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マガジン

  • 捕獲の安全 野生動物の安全な取り扱いのために

    野生動物の取り扱いについて、各分野の専門家による書をまとめた書籍。 「捕獲の安全 野生動物の安全な取り扱いのために」 編著 竹田 努 2019年3月1日 発行

最近の記事

野生動物取扱時における健康・安全管理のあり方

原口義座 京葉病院外科 千葉丈司 千葉メンタルヘルス研究室 ■ 医療面からみた野生動物との付き合いはじめに私は狩猟を経験したことがないが,現在に至るまで「災害医療」には深く関与してきたこともあり,現在は「産業医」として働いている.ちなみに今まで携わった現場は,古いものから1974年三菱重工爆破事件,1995年阪神淡路大震災とオウム真理教東京地下鉄サリン事件,1999年茨城県東海村JCO臨界事故,地震災害としては2000年以降の大きなものはほとんど全てである.そこで自分の経験

    • 捕獲は山で行う 山の危険と対策

      吉田和夫 諏訪赤十字病院 鏡視下手術センター長 呼吸器外科部長 国内認定山岳医 ■ 狩猟事故の半分は滑落?狩猟は登山と同じ狩猟を含めて,山で野生動物を捕獲する際に,自分が「登山同等の行為をしている」という意識をする人がどのくらいいるのであろう.巻狩で,勢子をやりながら,道なき急傾斜を上り下りする.登山以上に危険な状況になることを意識しているだろうか.では山に入った場合の危険についておさらいしてみたい. まず登山で起こりうる事故は,「滑落」である.夏山の登山道であっても浮石な

      • 捕獲業務における法律

        竹田 努 宇都宮大学雑草と里山の科学教育研究センター ■ 関連法規の整備と課題鳥獣関連の法律鳥獣捕獲に関する法律は主に以下のとおりである. 1.鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 (鳥獣保護管理法)   (ア)鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行令    ①鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則     1.鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための       基本的な指針     2.鳥獣による農林水産業等に係る

        • 電気を使用した捕獲個体の処理

          末松謙一 株式会社末松電子製作所 代表取締役社長 ■ 電気止め刺し器とは電気による止め刺しの背景2019年現在,全国の鳥獣被害は依然として高い水準(図1)であり,全国の農業者の営農意欲の低減や,それに起因する離農などにより耕作放棄地の増加など,その影響は全国的に深刻な状況となった.農業を地場産業としている全国の各市町村においては,農業農村の基盤を強化するためにも,獣害対策は農村の重要な課題である.また,東日本大震災や福島第一原発事故により避難した多くのエリアでは,営農再開を

        野生動物取扱時における健康・安全管理のあり方

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        • 捕獲の安全 野生動物の安全な取り扱いのために
          8本

        記事

          狩猟と銃

          小堀ダイスケ 猟銃研究家・狩猟ライター ■ 狩猟に使われる銃の種類空気銃狩猟に使われる銃は,「空気銃」「散弾銃」「ライフル銃」の大きく3種類に分けられる.空気銃とは,その名の通り圧縮空気の力によって弾を発射する銃のことで,弾に対し約200気圧前後の圧力を掛け,銃口初速約800〜900 ft/s前後で飛ばす.英語ではAir Rifleと呼ばれ,銃身内にはライフリング(施条)が刻まれており,そこに弾が食い込んで回転しながら飛んでいく.カモ類など大型鳥類に対する有効射程距離は,最

          狩猟と銃

          野生動物の捕獲および肉利用における安全管理

          竹田 努 宇都宮大学 雑草と里山の科学教育研究センター ■ 現場は危険がいっぱい捕獲の変化野生動物の捕獲は,大きく分けて狩猟による捕獲と許可捕獲に分けられる.一般に「狩猟」と「捕獲」に分けて語られることがあるが,この場合の「捕獲」は許可捕獲をさしていると考える.環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室のまとめた「狩猟及び有害捕獲等による主な鳥獣の捕獲数」によると,イノシシ・シカについては,狩猟や有害などその他の捕獲では,1960年度から捕獲頭数がほぼ右肩上がりで増加し続けて

          野生動物の捕獲および肉利用における安全管理

          鳥獣捕獲の際の止め刺し等における安全管理について

          小寺祐二 宇都宮大学 雑草と里山の科学教育研究センター ■ 止め刺しとははじめに戦後,日本においては大型哺乳類の生息域が全国的に拡大傾向を示しており,それらによる生態系や農林水産業等への被害が社会問題となっている.例えば自然環境保全基礎調査の結果では,1978年から2003年までの25年間にニホンジカの生息メッシュ数が1.7倍,イノシシで1.3倍,ツキノワグマで1.2倍,ニホンザルで1.5倍に増加したことが報告されている(環境省 2018).また,最近の生息動向についても,

          鳥獣捕獲の際の止め刺し等における安全管理について

          はじめに

          「捕獲の安全 野生動物の安全な取り扱いのために」 鳥獣管理における問題は動物が増えてしまったことに視点が置かれがちである.だが,鳥獣害を感じているのはごくわずかな人間だけに過ぎない.不要に増産させる農産物と規格外を入荷しない市場と,耕作地を無理やり守らせようと縛る制度と,生産費に関係なく安価に取引されてしまう農産物と.これらによって,農業の魅力が忘れ去られ,疲弊した農地を広げている.そこに侵入する動物たちが,どれだけ暴れようと国民のほとんどは関係がない.そこで国の法整備を

          はじめに