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沖縄でワープを体験した話【岩井秀人 連載 10月号】

会社を立ち上げた頃は、「目標! 半年働いて、半年休む会社!」と強く念じていたのだが、やはり念じていたからといって叶うはずもなく、気がつけば結局ちゃんと働いてしまっていた。ありがたいことではあるが。

コロナよーいどんだった昨年、公演を2本(1本は本番直前で延期になったけど)、「いきなり本読み!」を5~6回。そして2021年に入ってからは「本読み!」が舞台、テレビと守備範囲を広げ、延期となった公演も地方を含め無事に全日程を終えた。そしてそのタイミングでぽっかりと1週間ほど空いた。

かねてから目論んでいた「沖縄で自転車に乗る!」を実行する時が来たのだ。

前回こちらに書かせてもらった、「1週間ほどロードバイク屋さんを巡りまくって知識を蓄えた挙句、たまたま通りかかった町の自転車屋さんで知らないメーカーのクロスバイクを買った男岩井」に端を発した岩井の「自転車ハマり」は、都内を周遊するだけではなく、「輪行袋」なる巨大な巾着袋にタイヤを外した自転車をぶち込み、電車やら飛行機に乗って移動し、遠く離れた地でマイ自転車をかっ飛ばすことにロマンの熱をたぎらせるに至った。書いていてもよく分からない。レンタル自転車を借りればいいではないか、とあっさり思うこともできるが、それでいて「自分の自転車と共に行くからロマンがあるんじゃ!」という確信が胸の奥にそびえ立っていた。それは今もこの胸にござる。

「所持じゃないでしょ! シェアでしょシェア!」という時代だというのはわかっているが、行った先でレンタルし、いつまでに返さなくちゃいけないというのも嫌だし、何より今の男岩井は「この自転車でどこどこを走った」という実績、ゲームでいうところの「アチーブ(目標・達成)」を集めている感がある。

実際、「沖縄を自分の自転車で走る」というだけでも異常に気持ちいいのだ。首里城までの4~5キロの坂道を延々登ったのもめちゃくちゃ楽しかったし、座間味でも延々、自転車で走り、みんなで自転車を借りて異常な登り坂を、歩くより遅いスピードで進んで「自転車邪魔!」などと爆笑したりしていた。

そんな中、死にかけた。

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