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街のにぎわいを作れるのは地元の人の力|雲仙・天草視察記

11/20。この日は福岡市長選挙。が,この日にしか無いイベントをはしごするため,前日に期日前投票を終えて7:00に自宅を出発。今回は福岡→雲仙→天草→(熊本)→福岡という大回りを決行しました。地図に表すとこんな感じ。

ざっとこんな感じ。

というのも理由は2つ。1つ目は先般訪問した熊本県天草市の中心部、本渡にある銀天街で行われている取り組み「まちはみんなの遊園地」の視察。

「まちはみんなの遊園地」今月のチラシ

もう1つは、長崎県雲仙市国見町にある城下町、神代地区で開催されている「こうじろフェス」に学生のポップアップコーヒー店「BESIDE  COFFEE STAND」が出店しているのを観に行くため。

こうじろフェスのポスター

新型コロナウィルスによる行動制限がなくなりつつあるとされていて,今や各地でイベントが復活しつつある。前者はコロナを機会に子どもたちが集まる場所を創りたいという中で始まったと聞いていて,天草周辺の3つの高校の生徒も主体的に関わりながら開催されている。また,後者には長崎大学経済学部のゼミも参加しており、地域の皆さんの交流機会として月に1度のお楽しみとでも言うべきものだろうか。今回が第7回目だそうだ。

この日は雲仙と天草で行われている2つの取り組みを弾丸日帰りツアーで見てきました。その記録としての記事です。私の頭の中がダダ漏れ状態になると思いますが,気になさらず。

「若い人がいない」ことへの危機感|神代地区

神代には10時前に到着。快晴の神代地区では街道沿いのお店がそれぞれ出店の準備をしている。

カフェ出店準備中に到着

街道沿いに並ぶ豆腐店、旅館では惣菜や「がね汁」、ドラム缶で作ったピザ釜があったり、アクセサリーやパンを売っているお店もある。BESIDEのメンバーは地区にある2つの旅館のうち1つのスペースをお借りしての出店。お隣はハーブティーとタロット占いのお店。

もちろん頂きました。パララボTさんご提供。

地区の人々が思い思いにお店を出して楽しそうにしている。中にはスノードームを作るワークショップなども開催されていたり、ダンスを踊るイベントがあったりと子どもたちも楽しめるようになっている。子どもたちの声っていいですよね。

せっかくの機会なので地区全体を見て回ろうと散策していると、ある人に声をかけられる。この地区に入っているホーホゥ(ホーホゥとは日南市の油津商店街をはじめ地域づくり事業で活躍されている木藤亮太さんが代表を務める会社)の社員Tさんと市役所商工関係部門の部長Sさんだった。トップ画像のような格好しているのに、よく私だってわかったなぁ(笑)

昔は商店だった民家

そこでは今の地区における課題、大学との連携は行われているけれども生じているギャップ、今後の展望など、さまざまな話をお聞きした。特に地元に戻りたいが、仕事がないとか、どこかで商売を始めたいが小さく始められる場所がないと考えている人たちに機会を提供できる場所を創りたいと。なので,空いている民家などを活用したチャレンジショップのような場作りを進めたいし,そういうプレイヤーを増やす工夫をしていかねばならないが,それを誰がどうやるかが大きな課題としてあるのだと。

チャレンジしやすい場所ということであれば,その感覚は壱岐・勝本浦でのマルシェや日田のBESIDEをやりながらも感じていることでもある。拠点ができれば活動はしやすい。しかし,拠点ができると街に溶け込みすぎてしまって同質化してしまう可能性もないわけではないし,関係人口として関わるのだから自由でいられるという部分もある。イベントで継続しつつ,定着を目指すのか。これを突き詰めれば人と場所,そして何よりも先立つもの問題が浮き出てくる。やるのはいいが,その部分で応援してくれる人は出てくるのかと。

がね汁美味しく頂きました!

確かに地域と関わる人を増やそうと思えば、生活基盤としての仕事もセットで提供する、あるいはそうした機会を作ることが必要ではある。そこにビジネス(事業)を学ぶ意義がある。特に地域で商店を営むということは,そのマーケットの中で顧客たる周囲の人たちとどう関係を構築し,維持し,より良いものにできるかが鍵になる。お金も人も商材も,それをどうやって回すことで持続可能にしていくか。

そうした中で大学との連携という選択肢が出てくるのは自然な流れ。そこに潜在的なプレイヤーがいる。ただ、学年で区切られた学生の活動をいかに持続的・継続的なものにしていくかは難しさがある。また,今の大学の仕組みの中でできることにも限界がある。

そうしたことを短い時間の中で皆さんと議論して,現時点での認識共有を図った。この1年で雲仙市では神代地域のみならず,温泉郷,小浜,南串山と市内各地で活動されている方々とお話してきたこともあるので,形にできるのであれば形にしたい。んー,自分の中ではつながったんだけど,これをつなぎ合わせて巻き込んで形にするには僕の力では足りない。

