私たちはその上で、ぼんやりとたゆたう。
さざ波に光散り、古都の尖塔の輪郭が揺らめく。
晴れやかでありながら同時にものさびしい、
いつか過ごした一日の幻がよみがえる。
一艘の小舟で一生を過ごす少年。
その平凡な一日を思って、私はこの詩を書いた。
高校1年生、音楽の学年末発表だった。
友人と組んで無伴奏2部合唱をすることにし、私が書いた歌詞に友人がメロディをつけたのだ。
歌詞を書くために気をつけなければならないことが多分あるのだろうが(音数とか)、そんなことは気にせず私が書いたものだから、彼女は苦労したはずだ。
できあがった音楽は絶妙な哀感をそこかしこにたたえていて、歌詞の源・ショパンの「舟歌」の絢爛たるまぶしさからははっきりと離れた。
私は暗い詩を書いたつもりはなかったのだが、こうして眺めると、どうも短調の響きが似つかわしいようだ。
友人は作曲や編曲の勉強を経て、今は音楽関係のライターになっている。
大掃除の際に楽譜をごちゃごちゃ入れた箱が出てきて、その中にあったのを発掘した。
茶色いしみだらけの、手書き楽譜のコピー。
いろんなところへ行っていろんなことをしたはずだが、あの頃から何も変わっていない気がする。
もう25年がたとうとしているのに、「いつもぼくはここにいる」のだ。
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