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10月に短歌、俳句、詩を思考した記録。

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■短歌

1.
未明の薄靄の中を駆け抜けるあの馬の名前、知りませんか?

2.
誰もかも僕と通じないこの街の 真ん中で呟く「フルーツバスケット。」

3.
ツイッターに溢れ出るギャグとウンチクに
けたけた笑う 心はからっぽ。

4.
空腹の向こう側に見えるのは 皿の上で踊るミノタウルス

 5.
着信が響く夜半のワンルーム どうしてこんなわたしがいいの

 6.
「僕らしく生きていくこと」と書かれた標識に従う若者の群れ

 7.
15時のベッドはかすかに臭います ツイートしたら負け犬な気がして

8.
背中の真ん中にできた活火山 掻けば掻くほど命は流れて

9.
真緑のリキッドに浮かぶ朱いチェリー 私あの子を好きになれるかしら

10.
まよなかのきみのおうちでかくれんぼ だいじょうぶ、もうあしはなさないから

 11.
深緑の閃きを映すカーブミラー 蝉しぐれのなか佇む私。

12.
真夜中をひた走るバスできく演歌「ごめん、じいちゃん。まにあわなくて」

13.
ポケットを叩けば出てくる姉の骨父の骨母の骨私の

14.
まよなかのむこうがわをとぶひこうきは火星から見れば一つの流星

 15.
スマホ片手に寝転んで呟きます やりますなんでもぼくつよいので

16.
ストラテラてらてらキラキラ流れ星 どこで死んだか身に行こうよ

17.
きょうとあしたのさかいめをぬってます みんなのしあわせな未来を想って

18.
若者の夢と希望をつぶすことで月50万貰えるお仕事

19.
とてもふあんしんぱいこわくてたえられない だからきいちゃう「わたしきれい?」

20.
終電は疲弊しきったシンデレラで満員です 皆裸足です

21.
ゴマ油の瓶の底に沈むのは蜂の死体とあの子のナマヅメ。

22.
オレンジとバナナと心臓あとブドウ、ミキサーに入れてジュース、つくったの。

23.
床に転がっている髪の毛一本つまむ 無味乾燥なわたしのぬけがら

***

■俳句

1.
片っぽの靴を蹴飛ばすコスモス畑

2.
曾祖父の訃報を耳にする秋の空

***

 ■詩

1.
「欠番」

 黄金色の液体が満ちた香水の中で、

コウロギが眠っているよ。

どんな夢を見ているのだろう?

おや?ラベルに何か書かれているよ。

「現実」


2.
「トマトへ捧げる別れの唄」

 とある男が本屋の本に檸檬を置いたのならば、
私は教室の机にトマトを置こう

それは、結局言えなかった堀川君に対する初恋
それは、絶好した日のゆりちゃんに対する苛立ち
それは、すらりと背が高い静香先輩に対する憧れ
それは、両親や教師等周囲の大人に対する反発
それは、将来の私に対するあまりにも楽観的観測

膨張する膨張するトマトは膨張する
膨張する膨張するトマトは膨張する
膨張する膨張するトマトは膨張する

 しかしある日から、トマトは膨張を止めた
そして、静かにしぼみ始める

 ただひたすらに、静かに、静かに
しなびてしなびてしなびてしなびていく
そしてその残骸を心の片隅に置いたまま
私は毎日をやりすごすのだ

 時々それを口に含むけれど、味はしなかった
苦くも甘くもありません
ただそこにあるだけです

 檸檬は爆発したがトマトは爆発しない

白黒の教室。
17歳の私の席の机の上で27歳の私は立ってる
何も持たずに何も見ずに何も聞こえずにただ、そこに、立ってる
待ってる

剥離する剥離するトマトは剥離する
剥離する剥離するトマトは剥離する
剥離する剥離するトマトは剥離する

***

 ■散文

 1.
撃たれたのは、誰だ。

 銃声で目を醒ますと、くまの「くーちゃん」がそっと私の耳元で囁く。
「怖くないよ。怖くない。君は今日も、「今日という現実」を克服するだけなんだ。怖くないよ」
カーテンの隙間から差し込む光を見て、
先程の音は太陽が空にぶち上がった時のものだと知る。
残虐だ。

いつだって朝は、残酷で薄情で残虐なんだ。

 

撃たれたのは、僕だ。


2.

夜明けの針葉樹の森の中、女の子は一人赤いケープを被って、木の上方をじっと眺めています。昇ってきた朝日に照らされて彼女の顔は薄白く染まっています。
女の子は樹のうろに、話し相手を見つけたのか、突然叫びました。
「ふくろうのおじいさん!おきて!!おきて!!朝よ!!」
「・・・・ふわぁぁぁああ。おっと、これはお客さん・・・」
うろからでてきたのは、ふくろうのおじいさんでした。むっくりと起き上がったおじいさんは辺りをきょろきょろ見渡すと、言いました。
 「おや・・・・朝じゃないか。わしは寝ることにするよ」
「まってよ!!おじいさん!!」
「ふわぁぁぁあああ、どうしたんだね?小さい小さいお客さん」
「どうしておじいさんは朝になると眠るの!?」
「それはね、朝になると嫌なことばかりが始まるからだよ。」
「いやなこと??」
「現実という悪夢から逃れるために眠ってわしは良い夢を見るんじゃ・・・それじゃあおやすみなさい・・・」
その後どんなに呼びかけても、ふくろうのおじいさんが起きることはありませんでした。
そしてよくよくよく目を凝らしてみると、そのおじいさんはふくろうのおじいさんではなく、雑巾のような古びた布を身にまとった長く伸びた髪からはフケが溢れ出ているにんげんのくずのおじいさんでした。
 

3.
ミネラルウォーターの冷たさだけがベッドのなかでは真実。

4.
エゴンシーレの肖像画かと思ったら鏡に映った自分でした。

***
■評
「いやぁ~この子は10月はこれ程の短歌や詩を書いたそうだよ」
「なるほどねぇ」
「特に、9月と比較して量を増やそうと断続的に続けることを意識したみたいだね」
「なるほどねぇ。だから9月の短歌が12に対して、こちらは23と多めなんだね」
「そうだね」
「でも、それにしては詩と俳句は短いようだけど」
「そこつっこまれちゃあ、おしめぇだ」
「江戸っ子」
「江戸っ子」
「で、なんだい?一つ短歌で太字があるけれど」
「ああ、これは案の定のあれだね。気に入っている短歌だそうだ。でも、今月のもので彼女は23の短歌よりも2の詩の方を機にっているそうだよ」
「ほぉん」
「香水、トマトという珍しい題材から歌ったことを気に入ってるみたい」
「ドルチェ&ガッバーナの歌流行ったじゃん。別に香水は新しくも何でもないと思うけどねぇ」
「まぁ、でも彼女の人生において香水ってほら、存在感薄いものだったからさ、甘く見てあげてもいいんじゃないの」
「そうかなぁ」
「てかそもそもドルチェアンドユッキーナのせいでしょ」
「そうかなぁ」
「そういや最近静岡でも、潰れ始めてるね。タピオカ屋」
「それはそうだね」

終わり

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