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宮沢章夫さんが教えてくれた『ちょうどいい』【2022年9月号 風間俊介 連載】『ダンスはうまく踊れない』

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短く略されているものが、世の中には多くあります。短く略すことで、親近感が湧き、身近に感じることが出来るのでしょうね。でも、多くのものがそうであるように、メリットがあればデメリットが存在する。略されると、どうしても軽くなってしまうんですよ。軽くなることで、魅力が増すものなら問題はないのですが、本来、重みがあったものが形を変えた時、もう同じものではなくなっているのかも知れないですね。

「僕の中で、『サブカルチャー』と『サブカル』は違うものなんだよ」
そう、宮沢章夫さんが言っていました。わかる気がする。『サブカル』と略されることにより、軽さが生まれ、ある種のファッションになっていった。そんな話を、宮沢さんとしました。

『ニッポン戦後サブカルチャー史』(NHK Eテレ)という番組で宮沢さんと共演していたのですが、とにかく、楽しかったなぁ。『サブカルチャー』と『サブカル』の話は番組内でもしていましたが、カメラが回っていない時もたくさんの話をしてもらいました。何処の馬の骨かも分からない僕の話や質問を、宮沢さんは楽しそうに返してくれました。僕も番組収録だということも忘れて、ただただ楽しく話していました。

宮沢さんが「80年代や90年代は自分の肌感覚があるけど、2000年代は分からない。風間くんにとって、00年代はどんな時代なの?」と聞かれ、考えた結果、浅野いにお先生の作品を挙げました。『素晴らしい世界』『ひかりのまち』どれでも言いたいことは伝わると思いましたが、『虹ヶ原ホログラフ』を薦めました。多分、その前に岡崎京子先生の『リバーズ・エッジ』や『ヘルタースケルター』の話を一緒にしていたから、それに引っ張られた部分もあると思います。すると後日、宮沢さんは「あの質問で、このタイミングで、この作品を挙げるのは凄いね」と言ってもらえたことが、凄く嬉しかった。正直、何をした訳でもなく、作品を生み出したのは浅野いにお先生なのに、褒められて、ただ嬉しかった。

先日、大根仁監督と宮沢さんの話をしました。

「宮沢さん、風間のこと『ちょうどいい』って言ってたよ」と教えてくれました。『ちょうどいい』。良いですね。人によっては、「それ、褒められてるの?」という人もいるかも知れませんが、何かとても良いですね。これからも、『ちょうどいい』を目指していけたらと思います。そうだ、宮沢さんと「パソコンで文章を後から気軽に整えられるけど、直す度に熱量は薄れていく」という話もしたなぁ。だから、今回のこの文章は直していません。

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