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#19 我が家の妖怪
ひとは死んだらどうなるのだろう。
たぶんそこにあるのは単なる「無」だ。
死後の世界はきっとあるわけではなくて、怨念が深くて霊となってこの世をさまよう…なんてこともないのだろう。
だが一方で、こんな話も聞いたことがある。
「人が死ぬと、数グラムだけ、体重が軽くなる」。
つまりその軽くなった部分が、「魂の重さ」というわけだ。
なるほど、そういう意味では、人間の心というか、物質ではなく精神的な何かが、確かにこの体には宿っているのかもしれない。
死とともに解放されて、それがどこに行くのかは想像もできないが。
月猫は「死んだら終わり」の思想を持ってはいるが、一方で、実はお化けとか霊とかを少しだけ信じていたりする。
いやはや、我ながら矛盾の塊ですな。笑
そうというのも、月猫は中学~大学頃まで、いわゆる「霊感」的なものが少しあったがためだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1717291392766-xQO12F7j54.png?width=1200)
霊感。
この世にあらざる者の存在を視たり感じたりする、そういった種類の第六感のこと。
月猫はどちらかというと見えるとうよりは「感じる」及び「呼び寄せ」体質だった。
年末年始のお参りに行けば、必ずと言ってもいいほど初詣に並ぶ人々の渦巻く「欲望」に群がる「ナニカ」を連れて帰る…といったような状態。
そして連れて帰ったあとは、必ず身の回りで色々な不思議な現象が起きる。
例えば、自分が乗っている電車の車両の、自分の頭上の電気だけチカチカと点滅を始めたり。
趣味でギターを弾いていたら、突如左手が血まみれになり、慌てて血を洗い流して止血しようとしたら、どこにも怪我ひとつしていなかったり。
よくある金縛りにあっては、耳元でずっと複数人が言い争っている声が聞こえたり。
まあ、枚挙にいとまがないほど、それはもう色々な経験をさせられた。
また他にも、わたしが撮影した写真には、よく「オーブ」といわれるものがうつりこむことがある。
「オーブ」自体はみなさんご存じだろうか。
シャボン玉みたいな、光る球体のこと。
奈良の山奥で撮影したときは画面全体にオーブがたくさん映り込んでいて、拡大するとそのひとつひとつに侍のような顔が出てきて、友人に即削除を命じられたものだ。
だが不思議なことに、この能力というか体質は、結婚して名字が変わった途端、まったく機能しなくなった。
ひとの名前には力があるということだろうか。
しかしそれから約20年、今になってわたしの前に、ある妖怪がみえるようになった。
![](https://assets.st-note.com/img/1717291427777-mQ9Gi5FpdX.png?width=1200)
その妖怪が初めて現れたのは、昨年の12月。
一目見たその日から、何かおかしいなとは思っていた。
だが、愛くるしい見た目に騙されて、わたしはその妖怪と一緒に暮らすことを選んだ。
名前は「きなこ」。
そう、一見すると、ただの茶トラの猫様だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1717291463628-tGD6XyIxNr.png?width=1200)
しかしこの子は多分、猫の毛皮をかぶったもののけだ。
何が変かって、そう、まとめるならこんな感じだ。
・ツンデレならぬデレデレ。飯よりも触られたい。
・人前で眠らない。寝るよりもモフられたい。
・常に鳴く。撫でられてゴロゴロ喉を鳴らしていてもうるさいくらい鳴く。
・嗅覚人間以下。目の前にエサがあっても気づかない。
・毛づくろいをしない。顔も洗ってあげないと目やにだらけ。
・トイレの砂が嫌い。トイレトレーニングに半年かかる。
そして。
極めつけは、これだ。
これはここ数日見られるようになった奇行なのだが。
トイレでしたうんちを、なんと毎晩隠すようになった。
いや、縄張り意識が強くて、痕跡を消すために砂で隠すというのは一般的によく聞くけれど。
このきなこさん、なんとトイレからうんちをくわえて外に持ち出し、あろうことか色々な隙間に収納してくれるのだ。
トイレ掃除の際のわたしの反応。
1日目。
「あれ?便秘かな?」
2日目。
「え、今日も?病院つれていかなきゃいけない?」
3日目。
「いやいくら何でもおかしいでしょ」
そしてトイレトレーの下やゲージの下、壁の隙間など、探したところ出てくる出てくる。
いやー、まじで「なんじゃこりゃ!」でした。
うんちを隠す猫なんて聞いたこともない。
まじなにこの習性。
ネットで調べても、そういった事案が見当たらず、現状打開策なし。。
月猫の朝は、かくされたうんちの秘宝探しからスタートしますw
![](https://assets.st-note.com/img/1717291557731-DaIqVw5ynH.png?width=1200)
きなこがあまりにも猫らしくないもんだから。
パートナーはよくこうつぶやきます。
「猫飼いたいなあ」。
わたしはすかさず、「いや、飼っとるやん!」とツッコむのですが。
いやでもたしかに、あいつは猫というよりは猫の形をした妖怪な気がする…。
霊感をなくしてもなお、変な妖怪に付きまとわれている月猫でした。
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