行き先を決めない高速バスの旅
稲刈りのシーズンだ。黄金に輝く稲と もう枯れてしまい「赤色」とはいえない彼岸花の上をたくさんのトンボがホバリングしている。
そんな風景の奥には山、草むらや民家の合間に時々キラキラする川が見える。
どうやら私は 山と川が見られたら満足するようだ。
吾妻線、最高だな!!
ある月曜の朝「今週はどんな予定?」と小6息子に聞く。任せてはいるが、決まっている登下校時間とズレる場合は付き添いが必要だから確認はする。
今のわが家には「遅刻」「早退」という概念はない。行きたい 行けそう な授業時間だけ行けたら行く、だ。
息子、担任の先生、そして私、それぞれがムリのない範囲でボチボチやっている。
前週に 約1年半ぶりに丸一日教室で過ごしたためか、土日にしっかり休んでも疲れがとれていない感じが伝わってきた。
しばらく学校は無理だろう。
「高速バスに乗りたい!!」と息子が言った。やはり今週は登校しないつもりだ。
急ではあったが、私も特に予定がなかったしバス旅に付き合うことにした。
高速バスに乗るのは3度目だろうか。
鉄道に飽きた息子は最近高速バスにハマっている。
乗ることが目的のため、行き先はどこでもいい息子。旅の付き添いをかさねるうちに「車窓を眺める」「行ったことのない場所へ行く」だけで楽しいことに気がついた私。
とりあえず「新宿バスタ」へ行ってから行き先を決めることになった。
やはり何度行ってもワクワクする「新宿バスタ」。
あの 大きな大きな案内板を見る。日帰りできそうな場所で すぐに出発時間が近くて 空席を示す○が表示されたものを探す。2人であーだこーだ言いながら吟味する。
家の中で小さいスマホを覗きながらあーだこーだ言うよりも100倍ワクワクする。
夫が決めたちょっといい旅行計画をスマホで見るよりも200倍ワクワクする。
若者や外国人観光客にまぎれて券売機に並んだ。
行き先は「伊勢崎方面」に決まった。
バスの中で それぞれが買ったものを食べた。遅めの朝ごはん。私はかなり空腹だったので、座ってすぐ おにぎりにかぶりつく。
隣で息子が 謎のおまんじゅうの外袋をあけながら「これ、美味しいんだよねー!!」と言った。
どうやら、以前長野へ行ったときに買って食べていたらしい。言われてみればそんな気がする。
バスタに着く前から しつこく「着いたら切符買う前にまずはデイリーに寄るからね!」と言っていたのは このためかと合点がいった。かわいやつめ。
ほんのり昭和の匂いがするバスにゆられながら群馬県へ向かう。
○○インターから高速乗るんだね、○○川だからこれが県境かな?と地理に詳しい息子。
雑談をしながら、あっという間に伊勢崎駅へ到着した。
さて、ここからどうするか。
頭に入っている路線図と スマホの乗り換えアプリを駆使して、息子が色々と提案してきた。夫の遺伝か、仕事が早い。
たくさんの案の中から、伊勢崎駅から電車を乗り継いで長野原草津口駅へ行き、そこから出る高速バスで新宿に帰ってくるというルートに決まった。
平日だからだろうか、JR両毛線も吾妻線も人が少なかった。草津に近づくにつれ 更に人が減り、私好みの景色が広がっていく。
曇っていた空からときおり眩しい日が射し込む。トンネルをいくつくぐっただろうか。現代は 登らなくても山を越えられるんだ。
随分と遠くまできたな。
長野原草津口駅に到着した。ここからがまた色々あった。旅にトラブルはつきものだ。だから旅は面白い。
続きは気が向いたらまた書こうと思う。