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「用はなくても連絡しよう」リモートワーク時代の部下へのかかわり方

こんにちは。
真夏のように暑い日が続きますね。

それにしても世間では、あっという間に、リモートワークが一般的な働き方になりつつあります。
それにともない、オンライン会議、オンライン1on1、オンライン飲み会..などなど、コミュニケーションの在り方も急激に変容していますね。

ある記事によれば、本国アメリカで、Zoomたった 1社の資産価値が、航空会社7社の合計を上回ったとのこと。
私もzoomはフル活用していますが、それほど世界中で、働き方、コミュニケーションの取り方が、いっせいに変容を迫られているのですね。

特にこの2カ月で私に寄せられる相談内容も、「リモートワークの能率を上げるにはどうしたら良いか?」
に関わるテーマが非常に増えています。

そこで今回は、リモートワーク時代となった今、企業で発生しつつある「新しいタイプのリスク要因」について、整理してみたいと思います。

リスク要因とは、
「放置すれば、いずれ必ず事故やトラブルにつながる、見逃されやすいサイン」のことです。


■リモートワーク時代の4つのリスク要因■

その1)独りよがり

その2)短距離走

その3)抱え込み

その4)閉鎖思考


それぞれに、解説と対策を補足していきます。

その1)独りよがり

言い換えると「勝手な自己判断」とも呼びます。

リモートワークとは、「ひとりで仕事をする」と同義です。
仕事で判断に迷ったとき、上司や同僚が隣にいれば、迷わず気軽に声をかけることができますね。
しかしリモートワークにおいては、コミュニケーションはオンラインとなります。
気軽に相談はできず、まず思うのが「こんなことで、上司の時間を邪魔するのは悪いかな」といった気遣いです。

相談をしようと思っても、「何時くらいなら手が空くか?」「方法は、電話か?メールか?zoomか?」など、とにかくひと手間もふた手間も、間に挟まないといけない煩わしさが生まれます。
そのうち、「ああ、もうめんどくさい」「もういいや。これくらい、自分の判断で」と思い始めるわけです。

最初は、小さな自己判断かもしれません。
ところが、人は知らず知らずのうちに、判断の許容範囲を広げていくものです。
自分では小さな自己判断だと思っていも、それが続くうち、やがては明らかに大きな判断であるはずのことを、勝手に下しているということに、連鎖するのです。

これは、本人にそのつもりがなくても、周りから見れば「独りよがり」ということになります。


その2)短距離走

ある有名な企業の経営者がインタビューに答えていました。
「リモートワークにも一長一短がある。
短所は、新しいビジネスが生まれにくいことだ。
今までなら、顔を突き合わせてアイデアをぶつけ合い、喧々諤々の議論をやり、そこである程度の意思決定がなされてきた」

リモートワークは、孤独になりやすいという特徴もあります。
そして、たいてい孤独の中で仕事をしていれば、こう思うかもしれません。
「自分は結構忙しい。たくさん仕事をしている」と。

たしかに移動時間が削減できたおかげで、仕事の量はこなせるようになったことでしょう。
たくさんの打合せに出られるし、多くの仕事を自分の時間配分ですることも可能です。

しかし、私が2カ月ほどかけて企業のヒアリングをしたところ、多くの社員の仕事ぶりに欠落しがちだったのは「長期的視点」です。
「この仕事が何につながっているのか?」
「今やっているこの仕事は、将来の会社にどれくらいインパクトがあるのか?」
という視点が、抜けがちになってしまっている、ということがわかりました。

目の前の仕事、目の前の作業をこなすことで、いつの間にか充実感に満たされていて、
その先の、自分自身の能力開発、会社の成長に、目が向いていない傾向が強くなっているようです。

言葉を選ばずに言えば、
部長も課長も、皆そろって仕事でなく「作業」しかしていない、
と言えなくもないのです。

これは、たいへん恐ろしいことです。
「誰もかれもが、将来のメシのタネを撒いていない。しかも、それに気づいていない」
ことにもなりかねません。


その3)抱え込み

いちいち上司にオンラインで相談をするより、自分で勝手に判断する「独りよがり」とよく似ています。

チーム内の情報共有の機会が激減し、自分から働きかけない限り、上司からも特に連絡がこない。。。
こんな状況は、「抱え込み」。
つまり、情報の抱え込みを生みます。

相談することが億劫になり、小さな問題にフタをしていくうちに、
いずれそれらが肥大化し、気づいたときには手遅れ。
手のつけられない事故やトラブルとなって発覚する。

「なぜもっと前に言ってくれなかったんだ?」
という上司のセリフがとうぜん聞こえてくるでしょう。
しかし、そういう上司が、部下の仕事ぶりを気にしていないから、責任は上司にもあるのです。


