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第2回『アートキャンプ』報告

こんにちは。
協働デザイナーの清原です。

先日の週末2日間は、私主催の『アートキャンプ』第2弾でした。
今回のコラムでは、そこで私が得た気づきをシェアします。

■今回のアートキャンプ旅程

1日目:
小田原の「江之浦測候所」を見学
小田原の温泉ホテルにて、アート&デザインセミナー、夕食・懇親会
2日目:
箱根の「ポーラ美術館」見学
芦ノ湖

総勢14名による、最高の天候に恵まれた二日間でした。

業種・職種も、多様。
年齢は20~60歳代まで、多様。
性別もほぼ男女半々。

そんな方たちが「アート」というキーワードを通して一堂に会する、オモシロイベントです。

■テーマは「越境」

私が協働デザイナーとして最も大切にしているのは

「人の美意識を刺激すること」


です。
このイベントを通してアートに浸かり、アートの感性を養うには、自分が作っている「見えない壁」がいちばんジャマです。
年齢、階層、職種をすべて超えて、自然と積極に交わることのできるしかけをしました。

唯一、互いの共通の手がかりとなるのは、
アートだけです。

アートに対する感じ方は、上も下もありません。
つまり、正解のない世界に身を置くことで、最初はどこかソワソワするかもしれないけれど、次第に、自分の感性を遠慮なく出せる実感ができることで、「安心・安全」を感じてもらうことができます。

土地そのものがアート作品である「江之浦測候所」に一歩足を踏み入れれば、
そんな私の心配をよそに、参加者の皆さん、どんどん交わり、どんどん越境が実現し、どんどん「創発」が生まれていました。

■一流のデザイナーの視点に触れる

感性を刺激するためのしかけとして、もうひとつ用意したのは、
圧倒的な実績を誇る、現役の某メーカーのクリエイティブディレクターによる講和と談話でした。

「私にとってデザインとは何か?」
「ふだん、何を見ているのか?」
こんな観点でお話をしていただきたいと。
超・多忙な方にもかかわらず、私の厚かましいお願いを快く引き受けていただきました。

デザインセッションの様子

もともとアート・デザインに関心の高い参加者には、想定を上回る刺激があったようで、
講演が終わっての懇親会でも、非常に深いリフレクションが生まれていて、質問やポジティブコメントが矢のように降り注いでいました。

ここで私が得た知見は、
アートは固有性が高く、デザインは再現性が高いもの。
アートとデザインの分断は終わり、境界があいまいになっている。
デザイナーとして結果を出すために、「わかりやすさ」を追求するというまったく別の視点が必要。
ということです。
もちろん、他にも、うなるほどの納得をした具体例などもありましたが、トップ戦線で結果を出すクリエイティブディレクターの視点は、
マーケティングの観点がかなり強く要求されることも、よく理解できました。

■アートは「問い」、デザインは「答え」

ちなみにアートキャンプでは、私のミニセミナーもおこないました。

私はファシリテーションやコーチングを専門とするものとして、
アートとデザインの要素を、「コミュニケーション・プロトコル」(対話の規律のようなもの)として、提唱しています。

対話の目的は、協力して価値を生み出すことです。

価値を生むには、「問い」と「編集」が必要になります。
これはつまり、「アート」と「デザイン」そのものなのです。

以下は、私の解釈です。

アートは「問い」です。

  • 「これは何?」、「なぜそうなの?」。最初にあるのは「問い」から。

  • 求められるのは「ひとつの正解」ではない。

  • 鑑賞者(回答者)の数だけ答えがあり、一人ひとりの受け止め方によって、解釈は違っていて当然。

  • アートの対照にあるのは、「説得」。

デザインは「答え」です。

  • 「どうしたら問題が解決できるか?」

  • 問いに対して、答えを出すプロセス、技法。

  • デザインは、一見無秩序な状態から、秩序を見出していく視点。

  • あいまいなものの中に、「意味」を見出す「編集」、つまり「価値創造」の技法。

何人もの参加者の方が、この説に「納得!」のコメントをいただきました。

つまり、価値を生むためには、最初にどんな「問い」を立てるかが大切だと思うわけです。

■誰もが感じる「アート鑑賞は疲れる」の理由

二日目は、あの「ポーラ美術館」です。


おりしも「ピカソ展」が開催中。
前日にちょっと体験いただいた、「VTS」(対話型鑑賞法)を使って、どっぷりとアートの世界に浸っていただきました。


やはり、というか。
私自身も、参加者の皆さまも「アート鑑賞は疲れる」という実感を持ちました。

これはつまり、私たちが日常、いかに「正解ばかりの世界に生きているか」ということが証明されたわけでもあります。

ちょっと探せば、正解が出てくる。
ちょっと頑張れば、問題が解ける。
そんな問題ばかりを相手にしている私たちは、「正解のない対象物」ばかりと向き合い、「自分はどう思うのか?何を感じるのか?」と問われるわけです。

それは、とうぜん疲れますよね。

つまり、ここでこのアートキャンプの目的は、果たされたということになります。

正解のない答えに向き合うことは、もはや日常にどんどん浸食してきています。

アートに触れ、デザインの視点を学び、みずからの目と頭と体を使ってアウトプットする。

爽快な疲労感と満足感。
参加者のみなさま、大満足で帰途につかれていました。

今回は『第2回アートキャンプ』の内省をつづりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<今週の箴言>
幸福は物事の味にあって、物事そのものにあるのではない。

ラ・ロシュフコー

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