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踊り場のトイレ問題

出不精のため、外に出た時は階段を使うことにしている。

先日買い物をして、ビルの階段を降りていたときのことだ。

ベビーカーを押した女性が、階段の前で立ち止まっていた。何とも悲壮な表情である。
このビルは各階の階段を繋ぐ踊り場にお手洗いがある。そして「みんなのトイレ」といわれるユニバーサル仕様のものはない。
ベビーカーを押して入れるトイレを脳内で検索しているうちに、女性がベビーカーに向き直って、言語未習得であろう小さな連れに向かって、「ここでいいこで待ってて」と言い出した。

「見てましょうか」

「いいんですか!!」

女性は安堵の表情を浮かべて、すぐ戻ります!と階段を駆けていった。

言葉の通じなさそうなおちびさんから適度な距離を置き、考える。

隣のビル…も、踊り場方式でバリアフリートイレがない。
駅のそば…数が少なく混んでいて、やはりベビーカーと一緒には入れない。

はてどこなら可能だっただろうかと近隣の地図を思い浮かべて、はたと気付く。

駅のこちら側のビルは、踊り場方式のトイレが多い。
車椅子を使う人はもちろん、今回のようなベビーカー連れの大人が1人でいた場合も使えるトイレがかなり少ない。

「う、う〜」

おちびさんがぐずりはじめたので、適切な距離を保ったまま「すぐ戻ってくるよ」と話しかける。「いい子で待ってようね」

私ならベタベタ触られたくないので、すぐ動ける距離で危険がないようにおちびさんを見ている。

そうしている間に女性がダッシュで戻ってきた。

「ありがとうございました!」

いい子にしてましたよ、と返して颯爽と立ち去った。

踊り場のトイレにどういった建築的なメリットがあるかはわからないが、足の悪いお年寄りも訪れるビルにこのような問題があることに初めて気がついた。
再開発でもされない限りすぐには建て替えられないだろうこれらのビルが、多様な事情を抱えた利用者を静かに無視している。

子育てしやすいまちづくりとは何なのか。
バリアフリーだの多様性を認めようだの言う前に、足元を見直すべきではないのか。

そんな気付きのあった午後だった。







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