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新社会人へ「上の世代との”折り合い”とは」

こんにちは。

春らしい陽気です。
この度、地元 飛騨高山での講演を行わせていただきました。
「新就職者 歓迎のつどい」です。
コロナ禍において200名規模のイベント開催を決行した、市の方々にとって
相当なご苦労もあったことと思います。

そして私が今回、こんな時代だからこそ新社会人の皆さんに伝えたかったこと、ちゃんと伝わっているとうれしいです。

今回のコラムは、その一部をシェアさせていただきます。

若手が上の世代と折り合いをつけるとは、どういうことなのかをお伝えします。


■あのアニメにも出てきた『相補性』とは

「相補性」(そうほせい)
という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』でも、登場人物によってこの言葉がときどき使われていたので、
もしかしたら聞いたことはある、くらいの読者もいることでしょう。

「相補性」というのを極めて簡単に説明すると、
「まったく性質のことなるものどうしが、相互に補い合うことで、ひとつの体系を形づくる」という概念です。

今からおおよそ100年前に、デンマークの物理学者であるニールス・ボーアによって提唱されました。
量子のレベルで「お互いに補い合うことが自然の成り立ち」として提唱されたということは、この概念は、
世の中の成り立ちそのものについて、本質をズバリ言い当てているのではないでしょうか。


■人との関わりは断てない

人はひとりでは生きていけない、という言葉は昔からよく聞きますね。
生涯、誰とも関わりを持たないで生きていくことは、現実的には不可能でしょう。

実際に現実社会で、自分という存在を確認するには、他の誰かと関わりを持たなければできません。
ときには、それがわずらわしいと感じたり、放っておいてほしい、好きにやらせてほしいと思ったりすることもあるでしょう。

でも、生きている限り、私たちはこうした関係からは逃れることができません。
人の悩みの9割は人間関係にある、と言われるゆえんです。

若い世代は、ともすると、その上の世代のことをとかく煙たがる傾向があったりします。
「時代錯誤」、「考えが古い」、「昭和の価値観」、あるいは、
10代のシンガーが「うっせーわ」と歌った言葉に代表されるように、上の世代のことを突き放すような感覚が強く出るときがあるのではないでしょうか。

でも、この相補性という概念を本当に理解すれば、次の真実がわかってきます。つまり、

上の世代をはじめ、価値観の違う人などに対して突き放したり、
放っておいてほしいというスタンスをとったりすることが、
じつは、そもそも不自然な行為だということです。

簡単に言えば、
自分一人で存在しようとすること自体が成り立たないのです。

おおげさかもしれませんが、相補性という概念から発展させて考えると、こういうことが言えるのではないかと思うのです。

万物は、個体では存在しえない。
この世のあらゆるものが、何かしら他の存在と関わり合いながら、成立している
」と。


■ダイバーシティの本質

これはつまり、「多様性(ダイバーシティ)」の本質的な考え方です。
多様な特性や価値観を持った存在どうしが、互いに影響し合いながら成り立っているからこそ、
この世界は今のありようにいたっているのです。

さまざまな存在どうしの影響のうえ、絶妙なバランスで世界が成り立っていると言えますね。

やや壮大なお話になりましたが、視点を私たちの足元に戻してみましょう。
お互いに補い合うこと(相補性)がダイバーシティの根源をなす考え方だとすると、私たちがやるべきことはたいへんシンプルです。それは、

価値観の違う人、特性の違う人たちと、あえて手を組むべきだ
ということです。

手を組むとは、相手のことを受け入れ、自分のことを受け入れてもらうことを通して、お互いを補い合うという意味です。
さらにそこから、
ひとりでは生み出せなかった、新しい価値を生み出すこと
を意味するのです。

いかがですか。
相補性という考え方から、私たちが人間関係においてとるべきスタンスが見えてきましたね。

たしかに、同じ個性、同じ価値観どうしの人たちの方が、居心地は良いし、余計な摩擦が埋まることもありません。
が、新しい価値は生まれるでしょうか。


■異なるものどうしだからこそ価値が生まれる

異なる個性、異なる価値観が触れ合うからこそ、お互いの違いに目が行く。
そして、その違いから、かえって自分のことがわかり、相手のことがもっとわかる。
お互いに、自分にはなかった視点を手に入れ、歩み寄る。
そして、さまざまな相補を通して、調和を目指す。

こうした「能動的な補い合い」があるからこそ、新しい価値は生まれるのです。
まさに、相乗効果(シナジー)という効果は、こうして発生するのですね。
これが、俗に言う「ダイバーシティ&インクルージョン」の原型だと言えます。

前置きが長くなりましたが、ここまでのことが理解できれば、次のことはストンと落ちると思います。

「新しい世界を見たいなら、上の世代と折り合いをつけましょう」、ということを。

折り合いをつける、というのは、相手を突き放すことではありません。
かといって、すべてを受け入れてマネすることでもありません。
上の世代の人たちが言っていることも、たしかに一理あるな」という感覚を大切にすべき、ということです。

もともと苦手だった人や、合わないなと思っていた人たちと、こうした折り合いをつけ始めると、面白いことが起きます。
それは、相手について、今までまったく気づかなかったこと、むしろ、見ないようにしていたことが、気づいたり見えたりするようになります。
相手を、新鮮な目でとらえることができるようになります。

これが、“相補”の、第一歩です。
すべてをはねつけるでもなく、すべてをマネするでもなく、ただ、折り合いをつけるというスタンスを貫きましょう。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◆◇◆ 今週の箴言(しんげん)◆◇◆
(ラ・ロシュフコーより)

われ自身がいだいている自信が、
他人に対する信用を芽生えさす。


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