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『復興建築』アナザーストーリー#01|本日発売にあたって

こんにちは。
出版社トゥーヴァージンズです。

本日、味なたてもの探訪シリーズ第3弾『復興建築 モダン東京をたどる建物と暮らし』が発売となりました!

第2弾の発売からちょうど1年……。
毎度ドタバタ劇を繰り広げまわりを錯乱させるポンコツ編集Kが、今回もすばらしい制作陣の方々のお力添えによって、胃痛とともに本書の完成にこぎつけました。

的確丁寧な指導をしてくださった監修の先生、絶対の信頼を置くカメラマン、優秀で心強いライター陣、どんな依頼にも200%クオリティで描きあげてくださるイラストレーター、そしてコロナの不安な状況が続くこの時期に取材に応えてくださった皆さま、心より感謝申し上げます。















しかああぁぁぁぁあああし!

本書では紹介しきれなかった建物の魅力、紙幅の関係で載せきれなかった写真、溢れる思い、「本当はもっっとあるんです!」がほんまにもっとあるんです!

そんな訳で、このnoteでは本書で紹介しきれなかった「復興建築・アナザーストーリー」をご紹介します。


「味なたてもの探訪シリーズ」とは?

そもそも「味なたてもの探訪シリーズ」とはなんぞや? というお話から。

【味なたてもの探訪シリーズとは】
「建物」から街と人の暮らし、時代性を探るビジュアル探訪記。

建物は、その土地の歴史、風土、環境、社会情勢が立ち現れた時代の断片のようなものだと思います。
そして、そこには暮らし、仕事、人々の営みがあり、誰かにとっての「記憶」だと思うのです。

「味がある」の感じ方は人によってさまざまだと思いますが、この本では装飾的な外側の魅力だけではなく、内側で人々が暮らしてきた時間が滲み出ていているような建物に目を向けて、家主やその建築に関わる方のインタビューと建築の専門的な解説の両面から、建物の背景を理解するような本を目指しています。


これまでに刊行したのはこの2冊。(詳細は記事の最後にご紹介しますね)

看板沖縄

(左)『看板建築 昭和の商店と暮らし』(右)『沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶』

そしてこの度の発売がこちら。


『復興建築 モダン東京をたどる建物と暮らし』を大解剖!

復興建築

今回刊行した『復興建築 モダン東京をたどる建物と暮らし』は、実は前出の写真『看板建築 昭和の商店と暮らし』と同じ時代に建てられた建築を紹介しています。
それは、「大正12(1923)年9月1日に起こった関東大震災後に建てられた建築」です。

復興建築とは?

イントロ_関東大震災から復興へ

イントロダクション①「関東大震災から復興へ」


東京・神奈川を中心に首都圏全域にわたり震度5〜7の揺れ、死者・行方不明者数約10万5,000人(うち約9割が火災による)、全潰・全焼・流出家屋は約29万3,000棟という甚大な被害をもたらした関東大震災。
当時東京市の人口は現在の約2倍もの高密度、加えて木造家屋の密集地域が多く延焼火災が各地で発生しました。

震災後に「耐火・耐震構造」が街づくり・家づくりが一層求められ、街の復興とともに鉄筋コンクリート造(RC造)の建築が多く建てられました。


イントロ_復興建築図鑑

イントロダクション④「復興建築図鑑」


『復興建築 モダン東京をたどる建物と暮らし』では、関東大震災後から戦前(1923〜1930年代頃)までに建てられたこれらRC造の建築・建造物を<復興建築>と称し、東京に焦点を当てて紹介しています。
(*広義では災害や戦災など被災した地域の復興期に建てられた建築を「復興建築」と呼びますが、本書では上記を定義に構成しています)

そして、この時代に再生したのは建築だけではありません。

「都市」そのものです。


帝都復興計画とは?

