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『アナと雪の女王』が謳う「真実の愛」とは何だったのか?

今、僕たちが生きようとしている「多様性」の時代。

この数年間で、世界中で急速にパラダイムシフトが進んでいる「きっかけ」や「背景」について、きっと様々な観点や文脈から語ることができるのだと思う。

ポップ・カルチャー/エンターテイメントの観点から振り返ると、2010年代前半、そのターニングポイントとなったであろう作品をいくつか挙げることができる。

その中でも、世界に最も鮮烈なインパクトを与えた作品が、『アナと雪の女王』であることに異論はないのではないか。



それまでにもディズニーは、『ムーラン』や『プリンセスと魔法のキス』を通して、新しい女性像の確立を目指して模索を続けてきた。

しかし、アナとエルサという「2人」のプリンセスの視点から語られる物語は、複層的なテーマを内包するという意味で、やはり圧倒的に新しいものであった。

運命のプリンスに「選ばれる」ことによってこそ、初めてハッピー・エンドを迎えられる。そうした既存のディズニー・プリンセスの物語たちによって輪郭を与えられた「幸せ」を、『アナと雪の女王』は、相対的に批評してみせたのだ。

この物語のクライマックにおいて明らかになる「真実の愛」。それは、運命のプリンスから授けられるものではなく、アナとエルサの間に育まれてきたものであった。

その新しい時代の幕を開ける魔法は、決して、姉妹の絆だけではない。母親としての生き方や、LGBTQの居場所。ここで語られているテーマは、非常に多岐にわたっている。この物語は、その全ての在り方を相対化することで、あらゆる「僕」と「私」の新しい「幸せ」の形を認めるのである。(そして、ディズニーの「多様性」を希求するための表現活動は、次作『ズートピア』において、最も美しい形で結実する。)



何より特筆すべきは、そうしたメッセージに圧倒的な説得力を与えてみせた「音楽」の力だ。

この全く新しいディズニー・プリンセスの物語は、その音楽が鳴らされた時、「クラシック」としての評価を約束されたといってもよいだろう。

「多様性」が、この世界における真のスタンダードになるまで。

『アナと雪の女王』は、これから先も、僕たちの道標としての役割を果たし続けていくのだと思う。



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