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【roots】少年期 《序章》廊下1


重厚な茶色の大きなドアを細い小さな体を使ってなんとか押し開け部屋を出た。
目の前は真っ暗。
少し目が慣れてぼんやりは視界がもどるが奥が見えない。
長い長い窓の無い廊下。
湿った壁紙の匂いが充満している。
少し体を動かすだけで床板がギィと音を立てた。
瞬間。気配を感じた!
体の真横に黄金のライオンがいて立髪が手に触れた。
「ココを通るつもりか?」と聞かれた。
僕はびっくりして。返事もせずに。
壁にへばりついてゆっくり体を左にずらした。
「俺を怖がるようじゃ、この廊下は渡りきれない」とライオンに笑われて小走りに奥へと進んだ。

勇気など一切関係なく進むしか無い。
ライオンのいる所へは戻れないそう思った。
自分が外に出たいのか、
何故この長い長い廊下を渡っているのかさえ気に留める事も忘れて奥へと進んだ。
一度振り返ると廊下に座るライオンが小さく見えた。
行くしかない。選択の余地がない。

前に向き戻ると目の前がピンクに染まった。
見たこともない大きなくちばしを震わせたペリカンがすぐ横にいて驚いて跳ね避けた。なんだ?なんなんだ?
「座って行きなよ。沢山歩いてきたんだろ?」
と小さな背もたれの椅子を勧められた。
座ってしまったら2度と立ち上がれない気がして首を振り、再び壁にへばりつきながら左へゆっくり移動した。
その姿を見てペリカンはカカカとくちばしを鳴らした。
「そんな疑い深い顔ばかりしていても良い事ないぜ」と言われたが、良い事なんてどうでも良くて。
自分が丸ごと飲み込まれてしまわなければそれで良いと走り出した。

やっと「何故この廊下にいるのか」
その事に気がついた。よく考えてみたら、全く見た事もない、知らない廊下だった。
急に背筋が震えた。
どこでも良い部屋に入ろう。
一旦入って考えよう。
すぐそばにあるドアをとにかく開けて部屋に入った。

to be continue…

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