【16】商標登録にかかる時間はどれくらいなのか?

こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
最近すごく暖かくなって、夏が近付いている感じがしますね。

さて、商標登録に興味を持たれた事業者の方々が特に気になることの一つとして、「商標登録にかかる時間はどれくらいなのか?」という点があるのではないかと思います。

いくら登録の申請をしていても、商標登録が正式に完了するまでは、その商標を安心・安全に使えることは保証されません。なので、どれくらいの時間がかかるかというのは、たしかに重要なポイントと言えるでしょう。

そして、実際にそれを知った事業者の方々は、たいてい驚かれます
つまり、それだけ「予想外」だということです。

そこで今回は、「商標登録にかかる時間はどれくらいなのか?」について、お話ししていきたいと思います。少し長くなりますが、とても重要ですので、商標登録をご検討中の皆様はぜひご一読いただければと思います!

1.商標登録の完了までにかかる時間

すでにお話ししたように、商標登録をするためには、特許庁に登録申請をして、審査をパスすることが必要です。ということは、「商標登録にかかる時間」は、この審査にどれくらいの時間がかかるのかという点に影響されることになります。

近年、特許庁の審査完了までには、「約1年」がかかっています。
指定する商品・サービスの違いによって、審査部門ごとに多少の違いはありますが、だいたいこのくらいかかるのが一般的です。

そして、審査で「登録OKの通知(登録査定)」が出ると、原則として30日以内に商標登録料を支払って、そこから1~2週間程度で正式登録となります。

よって、商標登録の完了までにかかる時間としては、概ね「1年ちょっと」くらいと理解しておくと良いでしょう。

どうでしょうか。驚かれたのではないでしょうか?

時間かかりすぎ!!

と思われた方が、ほとんどなのではないかと思います。
(これでも、大昔にくらべればずいぶん早くなったのです…。)

起業時に、ドメイン登録と一緒に商標登録をお考えの方もいるかもしれませんが、ドメイン登録と同じように考えていると痛い目に遭うので注意が必要です。ドメイン登録は、遅くて1週間もあればできますからね…。

2.審査で引っかかると、さらに時間がかかる!

ところで、上述の「1年ちょっと」という時間は、審査にスムーズにパスできた場合の話となります。審査で引っかかった場合には、さらに時間がかかりますので注意が必要です

後でまた詳しくお話ししますが、実は、一度審査で引っかかっても「はいダメ~!!」と即却下されるわけではありません。申請書の内容を訂正したり、審査官の言い分に反論したりなどと、適切な対応をすることで、まだ商標登録が認められるチャンスは残っているのです。

ただ、それらの場合、手続の準備にかかる時間や、再審査の時間が必要となりますので、最終的にうまくいった場合でも、上述の「1年ちょっと」に追加でそれなりの時間がかかってしまうわけです。

引っかかる内容にもよりますが、審査で一度引っかかってしまうと、最終的に商標登録が認められる場合でもプラス数か月程度(下手をすると年単位)はかかりますので、ご留意ください。

3.ただし、審査を早める方法はいくつかある

さすがに時間かかりすぎ!!
そんなに悠長に待っていられないYO!

そんな風に考える事業者の方々も少なくないでしょう。
各社それぞれ事情があり、状況も違いますので当然の感想です。

そのようなこともあってか、実務上、「審査を早める方法」がいくつかあります。審査を早めるというか、審査の順番待ちをすっ飛ばすと言った方が、わかりやすいかもしれませんね(笑)。

その1つが、「早期審査」という制度の利用です。

これは、申請した商標をすでに使い始めている場合や、使う準備がほぼ整っている場合に、所定の条件を満たすことで、審査期間を劇的に短縮することができる制度です。なんと、適用されれば「約2か月」くらいで、審査結果が出されます

ただし、早期審査制度を利用するには、所定の申請をする必要があります
また、この適用が認められるには条件があり、しかもなかなか細かくて面倒なので、どんなケースでも利用できるというわけではありません。申請をしても、認められないケースはそれなりにあります。

近年は、早期審査制度が認められることを優先したせいで、登録申請の中身がお粗末なものになっているケースをしばしば見かけます。最優先すべきは、適切な商標登録をすることですから、これでは本末転倒です。

なお、やたら早期審査制度の利用を勧めたがる弁理士もいると耳にしていますが、本来的には、本当に早期登録が必要で、その条件を無理なく満たしているケースに限るべきでしょう。弁理士からの提案には、くれぐれも慎重に対応していただきたいところです。

