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ヒューマンルネッサンス研究所という、おもしろい未来研究所で、1970年にオムロン創業者…

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ヒューマンルネッサンス研究所という、おもしろい未来研究所で、1970年にオムロン創業者立石一真らが発表した未来予測理論「SINIC理論」を下敷きに、暮らしの中から未来の兆しを、鳥の目、虫の眼になって見つけ、未来ソウゾウしています。 https://www.hrnet.co.jp/

マガジン

  • 自律社会という近未来へ

    ヒューマンルネッサンス研究所は、オムロンの未来社会研究所です。未来予測の基盤は「SINIC理論」というオムロン創業者らが構築した理論です。半世紀以上前の未来予測を愚直に羅針盤とし続けられるのは、この理論への共感が大きくなる一方だからです。みなさんも共感の船に乗りませんか?

最近の記事

風土と手仕事を楽しむ、ゆとりある未来

未来の兆し探しの場  未来の兆しは、どこに行けば探せるだろう?「最先端は大都市のド真ん中でこそ見つかる!」という人もいるだろう。確かに、"新しい何か"は、その時代の中心となる場から生まれることが多いはずだ。  しかし、未来は全く新しいものばかりとは限らない。故きを温ねてこそ気づける未来の兆しもある。そして、それらは大都市のド真ん中からは見つけにくいのが常なのだ。 いざ、日本の生まれた出雲へ  というわけで、日本の始まりの地へと未来を感じる旅に出かけた。出雲縁結び空港の

    • 10代は未来持ち、60代は履歴持ち

      短尺化する未来 「未来」と言っても、どのくらい先を指すかは、人それぞれにさまざまだ。一瞬先や明日という直近の未来から、遙か遠く100年、1000年後の未来まで、その人その時の関心事によって、時間の長さはいかようにも変わる。  けれど、ここ最近の世の中は、未来をどんどん近くに引き寄せてきている。為替レートや株価など、世界経済の中核メカニズムの数値が、コンピュータによって瞬時にアップデートされていく中で、遠い未来への構えを持ちにくくなっている。 高校生との未来ソウゾウ  

      • 自律社会のエンジンは心のテクノロジー

        半世紀前に予測していた「自律社会」  このコラム「みらいのミカタ」の背景には、SINIC理論という未来予測理論がある。その未来ダイアグラムでは、今年までが「最適化社会」という世界大転換、そして2025年からは「自律社会」、工業社会以降これまでの社会発展ルートの延伸とは価値観を異にする時代が始まると予測されている。  では、この予測を打ち立てた60年代末、彼らは自律社会をどのように描いていたのか。プロジェクトメンバーの一人で、当時立石電機の中央研究所長であった山本通隆氏の記

        • 遠・中・近、三種の未来でGO !

          望遠鏡、双眼鏡、虫眼鏡  未来の見方について、オムロンの創業者であり、ビジョナリーでもあった立石一真の教えの一つに「三つの未来」の大切さがあります。 1.遠くの未来 2.中くらいの未来 3.近い未来  以上のとおり、眼鏡みたいな三種ですが、遠・中・近の未来をセットにして描き出すということです。  はるか遠く先を見るには「望遠鏡」、なんとなく見えているけれど、よりはっきり見たい先は「双眼鏡」、近くを微細に見るためには「虫眼鏡」か「顕微鏡」、それぞれに、道具も見方も変える必要が

        風土と手仕事を楽しむ、ゆとりある未来

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        • 自律社会という近未来へ
          33本

        記事

          「選択できる未来」、それは自律社会

           ひさしぶりの読書備忘録となります。ゴールデンウィークもあったりで、私としては珍しいジャンルの本を取り上げました。  なぜ、この本を手に取ったのか?それは、一見して素晴らしい成功物語の連続というキャリアコース物語ですが、それだけではなさそうな著者のライフヒストリーに興味が湧いたからでした。もちろん、その背景には、この本のタイトルに惹かれたというところがあります。 自ら生き方を変え進む  著者は、幼稚園から高校までを田園調布雙葉学園で過ごしたとありました。小学校から高校は、

          「選択できる未来」、それは自律社会

          豊かな社会の中で、家畜化する人間と人間化する機械。人と機械の未来はいかに?

          4割の自治体は消滅可能性自治体  前回(4月15日)コラム「ソロ暮らし社会が、そろりそろりとやってくる」で人口減少問題を取り上げた。思いのほか反響が届いて驚いていたのだが、さらに、4月24日には人口戦略会議から2050年までの人口減少の分析結果が発表された。  この分析は、「20~39歳の女性人口」(以下、若年女性人口)の将来動向を指標化したところに特徴がある。その結果、全国1729自治体の4割にあたる744自治体で、若年女性人口が50%以上減少することが予測され、このよう

          豊かな社会の中で、家畜化する人間と人間化する機械。人と機械の未来はいかに?

