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新年明けましておめでとうございます。今年も、みなさんと共に未来ソウゾウを進めたく、よろしくお願いいたします。

トランジションを超えられるか?

未来へのトランジション

 さて、2024年です。SINIC理論の未来ダイアグラムでは、最適化社会の最終年、新たな価値観に基づく自律社会を迎える準備の完了という時期に位置づけられます。この予測について、次の3択の世論調査をしてみたらどういう結果になるでしょう?

Q. 2025年から自律社会はスタートできると思いますか?
①  そう思う
②  あり得ない
③  そうしないと、手遅れになる

 常識的に推測すると、②の回答者が過半数になることは確実でしょう。「現実を見れば一目瞭然」という理由と共に。
 しかし、私は期待します。無責任に①と答える人よりも、当事者意識を持って③と答える人が急増する2024年を。そして、その回答者が、未来時間を長く持っている若い世代だけでなく、これから20~30年、人生百年時代を長生きしそうなシニア世代も当事者意識を持って取り組みたい。そんな、個人の変容、社会の変容を生み出すには、自分に何ができるのか、我が自立を問うて一年間のスタートを切りたいと思っています。

「大後悔時代」としないために

 もちろん、新旧の価値観が交錯する、渾沌と混乱のパラダイム・シフトの最適化社会は、複雑な民族問題、宗教問題、環境問題など、それらの中には漸進していることもあります。しかし、そのペースでは間に合わないことは、COP-28で明らかになった温暖化の予測だけを見ても明らかです。加速度をつけなくてはなりません。そうしなくては、「人類大後悔時代」の到来を免れません。

 ところで、恐竜の絶滅の原因は隕石衝突説が有力です。大きな隕石の衝突により大気中に充満した大量の塵が太陽光を遮り、植物が減り、草食恐竜が生き残れず、それを食べる肉食恐竜も食物を失って滅んでいったとされています。その中でも、小振りで移動の自由があった鳥類や、残された少ない食物でも生きていけた小動物だけが絶滅を免れたわけです。生き残るということは、力の強弱、身体の大小ではなく、環境への適応力で決まるのです。

Forbesオンライン記事2023.02.03より

 マンモスの絶滅も同様です。氷河期にも残っていた広い草原で生活していたけれど、気候温暖化による草原の縮小や、人間による狩猟が原因で絶滅したのではないかと考えられています。恐竜もマンモスも、強く巨大であり、環境変化さえ無ければ栄華を誇り続けていたはずでしたが、環境変化への対応手段を持たずに滅びていったのです。残念ながら、恐竜にもマンモスにも、自らが環境に適応する変容を遂げる可能性を与えられていなかったのです。後悔のしようすら無かったわけです。

 しかし今、最適化社会を超えて自律社会に向かう人類は、恐竜やマンモスとは違います。人類が豊かになるために知恵と行動で環境を変え過ぎてしまった結果に対しては、人類の知恵と行動で修復することに気付き、行動することができます。これまでの価値観では適応できなくなるのなら、人類が価値観や行動を変容させれば適応することができるはずです。後悔は先に立ちません。行動を先駆ける時なのです。

ニュートン力学で考える

smithsonian magazine December 16, 2016

 その社会変容を起こし、加速を付けるためには、何が必要でしょうか。それを考える上では、みなさんご存知のニュートン力学の運動の法則を思い出して、原理原則に基づいて考えると、単純明快になります。

①第一法則
 先ずは、第一法則の「慣性の法則」です。物体に他から力がはたらかない、または、はたらく力がつり合っている場合には、静止している物体は静止し続け、動いている物体はそのまま等速直線運動を続けます。「慣性の法則」です。「慣性」とは、物体が現在の運動の向きや速さを維持し続けようとする性質のことです。
 つまり、物体の運動に変化を与えるためには、外部から力をはたらかせる必要があるということです。

②第二法則
 次の第二法則は、運動方程式とも呼ばれるものです。
F(力)=m(物体の質量)✖️ α(加速度)
 という式で表されるとおり、物体に外から力が作用すると、力の向きに加速度 を生じ、その大きさは力の大きさに比例し、物体の質量に反比例します。加速度を付けるには、動かす対象の質量を小さくすることも大切です。

③第三法則
作用・反作用の法則
です。物体に力を加えるとき、必ず逆向きの力が現れます。このとき、一方の力を作用、もう一方の力が反作用です。2つの物体が互いに及ぼし合う作用と反作用は、同一作用線上にあって、大きさは等しく、互いに逆向きです。これが、作用・反作用の法則です。

