【実験小説】Case1:雨宮雪子の場合 7
今、雨宮雪子の目の前にキャンバスがある。長方形の白いキャンバス。そこにはまだなにも描かれていない。
白い化学繊維の布は開け放たれた窓から差し込む光を浴びて、うっすらと光っている。ウールのような風が部屋を包み、微かなざわめきをそこにもたらす。
雨宮雪子は空白のキャンバスをじっと見つめる。頭の中で完成されたイメージをキャンバスに投影する。空白の中に少しずつイメージが浮かび上がってくる。
それははじめからキャンバスに刻み込まれていたかのように自然な姿をしている。自分はただそれ