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木陰コーヒー店

私達が釣りやデイキャンプに行く時、私は大概いつもコーヒーセットを持参する。
そしてその時同行した人には全員漏れなくコーヒーとお菓子が振る舞われる。

気温が常に高く(30℃〜43℃)、直射日光が危険なほど容赦ない季節と、先ほどまで晴れていても突然雨が降り出す雨季があるこの国では、木陰がなければ私は安心して過ごせないので、木陰もしくは屋根がある野外限定のコーヒー店を開店する。木陰コーヒー店だ。

休日なら朝イチに家を出て、できるだけ長く釣りを楽しみたいと思う。普段は昼間の仕事があるのと、そして身の安全面を考えて、我が家はキャンプ以外では夜に出かけていく夜釣りをしない。そこはやはり日本とは大きく違う点かと思う。
超朝方釣り人にはコーヒーがいいと私が勝手に思って、勝手に開店している。お代はみんなの安全と笑顔だ。

釣り人コーヒーセット

幸いなことにチェンマイ周辺はコーヒーの産地である。近隣の山から届く色々な種類のコーヒー豆が普通のスーパーでも気軽に買える。大手会社のものから、NGO団体のもの、個人経営の山岳民族のオーガニックの豆など、どれも値段がさほど差がないので選んでは色々と試すことができる。

まず、前日のうちに何人参加するのか人数を把握しておく。豆の量、カップの数、おやつの種類や量の準備のためだ。豆とコーヒーを淹れる道具は前日のうちに用意をし、おやつと牛乳類は当日の朝行きがけにコンビニで購入する。

私達が釣り場に到着すると、私以外の皆は、当たり前だが早速釣りの準備を始める。毎度思うのだが、その彼等のワクワク感が動作からも言葉からも伝わってくる。なんだかそれで私は嬉しくなる。
そんな彼等を横目に、私の場合、まずはコーヒーから始まる。

なるべく地面が平らな木陰を確保し、リュックサックからコーヒーを淹れるセットを取り出す。美味しいコーヒーを飲みたい気持ちと荷物をできるだけ少なくしたいという気持ちの間で色々と道具を試してきた。
携帯用ハンドミル、ガスバーナー、モカポットかドリッパー、ジップロックに入れたコーヒー豆。これが一番簡単なセットだ。釣りの時はなるべく釣りに集中したいので、火の調整や始末に気がとられないよう、ガスバーナーを使うことが多くなった。釣りではなく、デイキャンプを楽しむ場合は、携帯薪ストーブを持っていく。

木陰コーヒータイム

みんながそれぞれ自身の釣竿の準備が整い、餌をつけたものを投げた後、木陰コーヒー店が開店する。

コーヒーのメニューは私オリジナルの南国コーヒー。甘い缶コーヒーに慣れた南国に住む釣り人が「美味しい」と思うほんのり甘くてコクのあるコーヒーだ。特にモカポットで入れたエスプレッソコーヒーの時にぎゅっと旨味が凝縮される。

コーヒーについてくるお菓子は、いつでも小さくて、指を使って一口で食べられるものに限る。もし何時、こうやってコーヒーを飲んでいる間にも魚が食いついて、すぐに釣竿に手をかけないといけない場合、一口大のクッキーのようなものであれば、ホイッと口に放り込んでいける。
もちろんコーヒーだけでも良いのだが、クッキー的なおやつがあるだけで、それがアクセントとなり笑顔が咲く気がする。

これはスウェーデンのとあるカフェで学んだフィーカ/お茶の時間のスタイル
だ。
小さい時から大人になっても、学校や職場でのフィーカ/お茶の時間は大切な習慣としているスウェーデン社会。私もいろいろな環境でフィーカ/お茶の時間を経験してきたが、中でもアラブ系のガッツリ体型(ラグビー選手のような感じ)のオーナーが経営していた極力シンプルなメニューと店作りのおしゃれカフェでのスタイルが印象的だった。

ショーケースには少しの菓子パンやケーキ系があった気がする。あまりよく覚えてはいないが、他の一般的なカフェと比べてその種類は少なかったと思う。お昼には日替わりランチが人気メニュー。
でも、そのカフェで多くの客が利用していたのは大きなガラス瓶に入った日替わりアイスボックスクッキーだ。1枚から販売している。

気分転換をしたいとき、ほんの少しの限られた時間の中で息抜きするのにコーヒー一杯が欲しくなる。お菓子が食べたいのではないけれど、クッキーが一枚あるとそれがアクセント的な要素になり、そのコーヒーにパッと花が咲く。
カフェなので、もちろんコーヒーマグはあるのだが、持参したカップを持ち込めば、そこにコーヒーを注いでくれる。どんな大きさでもなみなみと注いでくれるのだ。そうすることで、そのままカップを自分のデスクに持っていけて、カフェ閉店の時間を気にせず、カップを返却する手間が省ける。
一度、かなり大きいカップを持ち込んだ時に、
「こりゃ、大量のコーヒーが必要なんだね!今日は徹夜かい?」なんて、笑顔で対応してくれた。
そして一枚のクッキーを紙ナフキンにのせていく。正直にいうと、私の場合いつも2枚買っていた。
常に忙しい職人系の人々が周りにいる環境で、そのコーヒーと一枚のクッキースタイルは定番だった。オーナーはその瓶のクッキーを決して絶やさない。
ケーキとか菓子パンではなくて、クッキー1枚(2枚)それだけで十分だったのだ。それで気持ちが切り替えられた。
さて、次の作業に集中するぞ!と。


木陰軽食タイム

前日の夕方にスーパーで買ったソーセージを持参。

木陰コーヒー店では、時には軽食サービスもある。本当に簡単なものだけれど、これを野外でいただくと普段とは違った美味しさを感じられてしまうのが不思議だ。やはり自然環境と空気がいい調味料となっているのでしょう。

食パン、クロワッサン、コッペパン…何でもゆっくりと炙り好みのこんがり具合に焼ける

コンパクトに折り畳めて収納できるこのトースターで、どんなパンでもこんがり焼くだけで美味しく感じる。

パンとお好みの具材でホットサンドというのが、荷物も軽くお手軽に美味しく楽しめる素材だ。

こんな感じでコーヒーを嗜んでゆっくりしてから、私自身の釣りは始まる。
腹ごしらえをして、集中力抜群だ。
お腹いっぱいになりすぎは禁物。感覚が鈍ってしまうから。

コーヒーとお菓子ちょっと。
または、コーヒーと軽食。
メニューはその日替わり。極力シンプルに。
これが釣り人の木陰コーヒー店。



木陰コーヒー店の大切なお客さまストーリー





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