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テーマ①「帝都復興計画から東京をたどる/土地区画整理」

震災当時、日本はこれだけ大きな地震が来たにも関わらず、地震の9日前に首相が急死し、直ちに対策に当たるべき政府が不在といっても過言ではない状態でした。

そんななか内務省の後藤新平が復興事業の先陣を切り、「復旧ではなく復興」を目指した「帝都復興計画」を立案。
震災からわずか4ヶ月弱で計画を決定、その後「帝都復興祭」に至る約6年3ヶ月のあいだに、東京・神奈川のまちは大きく変化したのです。

例えば、前述の通り、細く狭い路地が入り組み密集地帯の多かった区画を整備した「区画整理」。
焼失区域の約9割に相当したという大規模な区画整理は、世界の都市計画史上初の試みだったと言われています。

そのほかに、東京の「靖国通り」や「昭和通り」をはじめとする多くの幹線道路も、この計画で生まれました。
隅田川にかかる橋梁軍や、隅田公園や元町公園のような広場も災害時の避難場所としてこの時代につくられた場所です。

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テーマ③「帝都復興計画から東京をたどる/橋梁」

この先何度もやってくるであろう災害から「人々の命と、健康的な暮らしを守る」ため100年先の都市のあり方をも見据えた「帝都復興計画」は、現在の東京の骨格をつくった構想です。

2023年、関東大震災から100年を迎えるとき、東京にこの時代の建物がどれだけ残っているのでしょうか。


そのとき人々は。

一誠堂書店_見開き

インタビュー③「時を受け渡す古書店/一誠堂書店」

その当時に建てられた建築に関わる6件の方々へ取材をしました。

そのうちの1件、一誠堂書店」さんは110年以上の歴史を持つ神保町の古書店。神保町にとどまらず全国に一誠堂出身者を輩出する有名古書店です。

多くのメディアに取り上げられWeb上でもいくつかのインタビューを目にしました。たっぷりと前情報を頭に入れて迎えた取材当日、代表の酒井さんが案内してくださったのは「昔、家族や従業員、お手伝いさんが共同生活をしていた店舗の上階」でした。
(*ご厚意です……。通常は店舗の2階までしか入れません)

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インタビュー③「時を受け渡す古書店/一誠堂書店」

従業員と寝食をともにし、家事や礼儀作法を生活で教え、家族のように暮らし、働いていた一誠堂書店さん。

まちなかの、日常的な風景に佇む建物から、当時の貴重な生活風景に触れた取材でした。


復興建築を探してまちを歩いてみましょう

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復興建築タイムスリップマップ「日本橋エリア」

「この建築も?」と思うほど、実は100年近く前に建てられた建築がスクラップ&ビルドの東京にも、まだ多く残っています。

また1930年代、80年代のアーカイブ写真も掲載しており、過去と現在の変化を楽しめるまち歩きマップです。



ただ……
まだ多く、と書きましたがその建物もいつまであるかはわかりません。

本書の制作中にも「神保町ビル別館(旧相互無尽株式会社)」の建物が取り壊されてしまいました。
中をのぞいたことも復興建築だということも知りませんでしたが、いつも前を通るたびに気になっていた素敵なビルでした。

本書の帯の言葉は、この神保町ビル別館(旧相互無尽株式会社)と、本書で取材し現在は跡地に高層ビルを建設中の「旧中央区立城東小学校」を思いながら書きました。

歴史や文化、人々の記憶が詰まった建築は、あるとき一夜にしてあっという間に消えてしまうのです。
本書で紹介している建築の中には、数年後に存在しないものもあるかもしれませんが、そこにこの時代の人々の奮闘や希望を託した建物があったことを記録する一助になれば、と思っています。

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書店でお見かけの際は、ぜひお手にいただけると嬉しいです。


味なたてもの探訪シリーズのご案内

味なシリーズ

(中央)『復興建築 モダン東京をたどる建物と暮らし
監修:栢木まどか
写真:金子怜史
ライティング:岩佐陸生、藤沢うるう森沢順子加藤良子、編集部
イラスト:mimi
デザイン:細山田デザイン事務所


(左)『看板建築 昭和の商店と暮らし
監修:萩野正和(株式会社connel 代表取締役)
写真:金子怜史
ライティング(建築解説など):宮下潤也、編集部
イラストレーター:mimi
デザイン:細山田デザイン事務所
発売:2019年5月29日


(右)『沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶
監修・写真:岡本尚文
建築監修:普久原朝充
ライティング:アイデアにんべん、編集部
イラスト:mimi、川野航平
デザイン:細山田デザイン事務所
発売:2019年12月4日

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次回よりアナザーストーリーをお送りします!
どうぞお楽しみに。


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