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飛び込み営業の数だけドラマがある~●●●が全力で追いかけてきた~

私は営業職として会社員人生をスタート。

そして世の多くの営業職が経験しているで
あろう飛び込み営業を私も経験してきた。

「何しに来たんだ、帰れ」
と冷たい目であしらわれる日もあれば

「いやぁ、暑いのに大変ね。
 お茶でも飲んでいく?」
と人間の優しさの一部に触れることも。

飛び込みの数だけドラマがある。

私は嫌いじゃなかった。

そんな数多くの飛び込み営業の中で、
忘れられない思い出がある。



その日は丸1日、ある地域で集中的に飛び込み営業を行う、いわゆる「全集中の日」だった。

私と相方は8時半にファミリーマートに集合。

こういう日には必ず、相方はリポビタンDを買って渡してくれる。

「本日の成果は0でした」
帰社後に、そんな事を言おうものなら・・








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営業職たるもの、手ぶらで社内に戻るわけには行かないのだ。


ロンドン五輪、水泳松田選手の名セリフ
「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」


相方もそれに近しい思いをもっているのだろう。


そうともなれば「ファイトー、一発。いや何発でも」と気合を入れ、結束力を高めるほかない。


互いに本日の成功を祈願し、いざ車に乗り込み出発。


事前に目標として決めていた場所に向けて
相方が運転中の間、私は助手席でひたすら
TELアポを行う。

万が一、飛び込みだけで成果がなかった場合の保険だ。


「車内が社内みたいですね」

私の渾身のシャレも相方には響かない。
しゃーない。

スベりなれている私は、助手席でひたすら電話を続ける。

「丁度近くに来ていて、
 資料だけでもお渡し出来ればと・・・」

こんな感じのトークを、何百回と繰り返す。

そうしていると1件くらいは「少しだけなら」と、全然ノリ気でないのが電話口から伝わってくるが、話を聞いてやっても良いという担当者が現れる。

カーナビに住所入力し、いざ出発。

「目的地到着まで40分です」というナビのアナウンス。

丁度近くに来ていて・・・という話はどこ行った。

そんなこんなで「丁度近くに」作戦で運よく
興味をもってくれた企業が近づいてきた。立派な守衛所が見える、いわゆる大手企業だ。


「本日はまだ成果0。。何としてもここは!」

という思いで運転席の相方はいっぱいだったのだろうか。

相方は車のスピードを落とすことなく、守衛所の先に見える駐車場を目指して進む。


「守衛所付近では原則、減速だ」

素敵なシャレも相方の耳には入っていない。


そして警備員がチラつく守衛所を思いっきり通過した。

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「あれっ、俺たち顔パスなの?」
「守衛場で一言かけるんじゃないの?」

と思って相方の顔を見たときには通過していた。


強 行 突 破


この4文字が相応しいと思った。

まぁ、通過したのなら仕方ない。
これが俺たちのやり方か。うん、大丈夫だ。

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「ちょっとぉぉぉぉぉ、君たぁちぃぃぃぃぃ!!」



という声が車内に居てもハッキリ聞こえた。
強行突破、いや、これは不法侵入ですわ。

数多くの飛び込み営業を経験してきたが、警備員に全力で追いかけられたのは後にも先にもこの時だけだ。


慌てる警備員に対して
「我々は不審者ではない!」
「手ぶらで帰るわけにはいかない!」
「我々には結果が必要なんだ!」


とこちらの事情も踏まえて説得し、
何とか入場許可を得た。


結局、「急遽会議が入った」という事で担当者には少しどころか全く会う事が出来なかった。


私と相方に残ったのは最高のネタだけだった。


「さすがにワイルドすぎる、スギちゃんかよ!」

と相方に注意したら、

「守衛所に気がつかなかった」と。




いや、絶対ウソだ。
助手席の俺は冷や汗だったよ。

でもあんたが最高の相方だって事も
一緒に伝えておくよ。

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