つねに正しく、今を生きるわたしたちについて
報道によると、ディズニーのCEOが窮地に立たされているという。アメリカの保守派とリベラル派の対立に巻き込まれたのだ。どこまでも悪と正義の対立が続くアメリカで、正義の側に立たないことは許されない。
それが人種差別など、もはやほとんど誰もが支持しない概念であれば、判断は容易だ。しかし、家族観や子どもの権利と保護などといった点においても、彼は判断を求められてしまった。
商売において、政治的発言は禁物だという「金言」は、
もはや通用しない
かつての社会においては、政治的スタンスを曖昧にすることにより、賛成派、中立、反対派のいずれとも付き合い、取引することで、利益を最大化できると考えられてきた。
しかし、現代社会には、そのような「甘え」は許されない
中立派とは、差別主義者であり、未だ目覚めていない無知蒙昧な現状に甘んじる意識の低い人間であり、そして打倒するべき敵そのものとなった今、ビジネスにおいても、「敵と味方」を明瞭化し、そしていかなる敵とも戦いを始めることが求められている。
この潮流の元、侵略国家の国民に服を売ることは、プーチンの側に立つことに等しく、許されざる大罪であるとしてユニクロが糾弾されたことは記憶に新しい。
ひょっとすると、戦争などであれば、正しい側に付くことは簡単かもしれない。しかし、複雑さを増し続ける現代社会において、常に正しい発言を行う、という難易度は、上がり続けている。
こと、発展と競争の著しいアメリカ社会においては、決して強要することが許されない、ジェンダー自認について、「自分らしく生きる」人の比率はかつて無く高まっていると言える。
これだけ自分らしく生きることが求められる社会において、LGBTQでないということは、もはや怠慢の一つであり、競争の激しいアメリカ社会へデビューする大学生にとっても、そのトレンドは迫りつつある。良識ある新世代が、人種差別に当然反対するように、もちろんLGBTQであることが大事なのだ。
「内心の自由」などという差別主義者の論理は、そこには存在しない。もし、あなたがアメリカのエリート大学に通う男性で、女性にしか性的魅力を感じないとしても、決してそのようなことを口に出してはならない、あなたは無知蒙昧なトランプ主義者とは違うのだから。
ここまでの文章に違和感を覚えた人は、是非「二重思考」を学んでいただきたい。これは、相互に矛盾する思想体系を、包括的に理解する上で、不可欠な概念だ。
「ダッグスピーク」
「戦争とは平和」「自由とは隷従」「無知こそ力」
これらは、世界最高の文学に数えられる「1984年」での、余りにも有名なスローガンだが、ここでジョージ・オーウェルが言及した、もう一つの概念について述べたい。
フロリダ州が制定した「Don't Say Gay」法案に賛成する人間は、ホモフォビアであり、セクシストである、そしてもれなくレイシストでミソジニストであることが、理解いただけたろう。補足するが、もちろん私はLGBTQの理解者である。
この一文は、ロシア人に服を売るという大量殺人行為に反対な、あなたのように正しい社会を生きる人には、容易に理解できるものに違いない。
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