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「ハンチョウ」のジャンパー

今から約5.6年ほど前、僕は食品関係の物流会社で働いていました。簡単にいうと食品の仕分け作業です。そこに皆から「ハンチョウ(班長)」と呼ばれている方がいました。「ハンチョウ」は僕の10歳ぐらい上の方でした。当時、学生上がりの社会人デビューの僕は初めて会った時に「なんか難しそうな人だな、あまり近づかないようにしよう」と思いました。しかし、直属の上司なのでそんなわけにはいきません。こうして僕の社会人ライフが幕を開けました。

僕はとりあえず、仕事ができませんでした。そして、「ハンチョウ」にめちゃめちゃ怒られました。直接聞いたわけじゃないですが、「こんなに怒られるのは歴代俺が一番多いんじゃないか」って思うぐらいに怒られました。しかも、ミスのレベルがまあでかい。
・ヨーグルト6個入ったケースを落とし全て破損
・リッターのジュース12本入ったケース倒して破損
・リッターの牛乳50本近く破損        他多数。

しまいには、「またお前か!」や「またあいつか!」って言われるレベルでした。今思えばよく首にならなかったなと思います。。それを積み重ねるうちにやらかして報告せずに逃げようかと思うぐらいにトラウマになっていました。それでも周りの人たちの支えのおかげでなんとか頑張れました。

そうやって毎日仕事をしているうちに僕と「ハンチョウ」の間である大事件が起きます。周りの一部の関係者のあいだでは有名な話なのですが、これが、【ハンチョウジャンパー事件】です。説明していきます。

その会社では社員に支給されるジャンパーが決まっていて、皆同じなのです。サイズだけが違うだけで、名前も入ってないので本当に分かりません。
あれは寒い真冬の事でした。社員が皆ジャンパーを庫内のポールに引っかけて作業をしていました。そして、1段落したので僕はジャンパーを着て一服しに喫煙所へ行きました。一服していると、「ハンチョウ」が今までにない険しい表情をしてこっちに走ってくるではありませんか。何事と思っていると、「お前そのジャンパー見せてみい」と言われました。見せてみると、なんとこのジャンパーは「ハンチョウ」のジャンパーだったのです。一番間違えたらいけない人のジャンパーを着てしまいました。

「お前!これ俺のジャンパーやろが!返せ!」「ハンチョウ」は激おこです。そう、「ハンチョウ」は潔癖男子だったのです。あの時の表情は今でも忘れません。目が血走っていました。のちに他の社員の人はこう証言しています。「ジャンパーを探しているときの彼は本当に今まで見たことないぐらいキレていたね、怖かった」と。

まさか、業務での失敗でなくこんな形で怒られたのが一番怖いとは。それから僕は皆と同じところにはジャンパーを持ってこなくなりました。

ちなみに「ハンチョウ」は厳しいだけでとてもいい人でした。仕事を退職するときに呼ばれて2人で話したのちに餞別として、5000円くれたときのことは一生忘れません。他の社員の人もとてもいい人ばりでで僕の事をとても可愛がってくれました。また機会があれば一緒に仕事したいですね。

ありがとうございました。




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