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夜の寒さに耐えながら街を歩けば、神の誕生を祝うイルミネーションが、それこそ神々しく輝い…
街を歩く多くの人が、マフラーや手袋を身に着けているようになった。本格的な冬の訪れへの準…
「で、オレを呼び出したのは?」 ベランダの手すりにもたれかかった彼は呟く。過去の回想を…
大学の研究室のベランダから外を眺めていた。急にやってきた寒さに立ち向かい、色付いた葉っ…
「お前、正気か?」 酒に酔った翔平が僕を責めるように口走った言葉には棘があった。いつも…
「……ありがとう」 沈黙を破った感謝の言葉は、どこか想定の範囲内の言葉だった。その後に…
「やっぱり、時期尚早だったんじゃないかなぁ」 往生際の悪い僕は、隣に座り、講義を聞きながらレジメに言葉をメモしていた誠治にだけ聞こえるくらいの声量で呟いた。翔平は、僕の前の席で結局眠っている。無理もない話で、僕も何も無ければそうしたかった。 「でも、返信来たんだろう?」 誠治は顔を黒板に向けたまま訊いた。メモをする手は消して止まらない。ふと、誠治のレジメを見ると、教授の言葉を要約した文字で真っ黒だった。 「まぁ」 カバンからスマートフォンを取り出し、机の下で起動させる。
夏の暑さを引きずったまま、秋になった。子供の頃は紅葉を写真に収めていた時期も今は温暖化…
「ここ、禁煙」 タイミングよく誠治が帰ってきた。もはや狙っているのかと勘ぐってしまうく…
テレビで終戦特集が組まれている夜、美沙に呼び出された。僕は終戦の時期に恒例の終戦ドラマ…
「海だぁー!」 翔平は大声――まるで声出しをする高校球児のような声――を海に向けて叫ん…
湘南にあるキャンプ場は海から近く、潮の香りや時より吹き抜ける海風が印象的だった。べたつ…
「コバルトブルーの……」 翔平がサザンオールスターズの『涙の海で抱かれたい』を熱唱し始…
「やっと、やる気になったか?」 カウンター席で僕の横に座るマスターは、日本酒のお猪口を口に運んだ後に満足そうな笑みをこぼして言った。 「はい。まだ何にも決まってませんけどね」 僕はジョッキに入ったビールを一気に飲み干した。 宮野写真館の近くの商店街で地域住民をターゲットにした居酒屋は今日も満席だった。土方風の中年二人組や商店街を闊歩する商店会のじいちゃんなど、メンツは安定して変わらない。手書きで書かれたメニューや今や大女優になっている女性が水着姿でビールジョッキを持って