          ソロ暮らし社会が、そろりそろりとやってくる

          いちばん確かな未来予測  未来を完璧に予測することは不可能だ。しかし、それら数多の未来の見方の中でも、最も確からしさの高い未来予測は何か?お気付きのとおり、「人口動態」からみる未来の姿は、かなり高い確度の未来予測だ。  WHOが発表している最新の世界の平均寿命(0歳時点での平均余命)を見ると72.5歳、また日本は世界1位の長寿国であり84.3歳である。それほどに寿命が長くなっているということは、今いる人々と、次世代として生まれる規模を推し計り易い。今後数十年間の世界の人口構

          ソロ暮らし社会が、そろりそろりとやってくる

          今の"適切"は、未来の"不適切"

          新しい年度がスタートした。今朝の電車内には、スーツ姿の若い人たちも目立っていた。「ウチの会社ってさ…」とか、「やっぱり早めに海外出たいよな」など、聞こえてくる声も、就活時代の第三者モードや忖度モードとは違う、前向きな当事者感ある声が聞こえてきて気持ちいい。満員電車内での立ち居振る舞いは早めに身につけてほしいが、会社内での立ち居振る舞い方は、今を忘れずに続けてほしいものだ。 「同級生」という同時代感覚  そんな四月始まりの時間区分の単位というのは、学校の暦がそれであるため、

          今の"適切"は、未来の"不適切"

          道具の歴史は、人間が機械にできることを機械に任せようとしてきた創造の歴史

           私は、博物館を楽しむのが好きです。博物館に並ぶものを、じぃっと見ていると、自分の中の記憶と反応して、プチプチと音を立てて反応が始まります。未来もみえてきたりします。  日本博物館協会の資料によると、総合的な施設から特定分野のコレクションまで含めて、日本国内には、4,484館(令和3年度実績)があるということです。数多の博物館の中でも、特定の分野やテーマに絞った、ある種マニアックな収蔵品を展示する館に、私はとても惹きつけらます。神戸にある竹中大工道具館は、まさにその一つです。

          道具の歴史は、人間が機械にできることを機械に任せようとしてきた創造の歴史

          『ウェルビーイング』、それは一人ひとり違う状態だろう。未来への日本型ウェルビーイングのヒントが見えてくる。

           この本は、ウェルビーイングの第一人者の石川善樹さんが、ニッポン放送のアナウンサー吉田尚記さんと語り合ったポッドキャスト番組をもとに加筆した書籍だ。二人の掛け合いだけでなく、医師である石川さんの父親も交えての鼎談「元気と病気とウェルビーイングの関係性」という鼎談もあり、偶然手に取ったのだが、サクサク読めたし、日本文化とウェルビーイングという切り口もおもしろく読めたので、備忘録に残してみた。 圧倒的にbe(いる)が足りていない社会  この本は、ポッドキャストの番組総集編とい

          『ウェルビーイング』、それは一人ひとり違う状態だろう。未来への日本型ウェルビーイングのヒントが見えてくる。

          映画『PERFECT DAYS』から感じとった「完璧な日常」へのいきかた

          ルーチンの語感と実感 「ルーチンワーク」という言葉を使う時、どちらかと言えば、難易度の低い、誰にでも、あるいは人間でなく機械にでもできる付加価値の低いワークを指して使っていないだろうか。「クリエイティブワーク」とか、高収入の仕事と対置して使っていないだろうか。  しかし、同じ動作を繰り返し続けること、本来、それは人間にとって楽ではなく、辛い苦行のはずだ。持続しきれずに飽きて放棄してしまう性向は、誰もが持っている人間の性だと思う。そこから体よく逃れるために、次々に新しい課題

          映画『PERFECT DAYS』から感じとった「完璧な日常」へのいきかた

          『人類冬眠計画』、それはユートピアでもディストピアでもない。「人工冬眠」という現実の科学技術研究であり未来創造テーマだ。

           この本のタイトルを見て、多くの人は「SF小説なんだ」と思うだろう。しかし、岩波科学ライブラリーのシリーズの一冊であり、空想ではない、サイエンスの書だ。冬眠研究者の著者である砂川さんは、理化学研究所で冬眠生物学研究チームのリーダーであると共に、今もなお臨床の医師として医療現場の最前線にも身を置いている。彼の冬眠研究の動機、そして未来の人類への意味、自然社会以降の少し先の未来を考える深い思考実験ができる書だ。 著者、砂川玄志郎さんとの出会い  私が砂川さんに出会ったのは偶然

