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オンナの中にある狂気とその願望について。

ぶったまげた。その一言に尽きる。
予告編を見ていて、ある程度覚悟していたのだけど。

RAW 〜少女のめざめ〜

厳格なベジタリアンの獣医一家に育った16歳のジュスティーヌは、両親と姉も通った獣医学校に進学する。見知らぬ土地での寮生活に不安な日々を送る中、ジュスティーヌは上級生からの新入生通過儀礼として、生肉を食べることを強要される。学校になじみたいという思いから家族のルールを破り、人生で初めて肉を口にしたジュスティーヌ。その行為により本性があらわになった彼女は次第に変貌を遂げていく。(映画.comより転記)

グロいとかエグいとか軽ーく超越していて、見た後のやるせなさをどう処理しようかと考えあぐねている。単にホラーやスプラッタ系として片付けたくもない。この映画に込められた意味があるとして、まずパッと思い浮かぶのは、人間としての自覚、自我の目覚めなんだと思う。でも何か違うな、それだけじゃないなと感じ始める。

主人公のジュスティーヌは悲しいまでに、純粋無垢で、自分の欲望をむき出しにすることも、反対に抑えることもできずにいる。いつだって誰かに押さえつけられて生きてきた人間は、こんなふうになってしまうんだろうなと。そういう意味で、彼女はなんら特別な存在でもなく、彼女自身に共感する部分があるのだ、誰しも。

って冷静に分析した気になっているけど、映画を見ている最中は、目を瞑って、早くこのシーンが終わりますようにと幾度となく願った。こんな経験は今まであまりない。今まで見たどの作品より気色悪くて、現実味を帯びていて、超リアルなのだ。決して有り得ない世界ではないと。

生肉を食す。生肉を食べる歓び。そこから飛躍して、人肉を味わうまでに至る展開は、ワーーーー!ってなるんだけど、なんかね、簡単に否定できないっていうか、サイコとも思えないし、私自身がそうありたいとか、そんなことこれっぽっちも思ったことないけど、このジュスティーヌや彼女の姉のアレックスの欲望って、なんか「理解できる」んだよね。それは、多分自分がオンナだから。

以前に「WILD わたしの中の獣」というドイツ映画を見ました。これは、主人公の女性が狼を「性的に」愛する物語なんですが、この「RAW」見て、同じニオイを感じたんです。どちらも女性が撮った作品で、いわゆるフツーとはかけ離れた物語。もはやタブーでしかない愛のカタチを映像化している。

ジュスティーヌは、ルームメイトでゲイのアドリアンに恋愛感情のようなものを抱きます。女として、多分彼女が生まれて初めて好きになった男の人。だけど、彼はゲイで、でも彼女の想いを受け止めようとするんです。彼は自分がどうなるのか、何となくわかっていたんだなぁって。

とはいえ、この「WILD…」のレビューを読み返してみると、私はひたすら戸惑ったまま、感想を終わらせている。主人公に共感するでもなく、何で女性がこんな映画を撮ろうとしたの?と。

単独で見ると「理解できない」って終わっちゃうものも、改めて二作品を並べて見ると、わかってくることがある。

女だから表現できたんだなぁって。

狂気の沙汰かと思われるシーンも、どこか哀しくて、泣きたくなるような瞬間がある。為すすべのない世界を女が描くとこうなるんだと。

この映画がめっちゃくちゃ素晴らしかったかと言うと何とも言えない。多くの人の共感よりも反感を買うだろうなとも思う。

でもどっちもオンナの中にある「普遍的な狂気」を描き切っていて、ある種の清々しささえ感じるんです。それを男たちは受け止めるべきか、どうすべきなのか。惑わせられて、覚悟を決めて対峙する男の姿も描かれている。

色々書いたけど、まぁ血を見るのが平気な方はご覧ください。私もわりと平気な方だけど、なかなかのモノでした。これをB級作品とかいうジャンルで片付けてほしくはないです。絶対に違う。

2018年10本目。大阪ステーションシティシネマにて。

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