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#19 我が家の妖怪

ひとは死んだらどうなるのだろう。

たぶんそこにあるのは単なる「無」だ。
死後の世界はきっとあるわけではなくて、怨念が深くて霊となってこの世をさまよう…なんてこともないのだろう。

だが一方で、こんな話も聞いたことがある。

「人が死ぬと、数グラムだけ、体重が軽くなる」。

つまりその軽くなった部分が、「魂の重さ」というわけだ。

なるほど、そういう意味では、人間の心というか、物質ではなく精神的な何かが、確かにこの体には宿っているのかもしれない。

死とともに解放されて、それがどこに行くのかは想像もできないが。

月猫は「死んだら終わり」の思想を持ってはいるが、一方で、実はお化けとか霊とかを少しだけ信じていたりする。

いやはや、我ながら矛盾の塊ですな。笑

そうというのも、月猫は中学~大学頃まで、いわゆる「霊感」的なものが少しあったがためだ。

霊感。
この世にあらざる者の存在を視たり感じたりする、そういった種類の第六感のこと。

月猫はどちらかというと見えるとうよりは「感じる」及び「呼び寄せ」体質だった。

年末年始のお参りに行けば、必ずと言ってもいいほど初詣に並ぶ人々の渦巻く「欲望」に群がる「ナニカ」を連れて帰る…といったような状態。

そして連れて帰ったあとは、必ず身の回りで色々な不思議な現象が起きる。

例えば、自分が乗っている電車の車両の、自分の頭上の電気だけチカチカと点滅を始めたり。

趣味でギターを弾いていたら、突如左手が血まみれになり、慌てて血を洗い流して止血しようとしたら、どこにも怪我ひとつしていなかったり。

よくある金縛りにあっては、耳元でずっと複数人が言い争っている声が聞こえたり。

まあ、枚挙にいとまがないほど、それはもう色々な経験をさせられた。

また他にも、わたしが撮影した写真には、よく「オーブ」といわれるものがうつりこむことがある。

「オーブ」自体はみなさんご存じだろうか。
シャボン玉みたいな、光る球体のこと。

奈良の山奥で撮影したときは画面全体にオーブがたくさん映り込んでいて、拡大するとそのひとつひとつに侍のような顔が出てきて、友人に即削除を命じられたものだ。

だが不思議なことに、この能力というか体質は、結婚して名字が変わった途端、まったく機能しなくなった。

ひとの名前には力があるということだろうか。

しかしそれから約20年、今になってわたしの前に、ある妖怪がみえるようになった。

その妖怪が初めて現れたのは、昨年の12月。

一目見たその日から、何かおかしいなとは思っていた。

だが、愛くるしい見た目に騙されて、わたしはその妖怪と一緒に暮らすことを選んだ。

名前は「きなこ」。

そう、一見すると、ただの茶トラの猫様だ。

きなこさんの実体

しかしこの子は多分、猫の毛皮をかぶったもののけだ。

何が変かって、そう、まとめるならこんな感じだ。

・ツンデレならぬデレデレ。飯よりも触られたい。
・人前で眠らない。寝るよりもモフられたい。
・常に鳴く。撫でられてゴロゴロ喉を鳴らしていてもうるさいくらい鳴く。
・嗅覚人間以下。目の前にエサがあっても気づかない。
・毛づくろいをしない。顔も洗ってあげないと目やにだらけ。
・トイレの砂が嫌い。トイレトレーニングに半年かかる。

そして。
極めつけは、これだ。

これはここ数日見られるようになった奇行なのだが。
トイレでしたうんちを、なんと毎晩隠すようになった。

いや、縄張り意識が強くて、痕跡を消すために砂で隠すというのは一般的によく聞くけれど。

このきなこさん、なんとトイレからうんちをくわえて外に持ち出し、あろうことか色々な隙間に収納してくれるのだ。

トイレ掃除の際のわたしの反応。

1日目。
「あれ?便秘かな?」

2日目。
「え、今日も?病院つれていかなきゃいけない?」

3日目。
「いやいくら何でもおかしいでしょ」

そしてトイレトレーの下やゲージの下、壁の隙間など、探したところ出てくる出てくる。

いやー、まじで「なんじゃこりゃ!」でした。

うんちを隠す猫なんて聞いたこともない。
まじなにこの習性。
ネットで調べても、そういった事案が見当たらず、現状打開策なし。。

月猫の朝は、かくされたうんちの秘宝探しからスタートしますw

きなこがあまりにも猫らしくないもんだから。
パートナーはよくこうつぶやきます。

「猫飼いたいなあ」。

わたしはすかさず、「いや、飼っとるやん!」とツッコむのですが。

いやでもたしかに、あいつは猫というよりは猫の形をした妖怪な気がする…。

霊感をなくしてもなお、変な妖怪に付きまとわれている月猫でした。

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