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[アーティスト田中拓馬インタビュー5] 「叫び」だけがムンクじゃない!

このページは、画家・アーティストの田中拓馬のインタビューの5回目です。今回は、田中拓馬が影響を受けたという「ムンク」について語ってくれました。
(これまでの記事は、記事一覧からご覧ください。)

今回の内容
1.ムンクはどういう画家?
2.ムンクは狂気や恐怖を表現した!
3.「病める子」はムンク!?
4.「マドンナ」の表現は唯一無二!

 ー 拓馬くんはムンクからも影響を受けているみたいだけど、ムンクについてはどういう評価なのかな?
拓馬 ムンクだと、魂が出ちゃったりしているように見える気持ち悪い絵とか沢山あるんだけど、そういうのが持ち味だったりするよね。
 ー 前回のインタビューでも出てきた「思春期」だね。

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エドヴァルド・ムンク《思春期》オスロ国立美術館

 ー こういう作品を観たとき、君の場合、魂が出ているっていうのは、リアルに感じるの?
拓馬 それはあるよね。だから、僕もこの作品は参考にして描いたりしている。
 ー 理屈とか解釈ではなくて、感覚としてわかるんだ。
拓馬 わかるね。

拓馬 僕がムンクを評価しているポイントは、人間の狂気とか恐怖とか、そういう見えないものを絵画で表現したというところだね。もちろん他にもそういった作家はいるけど、そういう表現として強いよね。
 ー 表現として強い。
拓馬 つまり、明確に狙いを定めてやっているような気がするし、そこがすごいんじゃないかと思うけどね。
 ー なるほど。
拓馬 ムンクはね、面白い作品がいっぱいあるんだよ。例えば、「病める子」っていう作品なんだけど。

ムンク_辞める少女

エドヴァルド・ムンク《病める子》オスロ国立美術館

拓馬 これはね、多分、この女の子はムンクじゃないかと思うんだよね、僕の読みだと。
 ー ほおー。そうなんだ。
拓馬 多分、ムンク自身が病床にいた経験からきているんじゃないか。作品の右側の女性は母親だよね。母親が神に祈るように手を合わせている。藁にもすがる思いを感じるんだよね。
 ー なるほど。
拓馬 全然わからないよ。僕の印象っていうだけだけどね。
 ー でも面白いと思う。ムンクの場合は、やっぱり恐怖感が伝染する感じになるのかな。確かに独特なものがあるよね。

拓馬 あとね、この作品。「マドンナ」。

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エドゥアルド・ムンク《マドンナ》大原美術館

拓馬 これ、きれいな女性なんだけど、なんか薄気味悪いよね。周りにあるのは、精子ですよ、これ。
 ー そうか、なるほど。
拓馬 左下のこれは、死んだ子供かもしれないね。なんか、そんなのが憑依しているんだよね。
 ー うーん。
拓馬 こんなのを表現する人は、いまだにいないよ。僕なんか、こんな気持ち悪いというか怖いのは見たことがない。
 ー その、こんなのを表現する人はいないというのは、手法の話?
拓馬 いや、テーマの話だね。こういうテーマは無いよ。
 ー こういう作品のテーマはなんなんだろう?
拓馬 うーん、こういう作品を何で書いたのかっていうのは分からないね。

拓馬 だから、ムンクというと、「叫び」が有名だけど、あれはなんか、可愛らしいものになっちゃったけど、もっとコアな世界もあるんだよね。
 ー うん、「叫び」になると、記号化されちゃった感じがあるけど、「病める子」や「マドンナ」になると、「叫び」よりも写実的な要素がありつつ、ちょっと並の写実では捉えきれないような怖さがあるのかなという気がしたね。
拓馬 それはあるね。

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今日はここまでです。[アーティスト田中拓馬インタビュー5]を最後まで読んでいただきありがとうございました。次回は、田中拓馬が怖さを感じる画家たちについて。意外な日本のあの画家も登場します。更新は来週末の予定です。ぜひ次回もお楽しみに!

これまでのインタビュー記事はこちらからご覧ください。

田中拓馬略歴
1977年生まれ。埼玉県立浦和高校、早稲田大学卒。四谷アート・ステュディウムで岡﨑乾二郎氏のもとアートを学ぶ。ニューヨーク、上海、台湾、シンガポール、東京のギャラリーで作品が扱われ、世界各都市の展示会、オークションに参加。2018年イギリス国立アルスター博物館に作品が収蔵される。今までに売った絵の枚数は1000点以上。
田中拓馬公式サイトはこちら<http://tanakatakuma.com/>
聞き手:内田淳
1977年生まれ。男性。埼玉県立浦和高校中退。慶應義塾大学大学院修了(修士)。工房ムジカ所属。現代詩、短歌、俳句を中心とした総合文芸誌<大衆文芸ムジカ>の編集に携わる。学生時代は認知科学、人工知能の研究を行う。その後、仕事の傍らにさまざまな市民活動、社会運動に関わることで、社会システムと思想との関係の重要性を認識し、その観点からアートを社会や人々の暮らしの中ににどのように位置づけるべきか、その再定義を試みている。田中拓馬とは高校時代からの友人であり、初期から作品を見続けている。

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今回の見出し画像:「愛の様々な形」(作品の一部のみ)
技法:油彩等ミクストメディア
サイズ:24×18㎝ (サムホールにコラージュ等) 額サイズ32×26㎝ (浮かせ額)
今回は田中拓馬の最新作の1つを紹介します。18日まではオークション中、ぜひこちらからご覧ください!


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