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給与から引かれているものの謎①

「他の人たちより給料から引かれているものが高い。どうして?」

かつての勤務先では、外国人従業員の方から通訳を介して、このような問い合わせを受けることが何度かありました。
外国人の方にとって、お互いに給与明細を見せ合うことは当たり前……ということがあるようです。 

毎月、受け取っている給与明細。自分の分を見ているだけでは気づかないことでも、他人のものと比べることで「なぜ?」と生じる疑問があるかもしれません。

たとえぱ、
「○○さんと今月、同じ給料なのに、自分の分は、社会保険料が高く引かれている」
「自分より残業した○○さんのほうが給料高いのに、引かれている社会保険の金額が同じ」

給与明細を見せ合ったほうが良い、などと言うわけではありません。
ただ、もしかしたら、自分の給与から控除されているものについて、知らない世界があるのかもしれない……。それが、どのような仕組みなのか、知っていて損はありません。


給与から控除されているもの


主なものは、次のとおりです。

所得税
住民税
雇用保険料
社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険)

その他、会社の定めで控除されているものもあるでしょう。
上に記したものは、法律で控除が決められているものです。同じようなイメージですが、似て非なるもの。
内容はさておき、金額の算出のされ方は違います。

一番シンプルなのは、所得税雇用保険料
その月の給与額に応じてかかってきます。残業等で給与額が多ければ、引かれる額も増えます。分かりやすいです(所得税では、扶養人数等も関わってきますが)。

次に、住民税です。
所得税や雇用保険料が変動費であるとすれば、住民税は準固定費のようなもの。さらに、前者がリアルタイムで引かれるのに対し、住民税は後払い。

イメージは次のとおりです。

ある年の所得に対する住民税は、翌年の6月から翌々年の5月までの間に納めることになります。
月割です。半端な額は6月に上乗せされます。6月だけが少し高くて、7月から翌年5月までは同額となるケースがほとんどです。

後払いなので、退職された場合は要注意です。無職になってからも、容赦なく、後から納付書が送られてきます。「給料は1円もないのに……」なんて泣いてしまいます。


真打ち・社会保険料


一番ややこしそうなのが、社会保険料
給与明細上は、
・健康保険
・介護保険(40歳~64歳のみ控除対象)
・厚生年金保険(「厚生年金」)
これらに分かれています。

平均的な給与額を元に、段階的に「標準報酬月額」というものが決められます。その標準報酬月額に、保険料率が掛けられて、保険料が算出されます。

標準報酬月額のイメージは、このような感じです。


「段階的に」と書きましたが、その差はどれほどなのか? 額によりますが、平均給与額が20万円台から30万円台では、2万円ごとになっています。

この標準報酬月額は、毎月変わるわけではありません。なので、社会保険料が毎月変わるということもありません(変わるタイミングについては、回を改めて述べます)。

ちなみに、社会保険のうち、厚生年金の保険料率は、現在のところ、18.3%で固定されています。そのうち半分の9.15%が給与から引かれる分です(もう半分は会社負担)。

◆厚生年金の保険料はいくらぐらいか? 具体例◆

①給与の平均額=195,000円~209,999円
⇒標準報酬月額=200,000円
→200,000円×9.15%=18,300円

②給与の平均額=290,000円~309,999円
⇒標準報酬月額=300,000円
→300,000円×9.15%=27,450円

※厚生年金の保険料だけです。健康保険や介護保険が別に控除されます。

自分の標準報酬月額は?◆
前回、「ねんきん定期便」について書きました。
そこでも実はチラリと出てきています。

標準報酬月額については、次回、少し掘り下げてみてみます。

前回の「ねんきん定期便」の内容については、こちらをご覧ください。

【参考】
厚生年金の料額表が日本年金機構のホームページに掲載されています。以下のとおりです。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.files/01.pdf

また、健康保険料も合わせた料額表(令和4年度)は、全国健康保険協会のホームページに掲載されています。以下のとおりです。


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