新社会人へ「それは、あなたのせいじゃない」
こんにちは。
いわゆるZ世代の活躍ぶりが、社会の期待と注目を集めていますね。
統計によれば、世界人口の比率でいうと、
ビジネスで影響力を持つといわれているX世代の人口が27%に対し、
Z世代はすでに32%に達しており、
すでに人口だけで見れば、一大勢力となっているのがわかります。
先日は、そんなZ世代と言われる新社会人の方々に講演をさせていただきました。
今回は、そこで少し触れた、「責任」というものについて、少し詳しく話していきます。
■「他人のせいにしてはいけない」と言うけれど
「ポストが赤いのも自分のせい」
有名な経営者が、おっしゃっていました。
若い頃の純粋だった私は、この言葉に触れたとき、こう思いました。
「世の中のすべてのことを、自分の責任にしてしまうとは、すごい覚悟だ。
そうやって腹をくくればこそ、偉大な経営ができるんだな」
世の中、ビジネスにかぎらず、
一般的に「他人のせいにするな。まずは自分の責任として考えなさい」
と、よく言われます。
それは「他責」といって、自分の責任を逃れるためにやることで、
逃げであり、卑怯である、と。
日本人の美徳に反する行為だ、と。
私も社会に出て、そう言われてきましたし、人にもそう伝えたことがあります。
しかし、人材開発という仕事に関わるようになってしばらくすると、
こういうタイプの人たちがいることに気づきました。
「私の力が足りないから、こうなりました」
「もっと私に能力があれば、うまくいったはずなのに」
「私のせいで、こんなことになってしまった」
たいていはまじめに仕事をしているビジネスマンです。
私から見れば、しっかり仕事をし、上司の機嫌もとり、部下の面倒も見られています。
なのに、こうして過剰なまでに自分を責めに責めるのです。。。
■過剰な「自責」がまねく不幸
「他責はいけない。自責こそ美徳」
この概念の正しさというのは、これまでに検証されたことがあるのでしょうか?
最近、はなはだ疑問を感じていいます。
たとえば、
ポストが赤いことは、はたして本当に私のせいなのでしょうか?
一国のリーダーが、リーダーシップをとれないのは、本当に私のせいなのでしょうか?
上司がむちゃぶりの仕事ばかり振ってくることは、本当に私のせいなのでしょうか?
お客様が怒ったことは、本当に私のせいなのでしょうか?
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
よくよく考えてみてほしいのです。
日本では、この概念がうまく検証されないまま、「美徳」と位置付けられてしまいました。
特にそれは、大きな影響力を持つ、カリスマリーダーから放たれる言葉だけに、
さらに「美徳」に拍車がかかってしまったように思うわけです。
■あなたのせいじゃないこともある
ハッキリ申し上げて、ポストが赤いのは、あなたのせいじゃありません。
日本郵政が決めたことなので、あなたには関係のないことです。
こんなことは、検証するまでもなくわかります。
Z世代の皆さん。
こういう詭弁(きべん)を、ちゃんと検証する目をもってください。
世の中では、詭弁をもって人を惹きつけようとする人のことを、「詐欺師」と呼びます。
ポストが赤いのは自分のせい。
道端にごみが落ちていることも自分のせい。
隣家の人がうるさいのも自分のせい。
こんなことをいちいち自分のせいとしてかかえてしまったら、
通常のメンタルを持つ人なら、半年で壊れてしまいます。
これは、「美徳」ではありません。思考停止なのです。
上司が無茶ぶりしてくるのは、
もしかしたら、上司が無能なのかもしれません。
もしかしたら、会社のどこかのしくみに問題があるのかもしれません。
■ほとんどのことは自分のせいではないけれど
もう少し踏み込んで説明するなら
「ポストが赤いことが、もし自分と何か関係があるとしたら、それは何でだろう?」
こんな風に考えてみるのは、ゲームとしてはあり、です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という昔話のように、
世の中には「バタフライ・エフェクト」という不思議な現象が実際にあるわけで、
その関係性について探っていくとすれば、
それはむしろ、人間の好奇心を満たすロマンだと思います。
が、どうしても、日本ではそこまで説明してくれる人はいません。
ですから、私は若い世代の人たちに言いたいのです。
私たち(ミドル~シニア)の言うことを、信じすぎるな、と。
繰り返しますが、
詭弁によって人を惹きつけようとする人のことを、詐欺師といいます。
あなたのその目で何を見て、何を信じるか。
前回コラムの「反省しなくて良い」でお伝えしたように、
検証するスマートさを持ってください。
自責もほどほどに。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◆◇◆ 今週の箴言(しんげん)◆◇◆
(ラ・ロシュフコーより)
われ自身がいだいている自信が、
他人に対する信用を芽生えさす。
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