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羅生を抜ける

羅生を抜ける

もう何ヶ月。誰かと口を利くこともせず、部屋は安酒のウイスキーの空瓶がいくつも横に縦に床を埋めている。

金を稼ぐのに使ったきりのPC、身を立てられないまま放ってあるギター、そして独りの男が手をのばす煙草はそんな日常と付き合う、ただ一時の慰安であった。

目の前に迫ってきていた。彼は彼の世界に追われ、生きることを選んでいる自分を省みて答えを出そうと躍起になっていた。

五感の情報が更なる情報を引きよ

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ぱふぇちゃんち① - いかでちょっと -

ぱふぇちゃんち① - いかでちょっと -

あひるのガー子の連隊と鶴巻温泉の湯舟に、ぱふぇちゃんは痒いところをジェット水流で攻撃している。

「ぼこっ」
「いやだ~」

…お椀、赤頭…、おじさん?
「キャー!!」

「あ…。デバガメでしゅね…」
「ガーッ(見ちゃだめ!)」

にんぎょの魔法、ぱふぇちゃん透視「骨格がないし…きっと地球外生物でしゅね…」

…女たちは、顔を見合わせて「イヤーねー」とひとしきり騒いだ後の何事もなかったかのように静

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ブッテ

ブッテ

ブッタよ、涅槃(ねはん)で待つな、ご飯を待て。

星屑ダンプカー國男(第一回)

「チーッ!」
「チーッ!」
石澤國男(いしざわくにお)が転がす、星屑集積会社「スターダストロード」のダンプカーのエアークラッチが響く。ハシシを咥ながら、今日も「星の下北」「男の星道」「無限一番」の行燈を灯して、ミルキーウェイを光速100c、≒3000万キロメートル毎秒でぶっ飛ばし、アンドロメダダストステーションまで週一回、水曜日の休日以外は毎日星屑を納めに行く。

國男は、西暦1971年9月8日、

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江戸ライダー 聖徳太子怪人 徳ちゃん篇

江戸ライダー 聖徳太子怪人 徳ちゃん篇

「ちゅうちゅうたこかいな」
「インデアンのふんどし」
「だるまさんがころんだ」
「インド人のくーろんぼ」
「くるまのトンテンカン」
「へいたいさんがとおる」
「ぼんさんがへをこいた」

強迫性障害の病状が悪化した、聖徳太子の生まれ変わり、徳ちゃんの強迫行動は、「数を何度も数えてしまう」なため、健は、こうした言葉をグーグルで検索して彼に教えてやった。
徳ちゃんは質屋のひとり息子で、どうしてもカネの勘

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抜忍 くノ一 イムカ ~日本篇~ 零の巻

抜忍 くノ一 イムカ ~日本篇~ 零の巻

零ノ巻「奥州(おうしゅう/みちのく)・故郷 陸奥國(むつこく)」

陸奥、國津軽郡「津軽藩」、戦国時代、永禄拾弐年、初代藩主、「大浦(津軽)為信(おおうらためのぶ)」に仕える隠密「早道之者(はやみちのもの)」の前身、下忍、くノ一「イムカ」は、今宵も忍務遂行の為の下準備に余念が無い。忍具、苦無(くない)に鳥兜(トリカブト)の「附子(ぶす)」球根の周りに付着している「子供」の部位と、南蛮(唐辛子)を調

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江戸ライダー 怪人スペースオクトパス篇

江戸ライダー 怪人スペースオクトパス篇

宇宙暦∞年。故郷ポコペン惑星から、スペースオクトパスがお椀に乗って銀河を漂っていた。
「いっい湯ダナー、ははは~ん」
「いっい湯ダナ~、はははん」
風体は目玉オヤジではない。青、ごきげん、黄、キレンジャー、赤、萌え、に体色を変化させる、皆様ご存知、九本足のタコである。その辺にホラホラしているタコの輩には無い、生まれつきの九本目は、何かカリスマ性のある神秘的な謎がありそうだ。
串団子が好物で、食べ終

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はがた美人

はがた美人

玄海灘の、はがた船に揺られ、塩見滅子(しおみめつこ)は悦に浸っていた。自分より綺麗な博多美人ばかりの職場である。男たちが、我先にとそんな女をモノにしようと鎬を削っている。宴会の場で、自分は漫才。気負いをしない笑いを取る役柄。いつしか慣れっこになっていた滅子は、浮かれ気分で、同僚たちと鯛の活け造りなんかを突きつつ、「庭のうぐいす 純米吟醸」を飲り、バカ騒ぎをしていた。

「ビューツ!ビューッ!」
西

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錦鯉の宇宙(そら)

錦鯉の宇宙(そら)

秋の夜長。天高くかけるペガスス座や、アンドロメダ座、ペルセウス座、うお(魚)、おひつじ(牡羊)、カシオペヤ、くじら(くじら)、ケフェウス、けんびきょう(顕微鏡)、こうま(子馬)……。

うお座は、(魚座、Pisces)は、黄道十二星座の1つ。トレミーの48星座の1つでもある。
うお座は黄道十二星座でありながら、3等星より明るい星がなくあまり目立たない星座である。
ペガススの大四辺形のちょうど南で、

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