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This is LEAN(「リーン」という概念がトヨタ生産方式(TPS)に起因している、という事実を知りませんでした。)【読書レビュ】

​ おはようございます。オオハシです。 皆さまゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。 僕の場合は、昨年同様に、気になった本をまとめ買いして、いくつかの本を読み切れました。 読むだけでなくて、レビューも書きますし、レビューを書くには二度読みもしっかりしていて、なかなか単純に読むだけでなくて時間がかかっているのです。そういう意味ではGWは読書レビュも複数蓄積出来たりして、ありがたかったです。では今週も行ってみましょう!​



This is Lean 「リソース」にとらわれずチームを変える新時代のリーン・マネジメント
二クラス・モーディグ、パール・オールストローム 著
2021年3月の本
 
 

 前回丸善に行った際に、平積みにされているものを見て、ジャケットおよびこのタイトル気になるな、と個人的な気になる本アンテナがたっていた案件なのですが、会社での書籍紹介のチャンネルにて先輩が紹介されていて「あぁやっぱ買っときゃよかった…」と思ってのゴールデンウイークまとめ買いタイミングでの調達。 リーン・マネジメントに関して、ほとんど不勉強だったのですが非常にわかりやすく勉強になる本でした。


 まえがきに以下記載あり。 「本書の目的は、シンプルにすることの美しさを明らかにすることにある。“リーン方式”に関連する用語や方法論の誤解を取り除き、「ジャスト・イン・タイム」や「見える化」などの主要原則を用いたフローの効率という基本に立ち戻り、リーンの意味を再定義する。


 自分が不勉強なことを恥ずかしいとは思っていなくて、知らなかったということを知れた、ということはとてもありがたいことだと認識していて、実はこの本を読むまで、「リーン」という概念がトヨタ生産方式(TPS)に起因している、という事実を知りませんでした。 そういう無知を知れたことは、それだけでも十分良かったし、それこそ、「リーン」な本として、理論・主張を際立たせるために、分かりやすいたとえ話や図解などを用いて「これがリーンだ。」と述べている。


 P145に、興味深い記載があり、これをいつもの抜粋よりも事前に抜粋しておきたい。

 トヨタとリーンへの関心の強さを反映して、数えきれないほどの書籍や記事が書かれてきた。2014年に出版された、タイトルに“Lean”を含むビジネス書をアマゾンで検索すると、100を超えるタイトルがヒットする。
(中略)
 突然、何もかもがリーンになってしまった。 あっという間に、これも、それも、あれもリーンになった!
 あまりにもたくさんの本が出ているので、何がリーンで何がリーンでないのか、よくわからない。リーンのことを哲学や文化、あるいは原則などのような抽象的な概念として説明する本があると思えば、働き方、方法、ツール、あるいはテクニックなど、もっと具体的なものとしてリーンを扱う本もある。誰からも受け入れられる共通の定義は一つも存在しない。今も発展を続ける一つの概念が異なるものを指すというちぐはぐな状態が続いているのだから、実務家や学者にとっては困った問題だ。

 という状況の中で、「これがリーンだ。」とすっきり述べてくださっているので、事象をシンプル化してとらえる、というところだと非常にわかりやすい、ありがたい本だと思う。 ずいぶん前に「ザ・ゴール」(およびその関連書籍)を読んで、スループット理論は概念として理解できていたので、『フロー効率に注目』という観点は自分としては考え方の軸ができていたので受け入れやすかった。
 日本での書籍にも「トヨタ生産方式」関連の本はたくさんある中で、逆輸入的にこうした本を知らされることは、また新たな知とのめぐりあわせ、ということでこれもまた興味深い。

 すぐに並行して、「みんなでアジャイル」も読んでいて、すごくなるほどなるほどとなりました!(その話はまた次回)



以下、改めまして抜粋引用となります。 
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○P128
 トヨタの物語で最も重要な点は、同社はリソースが不足していたため、フロー効率を重視する生産システムを開発せざるをえなかったことにある。リソース不足がトヨタの目を顧客に向けさせた。トヨタは生産プロセスのすべてのステップを内部顧客およびサプライヤーとみなすことを通じて全体像を把握した。生産プロセスのすべての部分が一本の鎖としてつながっているのである。
 顧客の注文の流れに逆らう形でプロセス全体に伝えられ、注文通りの製品が下流に向かって引き出される。目標は、フロー効率を最大限にすること。つまり、注文から納品と支払いまでスループット時間のどの瞬間においても、付加価値がもたらされるような形をつくることだった。
 トヨタの生産プロセスはフロー効率が高かった。このトヨタの生産プロセスを、西側諸国の人々が「リーン」と名付けたのである。

なるほど!これが「リーン」か!となりました。

○P133
大野は規模の経済と大量生産を否定し、生産性とはフローを通じて生み出される、という立場を維持した。
 「私たちがやっていることといえば、顧客が注文した瞬間から私たちが現金を受け取るまでのタイムラインを見ることだけだ。そして、付加価値をもたらさないムダをなくすことでタイムラインを短縮する

ムダをなくす、という表現から「リーン」が導き出されますよね。
(ムダ:ブルシットジョブだったりする…)

○P190
 ひとことで言うと、リーンとはリソース効率よりもフロー効率を優先するオペレーション戦略。言い換えるなら、リーンは効率性マトリックスの右上に向かって移動するための戦略なのである。

