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商店街を学ぶ、遊ぶ、関わるの場所に|2022飯塚高校×とびゼミコラボ授業⑧

いよいよ今日は飯塚高校創設60周年を記念した学園祭。

飯塚高校を運営する学校法人嶋田学園は飯塚市中心部を貫き、かつては長崎街道の宿場町において職業教育を行う学校としてスタートしました。商店街の栄枯盛衰を見つめつつも、近年は学校設立の場所に同校製菓コースが作るお菓子を販売する「プチフル」を作ったり、製菓コースがスイーツ甲子園で優勝すればパレードを行うなど、商店街の活性化にも尽力されてきました。

そうした中で九州移住ドラフトでゼミ生が指名され、SPINNSの出店、飯塚高校トータルライセンスコースでの高大連携アントレ教育プログラムの実施、そして10月の販売実習とあれよあれよと連携が進むようになりました。

そして、今日から明日にかけて「飯塚高校学園祭 in 本町東町商店街」と題し、商店の軒先をお借りしたり、閉まっている店舗を開けたりして商店街そのものを学園祭の舞台としました。この機会でも授業で関わったトータルライセンスコースの1-2年生が出店し,1年生はワッフル屋,ストラックアウト,射的を,2年生は10月同様にカフェつむぎ,紅椿,元野木書店,カカオ研究所とSPINNSの皆さんのご協力を得ています。

今回はその模様を報告します。なお、これまでの飯塚高校での活動の様子はこちらをご覧ください。

商店街で学園祭やるとこうなる

商店街で学園祭をやる。果たしてどんなことになるのだろうか。恐らく当事者の先生方も???だっただろうが,高大連携アントレ教育プログラムを提供している側の私も,そしてきっと学生も不安だったに違いない。

今回の出店マップ

というのも,先月末の販売機会では売上的にはまあまあ上げることができたけれども,商店街を歩く人の数はいつものそれと大きく変わらなかったからだ。ただ,これまでも商店街ではさまざまなイベントが行われており,流れを作ればきっと人が来るのだろう。そんな期待をしていた。

商店街に一歩入ると高校生がたくさん。

それがどうだろう。車を止めて商店街に入ると,そこには人,人,人。人の波があった。その多くは飯塚高校の生徒。各クラスで作ったお揃いのパーカーや衣装に身を包み,それぞれの店舗でお客様を出迎えたり,休憩時間にそれぞれが散策している様子。

娘氏もヨーヨー釣りを楽しむ。

各クラスの店舗も,射的やヨーヨー釣りのような縁日的なお店をする場所もあれば,唐揚げやワンタンスープもあり。茶道部が呈茶をしたり,自動車整備コースは提携している大手自動車販売店の最新自動車を展示したりと,それぞれが工夫を凝らしている。中でも人気があったのがお化け屋敷。

1年3組は空き店舗を使ったお化け屋敷。大行列。

今も昔も学園祭の花形はお化け屋敷なのだろうか。お店の前には高校生だけでなく,卒業生と思しき若者も並んでいる。まさに大行列。

そう言えば,以前日南市に初めて訪れたとき,油津商店街のyottenには小中学生が集まっていた。宮崎大学の学生が彼・彼女たちをサポートし,商店街で開く縁日に向けた準備。そこでは空き店舗を使ったお化け屋敷が定番で,しかもその店舗はしばらくすると埋まっていくというジンクスつき。そんなことを思い出しつつ,商店街をしばらく歩き回っていた。

鯛焼き屋も行列。

今回の学園祭では店舗もいつも通り開いていて,普段よりも置いている品目も多くあったような気がする。同行した妻も商店街内の八百屋に立ち止まり,「安い!安い!」と言いながら野菜を購入。満足していたようだ。また,東町商店街にあるたい焼き屋はこの商店街の名物店の1つだが,ここも引っ切りなしにお客が並んでいる。周りのお店にも相乗効果があったのだろうか。

メインステージでは吹奏楽部の演奏会

メインステージではさまざまなイベントが開催されていた。私が訪れた時には吹奏楽部の演奏会。そして,生演奏で繰り広げられるカラオケ大会もあった。面白かったのはカラオケで歌っているのが先生ということ。高大連携アントレ教育プログラムでお世話になっている先生も歌ったことがあるそうで,それはもう気持ちよく歌えるのだそうだ。

1日目の終了イベントではバトントワリングが行われ,学園祭を華やかに彩ったかと思えば,その後には生徒が壇上に上がってコントを繰り広げたり,カラオケをしたりと楽しそうにしていた。最近の若い人は本当に多芸だ。素晴らしい。

高大連携アントレ教育プログラムのお店は

さて,今回の学園祭には高大連携アントレ教育プログラムで担当しているトータルライセンスコースの1-2年生も出店している。先月末には2年生がヲソラホンマチと近くの書店をベースに販売体験を行い,高校生にとっては決して小さくはない売上を上げることができた。

今日も飯塚に到着したのは13時頃だったが,営業開始の10時から90分程で1年生の女子チームが出していたワッフルがすでに売り切れたという情報が届いていた。「おっ,結構いい感じ?」という期待をしながら,それぞれの店舗を訪れてみた。

