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ドイツのデザイナーが日本のチームと働いて気づいたこと、学んだこと

本記事はGoodpatch Design Advent Calendar 2022 4日目の記事です。

Goodpatchのドイツ拠点では日本のチームと共同で進めるようなプロジェクトをいくつも行って来ました。今回はドイツ拠点で働いていたデザイナー2名にインタビューを行い、日本のチームと働く中で気づいたこと、学んだことなどをシェアしてもらいました。
残念ながらGoodpatchのドイツオフィスは営業を停止することが決まっています。ベルリンのオフィスで働いていた彼ら彼女らの経験や学びをGoodpatchを去る前に残したいと思い執筆しています。

主なトピックはグローバルなチームでのコラボレーションに関するものになりますが、グローバルなプロジェクトにかかわっていない方々にもぜひ読んでいただきたいです。日本独自のやり方が海外からみてどのように見えるのかを考えることで改めて自分の属している文化を客観視することにつながり、改善のヒントになるかもしれません。

本記事の内容はあくまで経験に基づく個人の意見です。団体や組織の見解を示すものではありません。
本記事では各文化圏においてどのような傾向があるかを論じる内容が含まれていますが、特定の文化圏を過度に一般化する意図はありません。また内容があらゆるのケースに当てはまることではありません。



ドイツのデザイナーが感じた日本のチームの特徴

みんなで決めることを重視

日本はみんなで一緒に決めることを重視すると感じたそうです。

日本では会議に出ること自体が一定コミットを示すことになりうる一方、ドイツでは会議の中で何をしたかが重視される傾向があるそうです。ドイツでは会議の場以外でなるべく多くのことを準備した上で、会議の時間は最小限にすることが好まれる傾向があるそうです。

個人主義的な欧米の文化と集団主義的な日本の文化の違いが現れているのではないでしょうか?

アジェンダの厳密さ

ドイツのメンバーは日本チームの会議に参加した際に厳密にアジェンダが決められ、分刻みで話し合いが行われていたことに驚いたとのこと。

多くのことを会議の場で決定しなければならない日本だからこそ、会議内でのタイムマネジメントが重視されているのかもしれません。

全て説明した上で結論に至る

次に論法について、日本では最初にさまざまな情報が説明された上で最後に結論が述べられることが多いと感じたそうです。ドイツだと最初に結論を述べてからその理由を述べるより簡潔なコミュニケーションがより好まれます。

また、日本人は何かを説得する時にストーリーをよく使うと感じたそうです。特に会社のリーダーなどがストーリーテリングを用いてリーダーシップをとっている様子が印象的に映ったそうです。


プロセスについて

日本では一度決めたやり方で最後までやることが特に重視されていると感じたそうです。

プロジェクトの進行の中で優先度が下がったタスクについても、一度約束したものは変わらずに行われるものと思われていたことがあり、認識の食い違いが起きたこともあるそうです。

ドイツではプロセスの中で優先度が低くなった工程はすぐにストップするなど、やり方に変更を入れることにはより柔軟な傾向があります。

だからこそ、日本のクライアントと働く時は何をやるのかやらないのかをしっかりと認識を作り、アップデートしていくことが非常に重要だと感じたといいます。

信頼の築き方

日本では約束したことをやって初めて信頼につながります。一方、ドイツでは契約した時点である程度相互に信頼を持って進めることができるので、約束されたアウトプットが途中で変わるようなことが受け入れられやすい傾向があるそうです。

日本チームと働く際には何を約束し、どのような成果を出したのかをしっかり明確にすることを意識する必要性を感じたといいます。

役割分担と責任

日本では役割分担がはっきりしていないと感じたこともあるそうです。
役割をアサインされていても、最終的な意思決定権はアサインされた本人ではなく他の人が持っているというケースがあります。またプロジェクトの中の特定の人物が全ての意思決定に参加するような進め方も特徴的だと感じたそうです。

