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【roots】青年期 《19章》出会う全ての人

11時頃オーウェンとカフェに行った。
ルビーがお店の人に僕の話をしていたみたいで皆にキャアキャア言われた。
少し恥ずかしいけどルビーは嬉しそうだ。
ま、いっか。僕も嬉しくなった。
「いつ見てもライオンさんね」ルビーの声にオーウェンが立ち上がってハグをした。
「ルビー!あぁ、ルビーだ!ルビーだ!」オーウェンも嬉しそうだ。僕は2人を見て心から幸せだなと噛み締めた。
「まだ仕事があるのよ。お迎えに来ちゃったの?」とルビーに言われて「違うよ!オーウェンにルビーを早く合わせたくてさ」と焦って答えた。
「あーこの感じ。相変わらずだ」とオーウェンがニヤニヤと笑った。僕は「相変わらず」がわからないけど…恥ずかしくて小さくなると、ルビーが僕の隣の席に座って「オーウェン手を出して」と言った。
急に場の雰囲気が変わってオーウェンも真剣に両手をルビーに差し出した。
手を握るとここまでの旅がルビーの脳内に全て映し出されてルビーは口をキュッと閉じてうなづいた。「ありがとうオーウェン。私もいるからもう1人で頑張らないでね」と言って僕の背中をポンと叩くとヒラヒラとポニーテールを揺らして店の中に入って行った。
「ルビーだな。本物は貫禄がある」オーウェンが大真面目に言って僕は心底ホッとした。

このカフェは人気店で、ひっきりなしにテイクアウトの列が出来ていて。イートインもすぐにいっぱいになってしまう。僕たちはコーヒー一杯をすぐに飲んで部屋に戻る事にした。
「デイブ!」帰ろうとドアを開けた僕にルビーが後ろから勢いよく抱きついてパッと離れた。
「オーウェンもまだ帰らないでね!」と元気よく一言言って店に戻って行った。
僕とオーウェンは顔を見合わせて、一瞬の嵐に驚いて、すぐさま大声で笑った。
「ルビーは元気いっぱいだな」オーウェンとアパートの階段を上り始めると下から
「デイビッド?」と名前を呼ばれた。
若い男がコーヒーを持って立っていた。僕は急いで階段を降り「はい、デイビッドです」と答えた。
「また会えると思ってなかったよ!ティムだよ!判る?」と嬉しさの溢れる声で言った。
「キツネの末っ子か⁈」「そうだよ!」久しぶり!元気か?と盛り上がった。
「兄さんたちにすぐ言うよ!」
「近くに住んでるの?」
「僕はそこの教会に。牧師なんだ。タイラーは大工でトレバーは学者だよ」
「みんな変わらないんだな。良かった」と僕が言うと「名前通りに暮らしていたら、いつかきっと。また会えるって思ってさ。僕らに優しくしてくれた事ずっと忘れずにいたんだ。いつか必ず頼りにしてね」と言ってくれた。
「ありがとうティム。またゆっくり会おう」
笑顔で別れてオーウェンの待つエレベーターの踊り場に出た。
「なるほど、キツネが会っていたルビーは本物の方だったのね」と様子を聞いていたオーウェンが嬉しそうに言った。
僕は現実世界がだんだんとリアルに感じられるようになってきた。こうしていつの間にか全てが「リアル」だけになって行くのかもしれない。
初めてそう感じた。
オーウェンにも彼女が出来たそうだ。
いつも同じ女性を探して告白しているんだって。
オーウェンも自分の旅を充実したものにしていて皆んなにゆっくりとした幸せが訪れてゆくと信じられた。

3人で夕ご飯を食べて沢山笑って、沢山泣いた。
話が尽きず盛り上がった。
キツネの話をしたけれどルビーは知らないみたいだ。キツネたちはこっそりとルビーに憧れていただけだった。そうやって自然と繋がっていたことが僕は嬉しかった。
筆も進んで、本の出版準備も整ってきた。
滝の後、色々な事が起きてしまったけれど。
少年期はそのままを書くことにした。
もしもこの本が沢山の人に読まれたら、続きを書くことになるだろう。
それは、その時。
ここまでの真実を書いた
*****
ルビーと結婚写真を撮りに行った。
ルビーは白いドレスを持っていた。よく見たら写真と同じ、いつものドレスを着ている。
今日のルビーは一際美しかった。
長い髪を美しく結い、華やかな雰囲気に目を奪われた。
オーウェンの彼女は美容師さんで、彼女に結ってもらったのだ。名前はリリー。
凛としてしっかり者と言った雰囲気。自由なオーウェンにはこう言う人がぴったりだと思った。
ブーケを持つルビーはまるで花の妖精のようだった。あの花園の主の風格を感じた。
写真を撮り終えると。
オーウェンがペリカンの店でパーティーを開いてくれた。
オーウェン、リリー、キツネ三兄弟、カフェの人たち、出版社の人たち、ペリカンの2人。
沢山の人が僕らの周りにいてくれて結婚を喜んでくれている。
人生とは沢山の人と作ってゆくものなのだ。
喜びを共有し、幸せを分かち合う。
この上ない幸せに包まれて胸が熱くなった。
ここにいる皆んなを大切にしたい。
僕に出来る全てで全員の幸せを守りたい。
はしゃぐルビーを笑顔で眺めながら心に強く誓った。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀


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