その4)閉鎖思考

実際にあったのですが、最近、私がある方とオンラインで朝、仕事の打合せを始めたときのこと。
画面の向こうで、なんだか締まらない表情をしていたお相手に、苦言を申し上げたことがあります。

「もう10時ですよ。リモートワークが始まって、いったいどんな生活パターンに変えてしまったんですか?」

孤独なリモートワークは、基本、時間の使い方は自分の裁量で決めることができます。
こうなってくると、セルフマネジメントができない人はどうなるか?
「楽な選択」しかしなくなります。

これまでは「人の目があるから」やっていたルーティンや課題を避け始めます。
自分がいちばん心地よい生活パターンを作り上げ、ズルズルとそっちに乗り換えるのです。
まるで、夏休みに入った学生のようです。

自分の裁量で決められるので、気分が乗らなければ、
人に会うこともない。
セミナーに行くこともない。
本を読むこともない。

とにかく、情報という刺激に触れることがなくなる。。。

するとあっという間に、「圧倒的なインプット不足」に陥ります。
インプット不足というのは恐ろしいもので、その人の思考を錆びつかせます。
成長を止めるのです。
成長が止まった人は、周りから見れば「価値を失った」、「魅力がなくなった」と等しいことになります。

例えばSNSなどに、毎日自分が見たテレビ番組やオンデマンドのプログラムの感想ばかりupしている人がいるとします。
こうした時間を持て余すタイプの人を見て、私ならこう思います。
「ああ、ヒマな時間をヒマなままで終わらせる人って、もったいないな」と。

人間の魅力は、その人が成長しようとするエネルギーから生まれます。

リモートワークは、セルフマネジメントができないタイプの人たちにとっては「蜜の味」がするのです。
ですが、それはじつは「蜜に見せかけた毒」だったりします。
じわじわとその人から魅力を削りとり、凡庸な人に仕立てていくのです。

ということは、一方で、猛烈にインプットを続けている人も一方ではいるわけで、そんな人たちとの差は埋めようもないほど開くというのも、このリモートワークがあぶり出す事実のような気がします。

刺激とは、情報です。
オンライン上には、無数の「学び」の機会が存在しています。
ここに目を向けない手はありません。


■対策について■

ここまでのリスク要因を見てくると、基本となる対策はたった1つしかありません。

リモートワーク時代は、
用はなくても、連絡する
という、上司からの働きかけが必須です。

リモートでない勤務形態のときは、
「用があれば、相談して」
という、部下からの働きかけができました。

ところが、それはもう現実的ではありません。

ちょっとした疑問であっても、
上司に時間の調整をお願いし、
連絡できる環境を整え、
上司に連絡する、
なんてことを、わざわざ部下からするでしょうか?
実際は、難しいと思います。

つまり、リモートワークだからこそ、上司からの働きかけるコミュニケーションの機会を増やさなければいけません。

「用はなくても連絡する」ことによって、例えばこんな効果が確認されています。

・事故やトラブルを未然に防げる
つまり、小さな変化や予兆に、上司が気づき、適切なサポートが可能になります。

・仕事の優先順位をブラッシュアップできる

つまり、自己流になっていた仕事のやり方を、チームの生産性という視点に引き上げて、組みなおせます。

・上司のことを理解してもらえる

部下からはとにかくこの時期、会社や上司が何を考えているか見えません。
伝えるべきこと、部下が知らないと不安なことを、共有する機会になります。


以上のような効果が、「用はなくても連絡する」ことによって期待できます。


例えばこれは、「オンライン1on1」や「オンラインメンタリング」として推進されていたりします。
「用はなくても連絡する」を、仕組み化したものです。

オンラインにはオンラインの流儀があります。

上司自身が、リモートワーク以前のやり方を踏襲しないように、心がけましょう。
それこそ、「惰性」や「勝手な自己判断」になってしまいます。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


◆◇◆ 今週の箴言(しんげん)◆◇◆
(ラ・ロシュフコーより)

真の苦行とは、まったく人に知られることのない苦行である。

そうでないものは、虚栄心によって楽になる。


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