TANEMAKIも出店。子ども服もありました。

先月から始まったTANEMAKIの新店舗「愛情循環」では,前日に高校生が自分たちで値決めをし,彼女たちが考える店舗づくりを実験。今回は子ども服もアイテムに入っている。修学旅行を機会に考えていた企画は残念ながらうまくいかなかったそうだが,それでもどうだろうか。店舗らしい店舗ができあがっている。それが売上につながっているといいのだけれども…。

高大連携アントレ教育Pの2年10組は10月の出展に引き続き販売。

一方で,メインステージ近くで店舗を並べている2年生を担当している学生の顔色が浮かない。「どう?どんな感じ?」と聞くと,ステージを見に多くのお客様は来店されているものの,なかなか呼び込みができない。しかも,出店にあたり必要な基本動作も抜け落ちていて,自分たちの失点で売上が伸びないような状況に。前回の出店とは裏腹,修正が効かないまま1日目にズルズルと終えてしまった印象で,雰囲気に飲まれてしまったような形に。

この記事を書いている最中に高校生と行ったふりかえりが共有されてきたが,今日1日をどう過ごしてきたか,どういう課題が出てきたのかを高校生と大学生が丹念に話し合っていた様子が見えた。明日は人でも多くのお客様をお招きして,自分たちが選んだ商品を手に取って頂く機会を作って欲しいと期待している。

近畿大学とのコラボプロジェクト:E-ZUKA広場(仮称)も完成間近

そして,もう1つのプロジェクトにさらなる展開が。今年度から新たに飯塚市にキャンパスを置く近畿大学産業理工学部の小池研究室との合同プロジェクトがスタートしている。九州移住ドラフト絡みで始まったこのプロジェクト,商店街近くのビル2階で使われていなかったフロアを活用しようと企画を練っている。

すでに何年も使われていなかったフロアだったので一部は痛みが激しくなっていたが,飯塚でスペース活用のノウハウを持っている小池研究室の学生・院生の皆さんのご尽力で蘇ろうとしている。フロアにはハンモックやチェアが置かれ,この日はコーヒーとココアを提供していた。

近畿大学産業理工学部の小池研究室とのコラボで生まれたスペースもほぼ完成に。

このスペースを活用してeスポーツ関連のイベントを開催しようと企画しているのがゼミ3年生のプロジェクト。彼らはこのスペースを「E-ZUKA広場」と名付けて活動しようとしている。今日は同じく飯塚にキャンパスを置く九州工業大学飯塚キャンパスの学生も来て,ゼミ学生とコミュニケーションを取っていた。こちらはこの投稿執筆時点では報告がないが,学生曰く話がだいぶ進んだと喜んでいた。

スペースが利用できるようになるにもあと少し。先立つものがないと回収不能な部分もあるにはあるが,すでにこのスペースを活用して何かしていこうという動きが出ていることは喜ばしい。さあ,何ができるかな。妄想が膨らむ。

今後の他地域での展開に向けて

そんなこんなで1日目終了。明日は校務のために訪問できないが,今日の成果をもとに改善が進むであろうし,より良い出店ができるようになることを期待している。

ここ最近,私の周りでは商店街を舞台にした産学連携案件が増えてきている。先日訪問した雲仙・神代地区や天草・本渡銀天街などの取り組みを見ると,地方における身近な事業機会として商店街を舞台にさまざまな世代が関わっていくことには大きな価値があるように思う。

来月11日には夏休みにマルシェを開催した壱岐・勝本浦でのイベントを予定しており,今回は商店街や前回出店してくださった皆様にご協力を頂きながら,島内他地域からの出店をお願いしたり,七隈祭で販売した勝本のイカを使ったカレーあんかけ焼きそばの販売,そして壱岐商業高校からも吹奏楽部と和太鼓部の演奏などが行われる予定になっている。

こうして1つの高校の取り組みかもしれないけれども,地域にインパクトを残せる取り組みには価値がある。地域を盛り上げる,さまざまな世代をつなぐ機会としても活用できる。が,得てしてこうした活動が一過性のもので終わってしまうこともある。そうならないように,高校生にとっては素晴らしい教育機会であり,商店街側にはある種の事業機会にもなるようにイベントを設計する必要があるし,そうした理解を地域で得られるようになれば,自然とこうした取り組みが持続可能になっていくように思う。

私の語彙力が乏しいがために,この機会が商店街で行われている,どこにでもあるような小さなイベントに感じられるだろうが,若い人が踏み出す小さな一歩が地域の皆さんに勇気を与える機会になるのかもしれないと期待している。そして,その根幹にアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスという考え方が根付くことを期待している。

商店街が遊ぶ、学ぶ、関わるを通じて実践的に内容知を学ぶ場であり、学校で理論のような形式知から見た理解を付け加え、行き来させることで、高校生が自ら学び、自らを高めるように導ける場を創出できるようにしていきたい。そういう可能性がまだまだあると思えて仕方ない。

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