で、もう1つが「ファストトラック審査」の利用です。

これは、申請書(以下、「願書」といいます)に記載した指定商品・指定役務が、所定の条件を満たしている場合に、審査期間を短縮することができる特許庁の運用です。適用されると「約6か月」くらいで、審査結果が出されます

早期審査にくらべると時間がかかりますが、それでも半減できるのは大きいでしょう。

早期審査と違って、適用を受けるための申請は必要ありません願書の内容が条件を満たしていると、自動的に適用となります。なので、手軽で便利に使えるという点でメリットは大きいと言えます。

ただ、早期審査と同様に、ファストトラック審査の適用を受けるために、肝心の登録申請の中身が不十分になっては本末転倒です。この点には、十分に注意が必要です。

早期審査、ファストトラック審査のいずれの利用を考える場合でも、そのメリットとデメリットをしっかりと検討することが大切です。そのような点も含め、審査を早めたい場合は、やはり専門家である弁理士に依頼することが、間違いなくスムーズだと思われます。

4.専門性の高い弁理士への依頼をオススメする理由

特許庁の審査で引っかかった場合には、最終的に商標登録ができたとしても、追加で時間がかかるというのは上述のとおりです。

ということは、なるべく審査に引っかからないように事前に対策を打ち、スムーズにパスできるように備えることで、結果として商標登録の完了までの時間を最小限に留めることにつながると言えます。

具体的には、たとえば、その商標が商標登録できる見込みを事前に高い精度で確認しておく、指定商品・指定役務の表記が適切かをしっかり検討しておく、願書の内容や形式に不備がないかを何度も念入りに見直す、などといったことが挙げられるでしょう。

そういった点も含めますと、やはり専門的な知識やノウハウが必要となりますので、商標登録をご検討の際には、専門家である特許事務所の弁理士に依頼されるのが無難かと思います。弁理士に依頼すれば、上述の早期審査やファストトラック審査などの「審査を早める方法」についても、適切な助言が期待できるでしょう。

ただし、あまりこのようなことは言いたくありませんが、実際には弁理士もいろいろでして、中にはヘタクソな人もいます。勉強不足なのか、経験不足なのか、単に手を抜いているだけなのかはわかりませんが、しょうもないミスで審査に引っかかっているケースもそれなりの数あるのが本当のところだと思います。

当の弁理士本人は、「どうせ最後は商標登録できるのだから、文句はないだろう」という軽い考えなのかもしれません。ですが、その分、登録完了までの時間が余分にかかるわけですから、依頼人の利益を害しているという自覚を強く持つべきだと、私は思います。

人間は完璧ではありませんので、時にはミスをすることもあるでしょう。
ですが、勉強不足とか経験不足というのは、専門性やキャリアである程度はカバーできるはずです。その点ではやはり、商標登録については、同じ弁理士であっても、商標分野についての専門性が高い弁理士に依頼するのが良いのではないかと考えます。ご参考まで。

5.誤解を招く特許事務所の宣伝広告にご注意を!

最後に余談となりますが、インターネット上では、あたかも「商標登録が早くできる」かのように読み取れる、特許事務所の宣伝広告をたまに目にすることがあります。

ですが、すでにお話ししたように、上述の審査を早める方法を利用しない限り、基本的には誰が登録申請しようが、商標登録の完了までには1年ちょっとの時間がかかります。自分で申請しようが、弁理士に依頼しようが、どのような特許事務所に依頼しようが、これはかわりません

ですから、「うちに依頼すれば、すぐに登録できますよ」のように読み取れる宣伝広告は、誤解を生じるおそれがあると言わざるを得ません。さすがに、ストレートにこのように書いてあるものは見たことはありませんが、それでも依頼人を欺くことにつながる可能性を考えると、誤解を生じかねない表現を含む宣言広告というものは倫理的にどうかと思います。私は同業者として、これはプロ意識に欠けていると思いますし、怒りすら覚えますね。

近年、インターネット上には、他にも「格安」、「返金保証」、「ネットで完結」などの耳触りの良い特許事務所の宣伝広告があふれています。

依頼先を選ぶ際に重視すべきは、そういった点ではないと私は思います。余計なお世話かもしれませんが、耳触りの良い宣伝広告には安易に飛びつかず、ぜひしっかりと目的の本質をご自分の頭で考えてほしいと思います。

以上、今回は「商標登録にかかる時間はどれくらいなのか?」をお話ししました。

商標登録はドメイン登録のようにすぐにできるわけではなく、かなりの時間がかかる点、忘れないようにしてください。商標登録は、早め早めの行動が大切となります!

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