11月初旬に訪問した際の洋服店

その後、地域を散策していたら目に留まった厚揚げやがね汁(かに汁)をランチに頂き、さらに再び学生の顔を見て次なる目的に出発しようとした。が、どうしても立ち寄りたい洋服店を訪問。たまたまオーナーがおられたので立ち話をしばらくした。

すると、オーナーからは心の叫びとも言えるような地域における小売店経営の難しさについてお話を伺った。尖った洋服店で各地から話を聞きつけた顧客が店舗目掛けて来店してくれる。沖縄に出店すれば当該店舗ができた途端に周りに周辺にも同じような店舗ができてテレビに取り上げられたりと。「もちろん神代の店舗もメディアに紹介されているけれども、この場所でお店を営むのは非常に厳しい。街が(経済的に)潤っているかと言われればそうでもない。若い人がここに住み、事業をしようと思う人を地域で支援できるような態勢を作らねばならないのではないか,が,それはどうやるの」というような話をした。

真摯で切実な願い。痛いほど身に沁みた。

鬼池港到着前の島原半島全景

そんな話を伺って一路島原に向かうことに。雲仙温泉郷を抜け、島原半島を縦断して1時間。なんとか12:30発の口之津→鬼池のフェリーに間に合った。

駆け足の神代訪問だったが、2023年度の合宿をどうするか、どういう地域との連携を図れそうか。たくさんのヒントを頂くことができた良い訪問になった。

商店街に子どもたちの歓声が響き渡る|本渡・銀天街アーケード


いよいよ天草上陸。といっても、鬼池港は小さな港で船から車を出したら秒で道路に出ることができる。生活の足と言えばそうなのだが、生活の中に当たり前に航路があるという感じ。

車で10分ほど走り、今回のツアーを組んでくださったパララボさんの天草オフィス(絶賛工事中)を拝見して本渡中心部に移動。

銀天街アーケード「まちはみんなの遊園地」

いよいよ今回の主目的「まちはみんなの遊園地」(遊園地)の見学に。

銀天街アーケード近くになると、やたら子どもたちが走り回っている。もうこの時点で遊園地がどれだけ子どもたちに浸透しているかがわかる。

ポルト側から入ると注意事項が

アーケードを進んでいくと目に入る看板。注意事項が記されたものだが、パッと見ただけでかなりしっかりと作り込まれていることがわかる。民間で始めたプロジェクトだとは聞いていたが。

子どもたちが思い思いに落書き

それもそのはずで、あとで話を聞いて理解したのだが、この遊園地の主たる運営メンバーのお1人で商店街内でお店を出されているオーナーが、店舗をやりながらデザインもしているのだそう。商店経営者をしながら、デザイナーとしても活躍中。またメンバーには市議会議員や市役所職員も関わっていて、運営側の組織がしっかりしている。それはさまざまな人が巻き込まれていく仕掛けになっている。すごい。

工業高校生徒によるわたあめ屋さん

また、この遊園地には天草市内にある3つの高校がボランティアとして関わり、積極的な活動が行われているという。

例えば、上のわたあめの機械は、長年使われておらず、壊れていたものを譲り受けて工業高校の生徒が自分で直して使っているのだそう。そして、白とピンクが一般的なわたあめにさまざまなフレーバーを導入して売上を伸ばすなどの工夫を生徒自身で進めているという。「商売って難しいですね」なんて会話を高校生と大人が交わしながら、楽しそうに商売を語るなんてことがこの街では繰り広げられている。

あるいは、高校生が遊具で遊ぶ子どもたちの見守り役兼遊び友達になっているなど、高校生がこのイベントを支える重要な役割を果たしていることがわかる。

かなり本格的な建築体験イベント

こうした取り組みは周辺の商店や企業にも火をつけていく。

例えば、地元の工務店では子どもたちに「大工体験」を提供するようなイベントを行っている。写真のような建物を組み立てていくものだが、脚立やゲンノウ(金槌)を使って本格的に組み上げていく。組み上がると最後には「棟上式」で餅まきまでする本格的な仕様。こうして、仕事を学びながら地域に根付く風習まで学べるようになっていている。キッザニア顔負け

銀天街内に設られたステージ「スマイルパーク」

ステージでは高校の吹奏楽部の演奏会やフラダンス教室の生徒さんたちが踊っていたり。商店街の一角にこうしたステージが整えられていることもあって、さまざまなイベントが仕掛けられる。

遊園地そのものを形にしていくまでのご苦労はあっただろうが、月に1回こういうイベントがあるだけで「商店街」の存在感が高まる。あらゆる世代の人たちが関わり、遊園地を作り上げるという過程の中で誰にとっても多くの学びの機会が生まれていく。

ここに1つ理想的なアントレプレナーシップ教育の形を見た気がする。日常的な生活から学びを得ていくということ。内容知だけでなく、方法知を通じた学びがここにある

某有名作家によるプロデュース:まるきんへ

続いて、同じ銀天街内にある鯛焼き店「まるきん」へ。ここにはくまモンを生み出した小山薫堂氏が中心となり、さまざまなプレイヤーが関わっている。

立派な看板

銀天街内で古くから営まれており、地域に愛された「まるきん製菓」。2017年5月に店主の高齢化、設備の老朽化を理由に閉店すると聞きつけた小山薫堂氏が周りの協力者を募り、再構成して同年12月に別の場所で再開したお店。

