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バーには黒猫がいる。 テーブルの向こう側に座る、真っ黒ツヤツヤの毛並みと金色の目、く…
バーには黒猫がいる。 テーブルの向こう側に座る、真っ黒ツヤツヤの毛並みと金色の目、くたくたのやわらかい体が自慢の、ねこが。 今夜も彼女は自分のためのバーメイドとして場を整える。だがいつもとは少しばかり様子が違った。重たい洋酒のボトルを抱えてはいるが、飲もうとしているわけではないらしい。 「オレンジが安かったの」 帰ってすぐに風呂を済ませ、適当に食事も済ませてしまって、洗いざらしの擦り切れかけたシャツを着たバーメイドはご機嫌だ。キッチンにどんと置かれていた大きな