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読書感想-「罪と罰 下」ドストエフスキー
※ヘッダー画像は自作の人物相関図
3度目の通読。細部に目が行き渡り、ラスコーリニコフの周囲で起きる事件も味わえた。
■貧しさに狂う母の苦悩、予審判事との迫力ある応酬、理解できない息子の「論文」にすがる母……懐の深い小説だ。
■ソーニャが警察署について行く場面の印象は大きく変わった。普段おどおどしている彼女が、土壇場で引導を渡す。本気で誰かを愛している人だけが出せる厳粛さだろうか。
■妹の結婚など主人公の「心残り」が解消されるほど、本人が不幸になってゆく構造が面白い。客観と主観の幸・不幸に広がる、大きな乖離。そのギャップが読者の感情を揺さぶるのだろう。
https://bookmeter.com/books/580319
感想に盛り込めなかったが、エピローグの30ページが絶品なのだ。この感動を味わうために1000ページを読むようなもの。
むかしは「ラスコーリニコフの思想が打ち破られた」ことがショックだったと思う。当時は、自分も彼と同じく自意識過剰な学生の一人だった。
いま読んでみると、その思想を打ち破ったのが「生活」であることに気付いた。この言葉は、予審判事のポルフィーリイや、地の文でもたびたび登場していたと思う。
生活。最も偉大で、もっとも陳腐なもの。
一足飛びに成し遂げられたどんな栄華よりも、ずっと、ずっと貴重なもの。
大人になってそれを知ってから読むと、ますます、感慨もひとしおである。これが40代、50代になったらどう感じるのか、いまから楽しみで仕方ない。
哲学、事件、そして人格と人格がぶつかりあう、迫力ある応酬。これまで読んできた中でも数少ない、「面白すぎる」小説だ。「罪と罰」と「カラマーゾフの兄弟」は、死んだら棺桶に必ず入れてもらいたい。
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