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読書感想

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読んだ本の感想。主に読書メーターから転載。たまに長いものも。
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2022年2月の記事一覧

読書感想-「北条政子」永井路子

https://bookmeter.com/books/17056596

600ページ近く、歯ごたえのある小説だった。
「炎環」のほうが長さと構成の両面で読みやすかったと思う。ただ、歴史に翻弄された一人の人生に迫ってゆく重みは、こちらのほうが断然味わえる。

最後に書いたが、「もう一人の自分」と激しく言い争ったりする演出が気に入った。人間の葛藤を表すのに、そうした書き方をする人はあまりお目にかか

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読書感想-「罪と罰 上」ドストエフスキー

睡眠時間が削れても、本を読む手が止まらなくなることがある。すると翌朝、まさに今だけれど、寝ぼけたまま電車に乗るハメになる。そういう意味でも「罪」な小説である。

人間が多数出てきて、互いに呼び名が変わったりする。ロシアの姓名に馴染みのない僕らは、メモをとらないと読み進められない。初読の人は、おおむね、そこで挫折するのだと思う。

しかしハードルを一度超えると、そのぶん没入の度合いも甚だしくなる。た

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読書感想-「罪と罰 下」ドストエフスキー

読書感想-「罪と罰 下」ドストエフスキー

※ヘッダー画像は自作の人物相関図

https://bookmeter.com/books/580319

感想に盛り込めなかったが、エピローグの30ページが絶品なのだ。この感動を味わうために1000ページを読むようなもの。

むかしは「ラスコーリニコフの思想が打ち破られた」ことがショックだったと思う。当時は、自分も彼と同じく自意識過剰な学生の一人だった。

いま読んでみると、その思想を打ち破った

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読書感想-「北氷洋」イアン・マグワイア

読書感想-「北氷洋」イアン・マグワイア

サバイバル、ミステリ、さまざまな要素が混ざった冒険小説。鯨漁船という非日常の世界を垣間見るのが楽しい。

■動物や氷山との闘いに加え、人間の思惑も交錯する。シロクマに食われて人が死に、殺人事件も起きる。乗員たちの関係が壊れていくのが面白い。

■主人公の医師は最初、われわれに近い視点の傍観者である。しかし徐々にストーリーに介入し、やがて牽引しはじめる。その豹変ぶりも見どころだ。

■伏線回収は中途

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