ほんとにひと言で言っていて、まさに、「This is LEAN」だ、と思った記載。


○P202
 「リーン」とは、トヨタの効率的な働き方を見た西洋の研究者が使った言葉に過ぎない。トヨタがフロー効率を上げるために用いた手法がほかの環境でも有効だとは限らないという点は、しっかりと頭に入れておこう。リーンオペレーション戦略をどう実現するかは、文脈によって異なる。ある組織や環境で有効だったソリューションが、ほかの組織でも有効だとは限らない。
 私たちは、リーンをオペレーション戦略として定義することで、リーンはあらゆる組織が選択できる戦略であることを示した。フロー効率を高めることで、あらゆる環境の組織が恩恵を受けられるだけでなく、長期的にはリソース効率も上がるに違いない。それが自分の組織に望ましいことなのかどうかを見極めるためには、ビジネス戦略を見直したうえで、「我々はどんな価値をつくりたいのだろうか?どう競争すべきなのか?」と問うべきだろう。

リーンをオペレーション戦略として定義することにより、リーン開発、リーンスタートアップとしての発展がされていったということですね。


○P217
 「ジャスト・イン・タイムはフローを生むことを、自働化とは目に見えるはっきりとした像を得ることを意味しています。それにより、フローを起こしたり、妨げたり、せき止めたりするものすべてを、すぐに把握できるようになるのです。この二つの原則は一枚のコインの表と裏であり、両面がそろってはじめて、つねにしっかりと顧客に目を向けて“ゴールを決める”ことができるようになる」

西田氏という架空の人物が外国人研究者にレクチャするシーン。「しっかりと顧客に目を向けて」という表現が印象的。 ちょうど同様な内容の記事を本日別のサイトで見てびっくり。 こちらも抜粋引用。


機能しているチームでは、立場や状況の異なる人たちが、それぞれの見たもの、感じたことをオープンにし合うことで補完関係を成立させています。視野が広いことは優れた選手の条件ですが、360度を常に把握することは不可能なのです。
 今回はサッカーを例にご説明しましたが、もちろんラグビーでも同様です。同じ1つのシーンを切り取っても、チャンスと感じる選手もいれば、ピンチを予測する選手もいることでしょう。置かれている立場、心境、視野、視座、視点が異なれば、すべてが大切な情報になるのです。より正確に全体像を把握しなければ、納得解には辿り着けません。だからこそ、皆が口を開くこと(=コミュニケーションを図ること)が大切なのです。


さて、読書レビュに戻りましょう。

○P223
 「我々の価値観が、状況や文脈に関係なく、我々がどうあるべきかを決める。価値観が我々の存在の根拠であり、つねに追い求めるべき状態となる。我々の原則が、我々がどう決断すべきか、何を優先すべきかを決める。ジャスト・イン・タイムと自働化がどちらの方向へ事業を発展させるべきかを決める。顧客の方向へ!木を美しくするほうへ!メソッドはさまざまなタスクを実行する方法。我々を正しい方向へ推し進めるモーターなのです。特定のメソッドを実行するために、もたねばならないものがツールで、しなければならないことがアクティビティ。一つのシステムの中で、すべてが絶え間なく細かく結びついて、我々のビジネスがとても美しい木になるよう育ててくれる」

「価値観」「原則」「メソッド」「ツール」「アクティビティ」とストーリーテーリング形式で、理解を深めていってくださいます。

○P227 
 TPSやリーンについて書かれた書籍の大半で、リーンオペレーション戦略を実践するのに役立つ素晴らしい手段が数多く提案されている。それら既存の文献からも学ぶべきことがたくさんあるのは明らかだ。
 しかし、この点は大切なので強調しておくが、そのような文献で紹介されている価値観、原則、メソッド、ツールはどれも、それ自体はリーンではないのだ。それらはリーンオペレーション戦略を実現するための手段である。手段だからといって、価値がないわけではない。実際にはその逆だ。
 価値観、原則、メソッド、ツールのすべてを手段とみなすことで、私たちはすべてが結びついていると理解できるようになる。

それ自体はリーンではない、手段だからといって価値がないわけではない、とズバッと言い切ってくださるところはありがたい。他の書籍も並行で読んでいるから、すごくよく理解が深まる。

○P230
 ジャスト・イン・タイムとは、組織全体を通じて効率的なフローをつくることを意味している。一方の自働化は、フローを妨害したり、乱したり、遅めたりするありとあらゆる要素を見つけ、防ぎ、排除する力を持つ“覚醒した”組織をつくるということ。

二つの原則をスッキリ伝えてくださってますよね。自働化についても。(とにかく顧客からスタート、フロー効率を重視、仕組みとしての自働化⇒ムダ取りという観点にて理解しました。


○P239
 リーンとは、到達すべき静的な状態ではないのである。いつか完了するものではない。リーンとは動的な状態であって、絶え間ない改善を特徴としている。

この最後の文脈も重たいですよね。 しかしながら、本当に継続的改善のメッセージが伝わってくる。 リーンに関して、すごくよく勉強になったし、いろいろワードが飛び交っている中で、また新たに勉強になった、という印象が強い。非常にありがたかった書籍でした。


最後まで読んでい頂きありがとうございました。いつものブクログレビューもつけておきます。


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