          『人類冬眠計画』、それはユートピアでもディストピアでもない。「人工冬眠」という現実の科学技術研究であり未来創造テーマだ。

          バリ島で感じた「懐かしい未来」

          オムロン創業者らが構築し、半世紀以上経った今もなおオムロン経営の羅針盤として活かされる未来予測理論「SINIC理論」の未来ダイアグラムでは、あと10年で100万年前からの人類史、社会発展の1周期が完了します。そして、新たな2周期目の「自然社会」が始まると予測しています。  これは、農業社会、工業社会、情報社会という大きな社会区分レベルのまったく新しい社会の到来です。しかし、これまでのような産業区分で説明できた社会とは異なる自然社会のイメージは、なかなか想像したり具体化しづらい

          バリ島で感じた「懐かしい未来」

          新年明けましておめでとうございます。今年も、みなさんと共に未来ソウゾウを進めたく、よろしくお願いいたします。

          トランジションを超えられるか?  さて、2024年です。SINIC理論の未来ダイアグラムでは、最適化社会の最終年、新たな価値観に基づく自律社会を迎える準備の完了という時期に位置づけられます。この予測について、次の3択の世論調査をしてみたらどういう結果になるでしょう? Q. 2025年から自律社会はスタートできると思いますか? ① そう思う ② あり得ない ③ そうしないと、手遅れになる  常識的に推測すると、②の回答者が過半数になることは確実でしょう。「現実を見れ

          新年明けましておめでとうございます。今年も、みなさんと共に未来ソウゾウを進めたく、よろしくお願いいたします。

          2023年最後の読書備忘録は『ドラッカー最後の言葉』(講談社BIZ)。2005年に世を去った数ヶ月前のインタビュー集。21世紀を見据えて、20世紀を生きた”社会生態学者”の言葉を、未来に向けて噛みしめてみた。

          ドラッカーという人  ピーター・F・ドラッカーという人物は、専門領域を特定できないほどに多才な人だ。自分の意志と好奇心のままに生きた自由人に見える。それが可能な家庭環境でもあったのだろう。  ウィーン大学教授の父親はフリーメイソンだというし、wikiによれば、両親の紹介で幼少期に心理学者のフロイトに会っていたり、フランクフルトの新聞記者の時代には、ヒトラーからもインタビューが許されていたという。  そして、ナチスから逃れてイギリスに移っては、投資銀行で働きながらケンブリッジ

          2023年最後の読書備忘録は『ドラッカー最後の言葉』(講談社BIZ)。2005年に世を去った数ヶ月前のインタビュー集。21世紀を見据えて、20世紀を生きた”社会生態学者”の言葉を、未来に向けて噛みしめてみた。

          今年も遂に師走に入ってしまった。今年も多くの未来予兆を感じ取れたことがうれしい。前回のコラムでも速報したが、オランダで見聞できたことは、その中でも大きなインパクトがあった。約20年前に「オランダに自律社会モデルを見つける!」と意気込んで出かけた時の興奮とは違う、興奮を静かに沈殿させて結晶化させるようだった。そこで、今月もオランダネタの中でも、最も大きな印象であった「灰色」を扱う人々の価値観について徒然に語ってみたい。

          「低地の国」ネーデルランドの未来デザイン  オランダと言えば、小学校の社会科で習ったとおり、面積は九州の大きさ程度でで、国土の1/4は海面よりも低く、最高峰の山の標高が321mという平たい国だ。13世紀以来、浅海の干拓によって国土を広げて、文字通り「つくってきた国」だ。かつての調査でも「ポルダー(干拓地)の上にあるオランダという国は、まさに、そこに暮らす市民自身が自分たちでデザインする文化を持つ国なのです」という現地での説明を聞いた。「世界は神がつくったが、オランダはオラン

          今年も遂に師走に入ってしまった。今年も多くの未来予兆を感じ取れたことがうれしい。前回のコラムでも速報したが、オランダで見聞できたことは、その中でも大きなインパクトがあった。約20年前に「オランダに自律社会モデルを見つける!」と意気込んで出かけた時の興奮とは違う、興奮を静かに沈殿させて結晶化させるようだった。そこで、今月もオランダネタの中でも、最も大きな印象であった「灰色」を扱う人々の価値観について徒然に語ってみたい。