昔ながらの機械式鯛焼き機がパタンパタンと金属音を鳴らしつつ、店内は著名デザイナーがデザインし、日本を代表するアパレルブランドがアイテムを提供、餡も京都の老舗菓子店からの技術供与を受けてのリニューアル。本渡の人であれば誰にとっても大切な思い出の場所が繋がれていく。どこかで聞いたことがあるような話だが、やっぱりいいものだ。

そのあたりの詳細な話はこちらの記事を読まれたい。

そして、ここで話を伺ったのはオーナーであり、上記の記事にも登場された地元有力企業の経営者。さっそく今各地で行っている取り組み(高大連携)をご紹介しつつ、天草における民間レベルで感じる景況感、課題感などについて議論。

丸い鯛焼きとスカッシュを頂きました

本渡地区だけでも3万人弱が住んでいて、ナショナルブランドの店舗がいくつも立ち並んでいるのを見れば十分に「都会」だ。しかし、そこで買い物をするというのは価値の流出を招くことになり、より地元経済を疲弊させていく。だから、地域でニーズを把握しながら、自分が生活できる程度(あるいはそれ以上)の稼ぎを得られる事業を創るということも選択肢としてあっても良い。少なくとも私たちの2代前、3代前はそうやって事業を始めてきたのだし、違うやり方でそれを受け継いでいくことだってできる。

そうやって地域には学ぶ機会があるわけで、「目に見えて何もない」から何もないのではなく、「大切なことほど目に見えない」からこそ教育を通じて見えるようにしていくことの意義を改めて感じるディスカッションになった。内容知と方法知の循環。共通言語を持つことで生まれる文化の醸成。

そうこうしていたら、もう外は真っ暗に。19時の熊本行き最終バスに乗る前に食事を済まそうと近所のお店に突入。

どどーん。刺身盛り合わせ2人前。

天草の海の幸に舌鼓を打ちつつ、話は尽きないのでありました…。

ふりかえり

さて、そんなこんなで終えた今回の弾丸ツアー。19時に天草・本渡を出発して福岡に戻りました。バスで2時間半、新幹線で50分の旅。

本渡→熊本駅は2時間半の旅

お酒を少し頂いたのもあって車中では爆睡(笑)あまり苦痛ではありませんでした。日中だったら景色も楽しめたんだろうけど、その分渋滞している可能性を考えるとこれはこれであり(なんのこっちゃ)。

今回の雲仙・天草のツアーを通じて見えたことってなんでしょう。

これまで関わってきたいくつかの地域との比較をしてみたら良いのだろうか。いや、これまでは(日田を除けば)高校ありきでプログラムを進めてきた経緯もあって、そのフィルターもあって地域を見てきた気もする。一方で、日田、壱岐、飯塚での出店という経験を通じて多くを学んできたから見えた景色もあるだろう。

多くの部分では起きていることは共通している。経営の重要な要素であるヒト・モノ・カネの部分。

が,ここにこそアントレプレナーシップ教育の価値があるはずだ(と信じている)。アントレプレナーシップとはコントロール可能な資源を超越して機会を追求することなのだから,そもそもすべての経営資源が揃っている状況で何かをすることを想定していない。むしろ,あらゆる事業は資源不足で始めている。

だからアントレプレナーシップを発揚し,街の課題解決をジブンゴトとして捉えて活動できる人を育てていく。地方では少子高齢化の上に過疎化が進んでいるので,地域の担い手の平均年齢が高くなる。が,年齢が高いということはそれだけ経験を持っているということでもあり,フックをうまくかけていくことで皆さんがお持ちの資源を引き出すことだってできるかもしれない。そして,そうした人を応援する「応援の連鎖」を得ながら活動を続けていくことで,気づけば(Effectualに)何かが出てきていることもあり得る。

こうした仕掛けを進めていくには地域の最高教育機関である高校の役割が大きくなる。そして,そこで将来の地域の担い手になり得る若い人にアントレプレナーシップ教育を行うことで,ジブンゴトとして周りにある課題を解決することが自分の食い扶持を稼ぐことにもなるし,地域や顧客に付加価値を提供することにもなる。そして,それをどういう仕組みを作って行うか,どう事業として成立させるかに商学・経営学・会計学教育を行う意味が出てくる。

これって今までもずっと心がけてきたことだし,実践しようと取り組んできたことではある。地域に出て話をすれば,この取り組みについて多くの方々の同意を得ることができる。が,これを学校という場所、授業の一環としてやるのではなく、民間でボトムアップでいかにやるか。地方版キッザニアと言うべきか、何と言うべきか。

今回の視察でまた大きな課題を得たような気がするし,新たなチャレンジのあり方を得たのではないか。そこまでは確信を得た。さあ、次はどうする。

んー,まとまってない(笑)。

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