ヨーロッパでは役割分担と責任がセットで考えられています。任せられた範囲内のことについては、なんでも決められるし、決めることを期待されます。インターンの人でもインターンのタスクに関しては決定権を持っています。リーダーシップとは自分の担当する領域を理解して、何を決められて何を決められないかを理解していることだと考えられています。

構造の中の暗黙の了解

ドイツのメンバーが日本のチームと働く時に特に難しかったのが、組織構造の中での様々な暗黙の了解を理解することだったと語っていました。

役職やチームの中のポジションによって、どこまでの発言をするのが適切なのかを空気を読むことが求められることがあると感じたといいます。またある事柄を担当している人とは別に決定の承認を取る必要があるステークホルダーが現れたりすることも戸惑ったそうです。

文化的仲介者の重要性


そんな中で、チーム内で日本側のメンバーとドイツ側のメンバーの間の理解を取り持つ「文化的な通訳」ができるメンバーの存在が非常に重要だったといいます。言語の通訳ももちろんですが、各サイドからの発言を文化的コンテクストを踏まえて翻訳しチームに伝えられなければいけません。

グローバルなプロジェクトを行う際には言語だけではなく文化的な仲介が可能なメンバーがいるかを念頭にチーム編成を考えることが重要です。

ローカライゼーションについて

翻訳の難しさ

プロダクトをローカライズするためには言語を直訳するだけでは全く不十分です。

文化的にどのくらい丁寧な言葉を使うことが適切なのか、言葉にどのようなニュアンスが含まれているのか理解した上で言葉を選ぶ必要があるのでネイティブによる翻訳は必須です。

また、ブランドイメージとあうトーンオブボイスに調整したり、プロダクトの仕様などテクニカルな面を説明する場合など、翻訳には深いサービス理解が必要になります。

正しいデザインの違い

日本と欧米では正しいデザインは全く異なります

例えば日本のLPなどはユーザーに多くの情報を与えることで、ユーザーからの信頼を担保することが多くあります。しかし、欧米では情報量を絞ってシンプルに伝えることが好まれがちです。情報量の多いサイトは情報で圧倒して何かを隠そうとしているのではないかという不信感すら生まれる可能性もあります。

対象とするマーケットにフィットするデザインが何かを判断するためにはしっかりとマーケットの感覚を理解することが必要です。

相互理解のために必要なこと

ここまでドイツのメンバーが日本側とのコラボレーションの中でどのような違いを感じたのか記しました。
これらの違いを乗り越えより良い共創をするためにはどうすればいいのでしょうか?

まず相手側への理解を示す

プロジェクトの体制やプロセスなどを設計して共有する際に、自分たちサイドのやり方を示すだけではなく相手サイドのやり方に理解を示すことが非常に重要だと感じたそうです。
まず理解を示すことで相手サイドもこちらへの歩み寄りやすくなり、より良い落とし所を議論することができるようになります。


対面でコミュニケーションを取る

グローバルでリモートのプロジェクトでは特に対面でのコミュニケーションの機会を作ることが重要だといいます。

実際に日本チームとドイツチーム間でコミュニケーションがうまくいっていなかった際に対面のミーティングを行ったところ、相互理解が一気に進んだ経験があるそうです。

プロジェクト開始時から信頼を作るために最初に対面のキックオフをするのが最も良いかもしれません。

衝突を厭わない

あるメンバーは、「意見が対立している人たちがいる時に衝突をなるべく避けながら同じ方向を向けるように心がけてやってきたが、いまは衝突をソフトにするように心がけた方がいいと感じている」と語っていました。
チームを強くするためには、早い段階で率直な意見を共有し、そして
そこからどう改善するか議論をすることが重要です。ある程度衝突することは必要であり、それをいかに建設的な機会にするかを考えるべきです。
ガードを取り払い、率直な考えを話せる状態を築けるとチームはよりクリエイティブな挑戦ができるようになります。




以上、Goodpatchで働いていたドイツのメンバーがグローバルなプロジェクトで学んだことを共有しました。グローバルなプロジェクトに関わる方にもそうでない方にも、改めて自分たちの働き方の中での常識について考える機会にしていただけたら幸いです。


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