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日記

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2023年8月の記事一覧

2023/08/30②

妹が首が痛いとぐずるので抱っこして母と一緒に小学校まで行く。過保護の部類だけどまたしばらく会えないのだしこれくらいい、と思う。十数年ぶりに来る校舎は全ての縮尺が小さく狂って見える。ここの職員は、つまり自分達のサイズに作られていない場所で働くというのはどんな気持ちがするんだろう。不思議の国への就労を決めたアリス、みたいなものかしら。

・昼になり
父親が密かにこしらえていた借金を爆速返済する夏の昼。

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2023/08/30①

「あなたが、自身のこの有様が露呈するのを恐れて、土地や建物の処理・利用について教団に問い合わせないのならば、私が直接連絡する。息子の口から周りに知れるよりはご自分でお伝えした方が名誉が守られるように思うが」といった内容のことを父に伝えた。肉親を脅すように言葉を使う日が来るというのは思ってもみないことで、想像していたよりも哀しみや喪失感に襲われることはなかった。ただ、身体の奥に芽生えたしこりのように

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2023/08/29

前日夜よりの記録、ほぼ旧Twitterに投稿したものなのだけど一応

午後9時24分
頼まれて、妹の潰したプチプチが本当に全部潰れているか確認する作業に勤しんでる

午前1時58分
エアコンのない実家で直近の大きなお金の動きを調べる&今後の収支計画を練る話し合いの計画を立ててるんですが、北東北の夜はもう秋だし、弟が言わなくても歯磨きしてると思ったらもう高校生だしでびっくりしてる
小学生の妹の寝息め

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2023/08/28

・ごく個人的な地獄の記録として、書き続ければ、これはいつの日にか財産になるかもしれないし、何もかもが落ち着いた時に自身の狂乱ぶりにふふっと笑えるかもしれない。これを楯に他者に迫ることはなるべく想像したくない。

・私は弟妹のために苦労しているのではなく、自らが受けた高校卒業までの生活の保証はせめて彼らに与えねばなるまい、という面倒なプライドのために動いてるから、だからいつでも援助を止めても良く、そ

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2023/08/27

極端な言い方をすれば常に頭の中にサイレンが鳴り響いているイメージで、それも音源は複数で、将来の不安と、義務感と、罪悪感と、やるせなさがせめぎ合い、自我は圧縮、加熱され雫となり滴り、墜落の過程で摩擦により真ん中が膨らんだオレンジ色の裂け目が胃の辺りに発生し、その熱量で仕事に立っている。みたいな具合なので帰宅してベッドに腰掛けたら最後星の終わりを思い出せそうなほどの巨大な沈黙が隣にいる。パルム抹茶味が

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2023/08/24

ワイヤレスイヤホンをつけたまま目を閉じる。そのまま顔も閉じるように両手で顔を覆うと、限りなく頭に響く音楽しか感じられない状態になる。皮膚の内側が音を伝えるしっとりとなめらかな物質でみっしり均質に満たされたようになる。この状態で、例えば輪切りにされたら、胴の部分は羊羹のように光の吸いつく深い色の断面となっているだろう。色素は音が決定するから、刃を振り下ろすあなたが、見たいと思う色を出してくれそうな音

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2023/08/22

姫のお考えはわかりますよ
これ以上近づけないのなら今度は遠のく日がひどくおそろしい
最高得点で時を止めて逃げてしまおうという算段ですね
/市川春子『25時のバカンス』

人が花火に誘ってくれた時の嬉しさで滅べなかったのが僕の失敗

2023/08/21

開店してすぐぐらいの、まだお客さんも入りきっていないぽっかり浮かんだような時間帯、バックヤードの方からパートさん二人分のきゃー!が聞こえる。ゴキブリかな、だったらちょっと嫌だな、でコオロギでした。まだ幼生っぽかった。そっかーもうすぐ秋なんだな、ほんとに相関あるか分かんないけど、と思いながらそこら辺にあったクロスで潰さないように包む。僕が虫平気なのは好き嫌いを持てるほど自我がはっきりしていないためじ

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2023/08/20

あとすこし、すこしで星に触れそうでこわくて放つ声——これが、声/佐藤弓生『薄い街』

短歌としてかなり歪なんじゃないかという気もします。でもこれ以上に完成された三十一音もなかなかないように思えて。この歌に短歌という枠組みが何をしているのか考えています。

2023/08/19

好きな落語があったはずなんですが忘れました。

2023/08/18

金魚には可哀想なことなんだけど、白点病に罹った尾鰭は冷える秋の日に霰の散った道路のような、面白味に欠けて顧みられることの少ない星系のような、どこか寂しい美しさがあって小学生だった私はいつもより数分は長く水槽に張り付いていた。メチレンブルーという濃紺の薬を水に溶かせば晴れた夜空のように暗い水を割って、奥の方から顔を覗かせる黒出目金や和蘭陀獅子頭は意思薄弱の惑星のようで、夕飯ができたと母が声をかけてく

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2023/08/17

全然読み終えてないし読み込めてないんですが、葛原妙子より山中智恵子の方がコントロールできない幻想の中にいる感じがする。葛原はその幻想の主として、あるいは自在に視点を変えてズームアップ/ダウンできるディレクターとして幻想に関わっているけど、山中智恵子はもうその幻想の住人として時には無力に佇むしかない、ような。本当はここに論拠となるような短歌を何首か挙げるべきなんでしょうけど、それは読み終えてからにし

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2023/08/16

『コワすぎ!』シリーズ見始めました。友達から「出てくる倫理観のない人が面白いよ」と聞かされていたんですが本当にその人キャラが立ってて面白い。呪具の使い方が呪術廻戦のミゲルが使う黒縄に似てる。

視聴後入浴を挟んで。ちゃんと怖かったし面白かったんですが、私がホラー映画に求めてる思わず畏怖を覚えるような異形のデザイン、現象、シーンがなかったから心からは惹かれなかったのだと結論が出ました。しかし面白いの

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2023/08/15

「先生に贈物をあげるね」
「何?」
「受け取れる人は限られてるけど、先生ならきっと大丈夫だよ」
「どうやるの?」
「まず眼を閉じて。それから、じっと、真っ暗で、何もないところを思い浮かべて」
/高原英理『観念結晶体系』(書肆侃侃房、2020)

引用は武夫から贈り物があると言われた正樹の、それをバルザムシュタインへの道筋だと涼解するまでの察しの良さが好き

人生のステージに合わせて読む本が変わる/

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