今はネットになんでもあるから──溢れたモノを整理してみたら【大根仁 5月号 連載】
おおね・ひとし● 映像ディレクター。ドラマ『共演NG』、Paravi・ひかりTVにて配信中。
「今はネットになんでもあるから」
先日、モノが溢れすぎてどうしようもなくなった作業部屋の大掃除をして、大量の本・漫画・雑誌・写真集・CD・DVD・レコード等々を処分したのだが、その「取っておくか? 捨てるか?」の文字通り取捨選択の基準となったのが「ネット上にあるか、ないか?」だった。
書籍類はその選択以前に「さすがにもう二度と読まないわ!」で、サクサクとBOOKOFF引き取りエリアに積むことが出来たのだが、手に取るたびにいちいち困ったのが、音楽関係と映像ソフト。音楽はよほどのレア音源でない限り、サブスクにあるし、サンプリング系の問題でサブスクに無いものでもYouTubeにあっさり上がっている。先日のDOMMUNEで渋谷系特集をやった時に「フリッパーズ・ギターの『ヘッド博士の世界塔』がサブスクに無いのは、渋谷系を語る上で大きな問題」というようなことを誰かが言っていたが、すぐさまチャットで「YouTubeにありますよー」とコメントされていた。
結局CDも「今後聴くか、聴かないか?」で判断したのだが、一時期狂ったように収集した8センチCDシングル=通称・短冊CDは、1枚も処分できなかった。300枚以上所有している短冊CDが、昨今のカセットテープブームのように今後再評価されることは無いだろうし、シングル曲ということは代表曲でもあるのでそれこそサブスクでいくらでも聴けるのだが、カップリング曲やカラオケバージョン(短冊CD時代はカラオケ時代でもあるので、必ずカラオケが収録されていた。練習用?)は、短冊にしかなかったりするので。小沢健二なんてサブスクはおろか、アルバム収録されていないA面曲「戦場のボーイズ・ライフ」「BUDDY」などがあり、ますます捨てられない。まあYouTubeにあるんだけどね。
書籍、音楽が終わって次はいよいよ映像ソフト。メインは映画のDVDなのだが、これがまた厄介。どういう契約だか知らないが、アマプラやNetflixに上がっていた作品が突然なくなったり、有料になったりするもんだから、一概に「ネットにあるから」では判断できない。そして短冊CD同様、今後再評価ブームが来るとは思えないVHSソフトがごっそりあって、これがまた判断に困る。「今後観るか、観ないか?」の以前にもはやVHSデッキを持っていないので、観ることすらできないのだが、「じゃあ捨てるか?」と言われれば悩んでしまう。
たとえば映画『東京上空いらっしゃいませ』(1990)、相米慎二監督作品としては欠点の多い作品だが、中井貴一と牧瀬里穂による『帰れない二人』の歌唱シーンなど奇跡のような名シーンがいくつかある。でも今後VHSデッキを購入して見直すとしてもこのシーンだけだしなあ……なんならこのシーンだけYouTubeにあるしなあ……とか思いつつAmazonで調べてみると16364円の高値が!? 確か数年前にレンタル落ちで買った時は数百円だったのに、いつまにかレアなブツと化していたとは……キープ決定! 『さらば愛しき人よ』(1987)は、今や巨匠となった原田眞人監督が、『おニャン子ザ・ムービー危機イッパツ!』と『ガンヘッド』という原田監督がフィルモグラフィから消し去りたいと思っているはずの2作品の間に撮った、郷ひろみと石原真理子主演のヤクザ映画。とはいえ、従来の東映ヤクザ映画のようなものではなく、映像もスタイリッシュ、ガンアクションや暴力シーンも従来の邦画にはなかったカッコ良さがある。拙作ドラマ『湯けむりスナイパー』でパクったシーンがいくつもあるほど影響を受けているのだが、さすがにこれももう見返すことはないし、国内では未DVD化ながらアメリカでリリースされた海外版DVDを持っているしなあ……と思いつつDVDを調べてみるとリージョンが欧米仕様で再生回数が限られていることが判明。危ねえ! キープキープ!!
『ダウンタウン松本人志の流 頭頭(とうず)』(1993)は、松ちゃん企画・構成・出演の、のちの『HITOSI MATSUMOTO VISUALBUM』シリーズの原型ともいえるオリジナルビデオ。『VISUALBUM』はショートの連作だが、『頭頭』は1時間弱の物語でそのフィルム的な質感も含めて中編映画と言ってもよいほどのクオリティで、個人的には松ちゃんが監督した映画も含めて、松本人志関連の映像作品として最高傑作だと思う。何よりも1993年という松ちゃんがいちばん狂気走っていた頃の才能が集約されている。だがこれはYouTubeに上がっていることを知っているし、削除されたとしてもすぐに全国の松ちゃん信者がすぐに再アップしてくれることだろうと、一応YouTubeを確認すると……映像汚え! キープ!!
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