読書感想-「罪と罰 上」ドストエフスキー
睡眠時間が削れても、本を読む手が止まらなくなることがある。すると翌朝、まさに今だけれど、寝ぼけたまま電車に乗るハメになる。そういう意味でも「罪」な小説である。
人間が多数出てきて、互いに呼び名が変わったりする。ロシアの姓名に馴染みのない僕らは、メモをとらないと読み進められない。初読の人は、おおむね、そこで挫折するのだと思う。
しかしハードルを一度超えると、そのぶん没入の度合いも甚だしくなる。たとえば青白いラスコーリニコフの神経質そうな表情の歪み。たとえば彼の妹・ドゥーニャのたたえる気品と、ヒロインのソーニャが持っている高潔な雰囲気の微妙な差ーー。そういったものが思い描けるようになる頃には、この小説はぽっかりと大きな口で、読者を呑み込んでしまっている。
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