社会変容の加速度を付けるには

 上記のとおり、変化は放っておいても生まれません。変化を生むためには、力を加える必要があります。その上で、その力を可能な限り加速度につなげるためには、対象となるものの質量を小さくすることが有効です。さらに、どんなによかれと思って力を加えたとしても、それと同じだけの抵抗する力が生まれることも覚悟しておく必要があります。

 つまり、私たち一人ひとりができることは、社会全体を相手に変化させようと力を加えるよりも、その構成要素、その中でも”We”の関係、一人称の関係から、最も小さな一人ひとりとの単位で相手と共に確実に変化を起こすことが、結果として社会の変容につながる早道ではないかと思えます。

“be”の生き方へ、価値観変容を

 人類は、これまでにも大きな価値観の変容を遂げて現在に至っています。こころかモノか、集団か個人か、という価値観の重心の移動で360°ぐるっと1周期をたどってくるSINIC理論では、ちょうど90°毎に変化点を見つけられます。

 そうすると、人類史は狩猟採集生活を始めて遊動生活を続けた長期間の最初の90°の価値観は”Live(生きる)”、次の農耕社会から工業社会への90°が”Have(持つ)”そして、持ちきれなくなって情報社会からは”Do(する)”、経験や体験価値を重視するステージに入ってきました。そして今、最終愛4コーナーに到達しています。

 そこでの価値観の重心は何か?私は”be(ある)”の価値観だと確信しています。どんな人間として社会に生きるかということが大事になる社会です。もはや、所有や経験を必要以上に高めるよりも、自分自身がいかに生きるか?いかに在るか?を価値基準に据えてはどうでしょうか。

 巷でもwell-beingという言葉が聞かれるようになり、宮崎駿さんが映画で『君たちはどう生きるか?』と問いかけてきたり、いろいろなところから”be”への問いかけが聴こえてきませんか?

 しかし、この変容には大きな反作用が立ちはだかります。これまでの”Have”や”Do”は、製品やサービスの獲得と直結していたので、とても都合よく経済成長とシンクロして、社会発展を加速し続けてくることができました。それが、”be” の時代となると経済活動への変換力が小さくなるでしょう。

 小学生だって、日本や先進国のGDPの時系列グラフを見れば、容易に成長鈍化、成熟期の到来を感じ取ることができるはずです。しかし、社会全体を大きく動かそうとする大きな力を持っている(と錯覚したままの)巨体組織は、あくまでも成長回復、自分の国、自分の企業だけでも再び右肩上がりの経済成長を実現させる、そのためにイノベーションだ!などと騒ぎますが、次々に明らかになる事実データは、その騒ぎ声を空しいものにするものばかりです。”be”の時代は、これまでの経済成長一辺倒の指標で社会の豊かさを計ることにも変化を与えなくてはいけないのです。

”be”の時代の三段階

 Be動詞というのは、なかなか深みのある言葉だと思います。日本語だと、「ある(存在)」「いる(生存)」「なる(成就)」に使い分けされるほど、ひとまとめにできない言葉なのではないかと思います。

 そして、今回の世界的なトランジションでも、この3種のbeは使い分けをするとよさそうです。やはり、第一にはトランジションの先の社会を意識した「存在」、自分のありようの設定からスタートでしょう。ありよう(存在のスタイル)が決まると、次は生き方、暮らし方を加えて、自分が未来を見据えた社会に「いる」ことを意志表示する。さらに、仲閒と共に未来の社会をつくる人になる。

 この「be動詞三段活用」で、自律社会という未来を、仲閒と共に拓き、進みたいものです。2024年は辰年です。辰の年は陽の気が動いて万物が振動するのだそうです。変化のチャンス、変容のチャンスなのです。

この辰年の活力で、世の中を振動させ、社会を共振させて、次の社会に「なる」年にしましょう。それが成就されるプロセスを経て、社会は“Let it be !”(あるがままに)に向かうはずです。まさに「自ずと然り」、自然(じねん)社会というSINIC理論の2周期目に向かえます。
そうだ、諦めずに行こう、じねんの社会へ!

二〇二四年 元旦
ヒューマンルネッサンス研究所
エグゼクティブ・フェロー 中間 真一

《参考コラム》HRI研究員コラム 2012.4.1


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